「自虐史観派」の黒い影


                            中宮 崇


従軍慰安婦問題で嘘をつき放題の「自虐史観派」。中には、北朝鮮のあやつり人形までいる!


 アジア各国の「元従軍慰安婦」に対する償い金を渡すべく、1995年から活動を開始した「アジア女性基金」。「自虐史観派」はもともと、国家による賠償と謝罪とを要求していたのであるが、民間基金による「償い金」という、現在の形におさまった。

 この基金は、19人の「呼びかけ人」と称する「文化人」によって運営されているのであるが、その「呼びかけ人」とやらの中身を見てみると、なんとも御粗末この上ない、いいかげんな人間が何人かいるのである。ただいいかげんなだけならまだ害は少ないのであるが、北朝鮮の手先として明確に日本を傷つけることを目的としているような人間まで紛れ込んでいるのであるから、「従軍慰安婦問題」なるものがどのような勢力の思惑から出たものであるか、想像に難くはない。

 例えば、本誌でも以前批判した、元朝日新聞の下村満子。従軍慰安婦特集のときに指摘したように彼女は、自分が現在取材している事についての情報を一つも記憶しておくことが出来ないという、なんとも奇妙な下等動物であるのだが、まさかそんな原始的な生物が朝日新聞の中で「編集長」などと呼ばれる地位につく事が出来るはずがないのであるから、実のところ「取材している事について記憶していない」のではなくて、取材してもいない事を「取材している」と嘘をついているだけなのであろう。

 さて、あまり突っ込むと「北朝鮮特集」ではなく「従軍慰安婦特集」になってしまいそうであるから、彼女についてはこのくらいで止めておこう。

 下村のようなただの嘘つきなんぞよりもはるかに危険極まりないのが、もう一人の呼びかけ人、和田春樹である。

 彼は東京大学で教授なんぞをやっておられる「知識人」なのであるが、「北方領土は日本固有の領土などではない」とか、「大学当局は学生運動に全面的に屈服せよ」とか、まあ実に(日本的)正統派の共産主義者らしいのであるが、信仰の対象たるソビエト連邦が崩壊したと見るや即座に北朝鮮信者に衣更えするという、実に柔軟なおつむを持っておられる御人である。あるいは、共産主義を信奉しつつ、同時に「偉大なる首領さま」の独裁宗教「チュチェ思想」を崇めていたのであろうか?いずれにせよ、彼が正統派の「進歩的文化人」であるという事実には変わりない。

 だいたい、「東京大学などつぶれてしまえ」と言わんばかりの学生運動シンパであったくせに、未だに東京大学で教職に就いておられるというあたりからして、この手の人間の下らなさは十分十分お分かりになれるであろう。

 ところで余談ではあるが、読者の皆さんは尊敬する方に「進歩的文化人」などという呼称を用いてはいけない。20年ほど昔ならともかく、現在はこの呼称は、「馬鹿」、「嘘つき」と同義であるのだから。

 その和田センセイ、文芸春秋社がここのところ毎年出版している、『日本の論点』という電話帳ほどの厚みのある本の1995年版に、「北朝鮮にどう対応すべきか」と題しておおいに北朝鮮信者ぶりを披露してくださっている。

 この和田センセイの北朝鮮擁護作文は、「制裁など理屈が通らないばかりか、ただ半島と日本の平和を乱すだけ」などという副題をつけておられるが、和田センセイのようなおえらい「進歩的文化人」様にとっては、北朝鮮のようなテロ国家が外国人を暗殺したり拉致したりと好き勝手やっている現在のような状態も、「平和」などと見えるのであろう。つまり彼のような人間にとっては、韓国人がいくら北朝鮮によって暗殺されようが、日本人がいくら誘拐されようが、それはまぎれもない「平和」なのである。和田センセイにとっては北朝鮮の人間以外には「人権」なんてものは認められていないのであろう。いや、それどころか、「この世で人権を認められる人間は、金親子と自分だけ」などと考えている可能性も十分にある。

 さて、和田センセイ、「北朝鮮への制裁は慎重にすべき」などと主張しておられる。節の題名にまでしているのであるから間違いない。ところが、なぜそう思っておられるのかがどうも良く分からない。国際連盟が大日本帝国やドイツ第三帝国の侵略行為に何ら有効な手が打てなかったという事を引き合いに出しておられるのであるが、ということは有効な手があれば制裁してしまえといいたいのであろうか?また、その節の最後の方ではこんな事を書いている。


