永田町後悔記(その3)


                            中宮 崇


絶滅寸前の希少種、清美ちゃんを守ろう!


 清美ちゃんは、度胸がある。確かに馬鹿かもしれないが、度胸だけは間違いなくある。そこのところは正当に認めてあげるべきである。

 何しろ、所属政党である社民党の方針なんて、ほとんど屁とも思っていない。干からびた長老たちに目をつけられる事なんて、全く気にしていない。

 例えば、科学技術委員会でのこと。25人の委員で構成されるこの委員会は、社民党代表は辻本ネーヤンただ一人である。つまり彼女は、社民党をたった一人で代表するという、極めて重い責任を負っているのである。党の方針を無視して勝手に賛否を決定するなんて、普通の人間にはできることではない。

 ちなみに、他の委員の所属は、自民12、新進8、民主3、共産1。つまり、過半数は13であるから、与党である清美ちゃんが賛成にまわれば、自民12+社民1=13で、どんなものでも通せることになる。逆に言えば、清美ちゃんが反対にまわれば、通さない事も出来るわけで、たった一人しかいない社民党が、それも清美ちゃんがキャスティングボートを握るという、実に分不相応の権力を握っているのだ。

 そういう思わぬ権力を握った辻本ネーヤン、ある日委員会に提出された原子力発電推進に関する請願(請願者:原発立地県議会議長)において、なんと独断で反対にまわってしまった。

 さいわいなことに、民主党と新進党が賛成にまわったため、自民は思惑がつぶされることはなかったのであるが、自民党や委員会事務局は相当あわて、かつ怒り心頭に来た。

 本会議の採決では、辻本ネーヤンは欠席。社民党14人のうち、6人は反対にまわった。これは土井委員長の、


   党議拘束はかけずに、議員個人の判断で賛否を決めよう。


という、一見良識的に見えるが実は、ただの無責任かつ日和見的な鶴の一声があったためである。

 清美ちゃんは欠席したくせに、尊敬する土井さんのこの発言を、


   明らかに今までのやり方と変わった。


なんて持ち上げているが、その後の他の件については、依然として党議拘束をかけているわけだし、そうである以上、この件に関しては「どうせ社民党が反対したって通過するのだから、今回はカッコイイ発言と行動をみせつけることによって、人気を取れればこれ幸い」という思惑があったということは否定できないのである。清美ちゃんは、そのあたりのことが分かっているのか分かっていないのか…。

 さて、「明らかに今までのやり方と変わった」などとノーテンキな事を言っていた清美ちゃん、その阿呆さは、すぐに白日の下にさらされた

 先ほどの事件の後の2月13日、本会議で裁決された会計検査院検査官人事について、(先日の土井の「進歩的」発言にもかかわらず)党議拘束によって社民党は「賛成」にまわることになっていたのに、辻本ネーヤンは反対にまわった。理由は、


   独立性を保持すべき会計検査院の検査官が、大蔵などか
   らの天下り人間で構成されるというのはおかしい。


というもの。確かにこれは正論であろう。一人の人間として、反対にまわった気持ちはよく分かる。

 しかし、以前の土井発言を馬鹿丸出しの態度で称賛したことについての反省もせずに、社会党の党議拘束についての批判もせずに、「自分だけは反対した」という点に読者の注意を逸らそうという無責任な作戦は、週金信者程度の低能な族には通じるであろうが、普通の頭を持った人間を騙すことは出来ない。

 結局のところ清美ちゃんは、週金信者を始めとする「特殊市民」や「市民団体」の人間が嫌いになったのであろう。だからこそ、こういう馬鹿にした事が出来るのに違いない。

 現に、週金5/30号ではこんなことを書いている。少し長くなるが、全部引用しよう。


   正村さんは日本の政治がプログラム(改革の手順)型になっ
   ていないのが根本的問題だとおっしゃる。私は少し違う。
   まがりなりにもプログラム型になってはいるけれども、投票す
   る有権者の側がプログラム型の選択をしていないというこ
   との方が問題だと思う。さらに「政党の存在理由を示せ」と
   おっしゃる。しかし、それを作のは最終的には有権者なので
   ある。


 正論ではあるが、社民党のような腐れ政党の人間が言うべきことではなかろう。ましてや、かつて市民団体のリーダーとして政治批判をしていたくせに、何の総括も無しにこのように「市民批判」にころっと変わられてはかなわない。

