チンピラ1番、被害者2番…


                            中宮 崇


三時のおやつはチュチェ思想〜


 あなたの大切な人が今、チンピラに襲われて殺されたとしよう。そのチンピラはたいして頭の回転の早い方ではなかったので、その場ですぐに警官に取り押さえられ、裁判にかけられ収監された。

 時は流れ、あなたは自分の半身を奪った男のことを知りたいと思い、刑務所を訪れた。服役生活に彩りを添えるであろうわずかばかりの差仕入れ品を携えて。

 ところがチンピラは、あなたにこう言った。「俺は、何も悪い事はしていねーよ」、「おう、良いもん持ってきたな。ご苦労ご苦労」。

 普通の神経を持っている人間なら、その場でチンピラを絞め殺しているであろう。ところが人権大国日本には、そんなチンピラを「人道」という大義名分のもとに最大限擁護、いやそれどころか称賛さえし、被害者であるあなたを「人道の敵!」と口汚なく罵る連中がいる。それが、朝日を始めとする「進歩的メディア」と「人権派」、「進歩的文化人」などと言われる連中である。彼らは、北朝鮮の独裁者金親子の正当化のみを目的とする「チュチェ(主体)思想」などという奇妙奇天烈な宗教の信者でもある。

 国際的チンピラ北朝鮮は、金王朝の成立以来、韓国、日本を対象に様々な目に余る人権蹂躙行為を繰り返してきた。武力侵略たる朝鮮戦争、爆弾テロによる政府要人の暗殺を狙ったラングーン事件、日本人を含む何の罪もない多数の乗客が虐殺された大韓航空機爆破事件、ミサイルによる威嚇、日本人妻の虐待、偽札製造に民間人拉致…、これほど人道・人権を無視する国が今時どこにあるであろうか?これほど無茶苦茶な国に、「何も言わずに、国民の税金を使ってただで援助をしてやれ」などというぼんくらが、この日本にはあふれている。

 最近もピースボートとかいう、「船を借りきって世界中を見てまわろう!」など標榜している「市民団体」が、米を携えて北朝鮮を訪れた。船を丸ごと借りきって行くなんて、よっぽどお金持ちの暇人かすねかじり学生の集まりなのであろうが、そんな金があったら全部米を買う金に回してもっとたくさんお米を送ってあげればよさそうなものであるが…、私のようにちゃんと税金も払っている勤労学生には、彼らのような人たちの思考法は到底理解できない。

 北朝鮮は近年、未曾有の集中豪雨被害で食糧不足に陥っているそうだ。その北朝鮮はこれまでにも、国際社会への脅迫行為によって様々なものをゆすりとってきた。95年に発足した「朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)」が、北朝鮮の核による脅しによって無理矢理設立させられたものであるというのは、記憶に新しい。日米韓は、チンピラのために60億ドルもの原子炉をゆすり取られたのだ。しかも原子炉完成まで、毎年50万トンの重油までむしりとられる。こんな理不尽な脅迫行為が許されてよいのであろうか?

 また同年、日本と韓国は合計65万トンもの米を事実上ただで奪い取られた。「人道支援」の名の下に。

 あれから2年経った。北朝鮮は変わったか?何も変わってはいない。それどころか、チンピラはいっそう付け上がっている。これだけの援助を受け取っていながら、昨年には韓国に潜水艦を潜入させ工作員を上陸、治安部隊と銃撃戦まで演じた。

 前回の「朝まで生テレビ」では、「援助を受け取っている分際で、軍事パレードなどしている余裕などあるのか!」という批判もあった。しかしこれはいくらなんでも北朝鮮に対して酷であろう。今まで威勢良くやってきていた事を急に止めてしまっては、いくらなんでも国民を騙し続ける事は不可能だ。

 しかし、軍事パレードを急に止める事は出来なくても、破壊工作やスパイ活動を止める事は出来るはずだ。なにしろ自国民に対して秘密でやっている事なのであるから。止めずに未だにそんな事をやっているというのは、援助を受けざるをえないような状況を本気で改めようとはしていないという証拠である。そんな不真面目な連中を、今回もまた助けてやれというのか?

 北朝鮮当局の発表では、食糧不足を引き起こした集中豪雨は「520万人の被災者」を生み出したそうだ。北朝鮮の人口は2000万人ほどである。25%もの国民が被災していると言うのか?これだけ見ても、援助欲しさの嘘つき体質が見て取れる。その一方で自国民には、「昨年を上回る豊作」などと「大本営発表」しているのだ。まあ、それはよい。今に始まった事ではないし、そうでも言っていないと金王朝は崩壊してしまうであろうから。

 しかし、「人道援助」としてただでくれてやった日本の米に対して、北朝鮮の高官はこう言い放ったのである。「日本が先の戦争における謝罪の意味でさし上げたいと言ってきたので受け取ってやったのだ」と。これほど人を馬鹿にした話があるであろうか?北朝鮮の出先機関である日本社会党のボス、村山総理は、この暴言を結局うやむやにしたまま、国民の税金を使って無礼なテロリスト国家に米をくれてやったのだ。到底信じ難い話である。それほどまでに社会党は、北朝鮮にマインドコントロールされているのであろうか?

 日本の政治家がこの手の発言をしたら、北朝鮮はもちろんの事、社会党や朝日新聞といった北朝鮮の手先が一体となって、「妄言政治家」を辞任にまで追い込むのであるが、この事に関しては彼らは完全に口をつぐんでいる。あきれた限りである。

 そんな、「反省」、「感謝」といったような言葉とは無縁のチンピラに、今年もまたただで米をくれてやれというのだ。またしても「人道支援」の名の下に。北朝鮮の独裁体制を何ら変えることなくこのままずるずると援助を続ければ、独裁者金正日の王朝の命を長らえさせるだけである。そして、韓国・日本はもちろんの事、北朝鮮の国民に対しても今までと同じように人権無視のテロ行為が続けられるであろう。それのどこが「人道的」なのだ?

 「北朝鮮に、何も言わずに米を送ってあげよう」などと言う連中は結局のところ、「人道」の美名を利用するだけの、北朝鮮の圧政者・及びその手先にすぎないのだ。


 北朝鮮の人たちは、「大本営発表」の520万人とまではいかないにしても、まあかなりの人数が飢えているのであろう。それを本当に助けてあげたいのなら、ただ何も言わずに米を送ってやるだけではなく、今の無能かつ犯罪的な独裁体制を少しでも改善する方向に持っていくよう口を出した上で援助を行わなければ、北朝鮮国民はいずれまた、同様の苦しみを味わうであろう。まあ、「進歩的メディア」や「人権派」、「進歩的文化人」にとっては、北朝鮮国民なんぞより「偉大なる首領さま」お一人の方が大切なのであろうが。


                              なかみや たかし・本誌編集委員


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