   紛争の解決の場合でも、事態の性質、淵源を十分に考慮し
   ないで、国際機構が機械的に対応すれば、紛争を深化し、
   被害を拡大する事になりかねない。


 ご自分の妄想をご披露なさるのは個人の自由というものであるが、大学教授などという地位に未だにしがみついておられる立場上、せめて「国際機関の機械的対応によって被害が拡大した」例の一つぐらい挙げてもらいたいものである。和田センセイが紙面を埋めるためだけに提示なさっている例はどれも、「国際機関が機械的対応を遅らせてしまったために被害が拡大してしまった」例ばかりなのであるが…。

 結局和田センセイが「北朝鮮への制裁は慎重にすべき」などとわざわざ題名になさっている節には、その御大層な主張を裏付けるような理論も、歴史的事例も、何ら示されていないのである。このセンセイ、いつもこんな「論文」ばかり書いているのか?ならば東大教授というのは、幼稚園児でも就ける実に楽ちんな職業であろう。

 その和田センセイ、同じように核開発疑惑のあるイスラエルやパキスタンに対しては制裁が論じられることがないというのもご不満らしい。しかし、テロ国家である北朝鮮と、少なくとも表面上は国際的秩序に従っているイスラエルやパキスタンのような国を同列に扱うこと自体、実に失礼な事である。

 失礼極まりない和田センセイは、北朝鮮を称賛する一方で、日本人をおおいに馬鹿にしている。彼に言わせると、北朝鮮を制裁すると日本国内がおかしくなるのだそうだ。こんな事を書いている。


   経済制裁は…(略)…北朝鮮への外貨流入を断つ事を狙っ
   ている。…(略)…しかし、それには在日朝鮮人の相当な抵
   抗が予想される。他方、送金を断つ事は技術的に不可能で
   ある。そうなると、元から断てという事になり…


つまり、日本人は、在日朝鮮人の商売を妨害し出すというのだ。在日朝鮮人のパチンコ店や焼き肉屋をつぶしてしまうだろうと言うのだ。和田のような屑人間ならばそのようなこともするかもしれないが、幸いな事に、彼のような人間は現在では希少動物となっている。自分が卑しいからといって、日本人全体も自分と同じく卑しいだろうなどと考えるものではない。

 和田センセイはその後も色々とわけの分からない戯言を書き連ねているが、結局のところ、「北朝鮮に核兵器を持たせてあげなさい」と言っているのである。何しろ、


   制裁は北朝鮮をますます閉鎖体制に追い込むので…(略)
   …降伏するくらいなら玉砕の道を選ぶということになるだろ
   う。

などと言っておられるから、「絶対に制裁などしてはいけない。拉致でも暗殺でも、好きな事をさせてあげなさい」という事なのであろう。

 では、制裁をしない代わりにいったいどうすればよいかというと、「進歩的文化人」和田センセイはその処方箋を我々に示してはくれないのである。わずかに以下のようにだけ言っている。


   北朝鮮に安全保障の約束を与え、米国、あるいは米日両国
   との国交樹立により緊張を緩和する


 つまりこれは、「今まで北朝鮮がやってきた犯罪行為は一切水に流してあげなさい」ということなのである。何しろ北朝鮮は、「日本人拉致疑惑」を日本側が口にしたとたん、交渉のテーブルを蹴り倒すという事を今まで散々やってきているのであるから。

 だいたい、「安全保障の約束を与え」などというが、そんなものどうやって与えられると言うのか。アメリカが、「北朝鮮の安全は今後保証します」と発表したって、そんなことを北朝鮮が信じるわけがないのだ。さすがに東大教授ともなると、我々のような市民ごときには想像も出来ない遠大なお考えがあるのかもしれない。


 こんなとんでもない人間が東大で先生をしているという事だけでも十分恐ろしい事ではあるが、従軍慰安婦問題に「自虐史観派」の立場としてかんでいるとまでなると、その害悪は計り知れない。「自虐史観派」が全て北朝鮮の操り人形であるとまでは言わないが(何しろ私自身「ホンモノの自虐史観派」と称しているほどなので)、そのような疑惑の目を向けられないためにも、和田センセイのようなトンデモ人間には早い所ご退場願うべきであろう。


                              なかみや たかし・本誌編集委員


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