今日は。中宮です。
皆さんに、署名のお願いをしていました筑紫哲也氏への公開質問状は、5月21日に提出させていただきました。様々な形でご協力していただいた多くの皆様に、この場を御借りしまして深く御礼申し上げます。
−−−以下、公開質問状
筑紫哲也殿
今回のペルー人質事件において、筑紫様がNEWS23を始めとする公共の場で主張された内容について、その真意を測りかねる市民の一部として、いくつかの質問をさせていただきたく思います。
1、NEWS23および『週刊金曜日』において、筑紫様はたびた
び、 「在外公館にはウィーン条約に基づき治外法権が存在す
る」という趣旨の発言をなされておいでですが、これはいかな
る学説に基づいた発言なのでしょうか。
ウィーン条約はその第41条において、接受国の法令の尊重
を義務としており、むしろ「治外法権」の概念はウィーン条約の
成立によって完全に妥当し得なくなったとするのが、国際法に
おける共通の認識と思われますが、筑紫さまのお考えをお聞
かせ願いたく思います。
2、『週刊金曜日』5/9号のコラムにおいて、
「ちなみにこれが戦争(内戦)だとしたら突入作戦はジュ
ネーブ条約違反でもある。少なくとも三人の“敵兵”が投
降後、射殺されているが、条約は捕虜に対してそのよう
な扱いを禁じているのだから」
との発言をなさっておいでですが、
質問2−1:
MRTAメンバー三名の処刑に関し、筑紫様は明確な確証
をお持ちように記述しておられます。当方、寡聞にしてそ
のような証拠を存じません。外務省も、処刑されたとい
う「報道があった」と確認したようですが、「処刑があった」
ことを確認したとは発表しておりません。筑紫様が把握し
ておられる処刑の証拠と、情報源につきまして、是非
お知らせいただきたいと思います。
質問2−2:
当方は、処刑に関し、現時点では証拠が発見されていな
いと判断しておりますし、外務省も同様と存じます。証拠
が明確でない段階で上記引用部のように御発言になり
ますと、フジモリ大統領に対して一種のネガティヴ・キャン
ペーンとして働き、読者がフジモリ大統領にあらかじめ、
悪いイメージを抱いてしまうのではないでしょうか。
a.なぜ筑紫様は、わざわざ「これが戦争(内戦)だとしたら」と
仮定され、その上で「ジュネーブ条約違反」と記述なさっ
たのでしょうか。仮に一般論をおっしゃったのだとすると、
些か文脈の混乱を招きかねないものと感じます。筑紫
様は「フジモリが悪い」とおっしゃりたかったのでしょうか。
お考えをお聞かせいただければと思います。
b.もうひとつ、筑紫様の仮定に従い「戦争(内戦)だとし」ても、
「突入作戦はジュネーブ条約違反である」のかどうか、
国際法の諸学説の内、何を論拠となさっているのかお教
えいただければと思います。特に、自身がジュネーブ条
約等をことごとく踏みにじっているMRTAに条約上の「捕虜」
としての資格があるとのお考えにいたった経緯をお聞かせ
願いたく思います。
3、いわゆる「平和的解決」について
前掲コラムにおきまして、筑紫様は次のようにも述べておられます。
この種の事件の「平和的解決」は、ダッカ事件の処理を見
るまでもなく、この国のいわば「国是」だったはずなのに
この部分について、
質問3−1:
「ダッカ事件」に言及しておられるところから察しますに、
筑紫様はMRTAに身代金を渡して、活動家を釈放し、テ
ロリストの要求をことごとく受け入れる事こそが「平和的
解決」だとお考えのように見えますが、このような理解で
よろしいのでしょうか。
質問3−2:
事実上、「ダッカ事件」の処理は日本赤軍に活動資金を
与えることになりましたが、筑紫様はそれを「国是」とお書
きになって、あたかも支持しておられるかのようです。し
かしながら、そのような処理ではテロリズム問題の根本
的解決にはならないということで、今や各国の意識は一
致している わけですが、筑紫様はそれに反対なのでしょ
うか。日本国は各国と共同歩調を取る必要はないと考え
ていらっしゃるのでしょうか。
質問3−3:
上記質問に否とお答えになる場合。
近年の「テロに屈しない」という様々な国際会議での声明
は、事実上、人質の受ける苦痛に関し「許せぬ」と言い
つつ実際は見殺しにするか、あるいは武力で応じるか、
そのどちらかを行うと声明していることと同義です。筑紫
様は、日本国もテロに対し武力で応ずるべきとお考えで
しょうか。さもなくて、日本国はノラリクラリと何もせずに、
武力解決は米軍等に任せてしまうのが 無難でよい路線
だとお考えになりますか。
それとも、まったく異なる他の路線があるとお考えでしょ
うか。もしそうならば、例えば今回の事件において他にい
かなる解決法が存在したとお考えか、お聞かせ願いたく
思います。
以上、大変お忙しいところ申し訳ございませんが、常日頃「市民」を重視なさっておられる筑紫様の事、市民のこのような質問を無下になさる事はないものと信じ、回答をお待ち申し上げます。
『週刊言志人』編集委員
中宮 崇
E-mail:d950013m@mxn.meshnet.or.jp