武装国民抵抗の思想


                              中宮 崇


やりたい放題のテレビ局に抵抗するには、我々市民も武装しなきゃ!


 日本という国は、実にテレビ番組批判がし難い国なのですよね〜。批判したら圧力がかけられるとかそういうこと以前の問題として。

 例えば、ニュース番組を見ていて、「あ、このキャスター、間違った事言っているな」と思っても、ビデオ録画していなかったら、もうアウト。「いつどこで誰が、何を言っていた」という、批判の前提として必要なポイントがあやふやになってくる。

 朝日新聞はよく批判の対象になっても、テレビ朝日を批判する人は比較的少ないというのはこういうところに原因があると思うのです。

 新聞を批判しようとする場合、例えば「主要6紙を全部取る」ということは不可能ではないし、実際、知識人や業界人の多くはそうしている。しかしテレビの場合、「主要6チャンネルを全部見る」というのはよほどのことがないと不可能。ビデオに撮っておくといったって、デッキだけで6台必要。2時間テープなら一日12回、つまり合計12×6=72回取り替えなくてはならない。テープの収納スペースも考えなくてはならない。教育テレビや衛星、その他まで考えたら、もう全く収拾がつかない。

 つまり、個人ベースでテレビ番組批判をしようとしても、ほとんど不可能といっていい。個人には、そんな暇も金もないわけです。

 じゃあ、確認したい番組だけでも、テレビ局に行って収録テープを見せてもらおうとしても、そうは簡単に行かない。なかなか見せてくれないのです。ましてや、テープのダビングなんてとんでもない。

 実は、テレビ番組をビデオに撮って保管している組織がないわけではない。しかし、料金的にもそう簡単に市民が気楽に利用できるようなものではない。

 こういう、一見「民主主義的」、「資本主義的」な制度の下、テレビは見えない障壁によって批判から保護されているのです。

 現代社会においては情報媒体としては、新聞よりもテレビの方が圧倒的に重要となっている。そのテレビが、新聞よりもずっと批判しにくいというのは、やっぱり相当問題があると思うのですが…。

 また欧米の話になりますが、普通はテレビ局の番組閲覧が容易にできるような制度的枠組みがあるものなのです。テレビ局による市民へのビデオ公開が義務とされていたり、専門のアーカイブが低料金で利用できたりと。このような枠組みがあって始めて、真の意味でテレビ番組批判ができるようになると思うのです。

 具体的な例で言いますと、松本サリン事件の河野義行さん。実際にはオウムの犯行であったあの事件は、当初彼が犯人扱いされて、家族まである事ない事書きたてられ言いたてられた。それに対して河野さんは、新聞各社や各週刊誌に対しては、具体的な人権侵害報道を指摘して抗議する事ができた。しかし、テレビに対しては結局、そういう個々の具体例を明らかにした抗議はできなかったし、テレビ局による謝罪もじつにおざなりなものに終わってしまっています。

 つまりテレビ各局は、河野さんに対して番組を「隠す」ことによって、自分たちの人権侵害報道を実質的に「隠匿」したのです。そうして抗議をかわし、責任を逃れた。これは非常に由々しき事態ではないでしょうか。

 じゃあ、こういうことを避け、市民の人権をメディアの横暴から護るためにはどうしたら良いか。長期的には当然、テレビ局の番組を長期間ビデオに保管しておく公的組織を作るなり、収録テープの閲覧権を法的に認めたりという事が大切だと思います。

 しかし、いきなりそれを達成する事は不可能でしょうから、とりあえず、民間の非営利組織として、ビデオ・アーカイブを設立したらどうでしょうか?

 ビデオ・アーカイブといっても、なにもでかい図書館みたいな建物作って、一日中全局をエアチェックしろというわけではない。何人かの有志が相談して、「僕は毎日、ニュースステーションを録画する」とか、「私は毎日、NEWS23を録画する」というふうに決めておいてそれを1ヶ月とか一定期間保管しておくことにして、そういった情報(誰がどういう番組を録画しているか)をデータベース化しておくというだけでも、テレビに対する相当な武器となり得ると思うのです。いかがでしょう?

 そのような制度作りの旗振り役を本誌でしようと思うのですが、とりあえずそういったデータベースを管理するソフトを開発しないとどうにもならない。これは、「逆鱗エンジン」にも関わる話ですが。

 というわけで、どなたかYAHOO!みたいなことができる、安くて良いソフトがありましたら、紹介してくださるようお願い申し上げます。

 テレビ局の横暴に対抗するための第一歩を、ともに踏み出しましょう!


                             なかみや たかし・本誌編集委員


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