 まあ、市民団体という無責任な立場から、政治家という責任ある立場になったことによって、今まで仲間であった「市民」というものに嫌悪感を抱くようになったというのも、清美ちゃんのような覚悟無き人間にとっては、仕方の無いことなのかもしれない。

 また、市民団体による「請願」にも、うんざりしているようである。直接の来訪だけで、一日20件はあるそうだ。手紙やファックスは数知れず。

 そもそも、市民団体というのは、本誌でも今まで暴いてきたように、身勝手かつ無礼で、人のことなんて全く考えることができない、社会的不適合者だ。例えば、


   「議員さんはさまざまな資料を取り寄せることができるから、
   この資料を一週間後までに送って」


などと、突然言ってくる。で、ご丁寧に、いや身勝手にも、「やってくれましたか」などと確認の電話まで入れてくる。

 同じテーマの葉書を一日に20通も一ヶ月にわたって送り付けてくるという「熱心な団体」もあると言う。こういう「熱心な」族が、櫻井よしこのような、自分たちの気に入らない人間に対して、組織的にいやがらせや脅迫をしたのであろう。

 こういう卑劣漢どもを嫌いになるのは、人間としても当然のことであろう。辻本ネーヤンがうんざりする気持ちも分かる。もっとも彼女だって、数年前まではそういう、「うんざりさせられる」常識をわきまえない、無礼な卑劣漢どもの一員であったわけだが。

 もっとも彼女も、政治家になったぐらいでは、刷り込まれた非常識さは拭い去れないらしく、社民党のくせにアポも取らずに自民党の幹事長室に駆け込むということまでやっている。相手の都合なんて、彼女のような自分のことしか考えない独善的なワガママ連中の狭い視野にはまったく入らないのであろう。

 また、彼女のような人間を見ていると、「市民派」などという人間の学習能力の無さがよく分かる。

 「たまごっちも知らない永田っち」などと、永田町を馬鹿にしているが、以下のような発言を見ていると、「おまえ、たまごっちよりも先に勉強しなければならないことがあるだろう?」と周囲の人間は誰も言ってあげないのか、他人事ながら心配になってくる。


   日本が(ODAなどの)援助をするけど、日本企業が工事を
   請け負って、お金は日本に還流され、その国には借金しか
   残らないという批判がある。

   (沖縄反戦地主のことを)「座布団地主」、「ハンカチ地主」
   なんていう失礼きわまりまりない発言が「ヤマト(本土の人
   間)」側から飛び出している。私は恥ずかしい。ウチナー
   (沖縄人)の怒りはいかばかりか。


 前者の類の発言については、本誌のペルー特集でも、その馬鹿さ加減と不当性は暴いたし、後者についても北朝鮮特集で、「ハンカチ地主はウチナーではなくヤマトで、しかも北朝鮮の回し者まで紛れ込んでいる」ということを指摘した。

 そういう基本的な事実もわきまえていない清美ちゃんは、それについてこそ「恥ずかしい」と思うべきだ。「ヤマト」とか「ウチナー」とか、わけの分からない言葉を使うだけで自分を偉そうに見せようとする人間には、言っても無駄かもしれないが。


 辻本清美は、次回の選挙では生き残れないであろう。かと言って、あれほど馬鹿にした態度をあらわにしていては、今更古巣の市民団体に戻る事もできない。特別天然記念物のトキと同じで、彼女の「絶滅」は今や、約束されたようなものだ。

 動物保護団体は良く、「絶滅しそうになったら、ゴキブリでも保護しようとするに違いない」と批判されることがある。自然界から消え去ったと言われる天然痘も、いまや研究室の中で厳重に「保護」される立場にあるという(もっとも、その後廃棄処分になったという話を聞いたことがあるような気もするが(笑))。

 私は別に動物保護派でもないし、天然痘の研究者でもないが、いくらゴキブリでも、絶滅の危機に瀕しているのであれば、生活に不都合が生じない限りにおいて、可能な限り保護してあげたいとは思っている。

 清美ちゃんのような、知性も羞恥心も常識も無しに度胸だけで政界を泳いできたような希少な種は、個人的には是非とも「保護」してあげたい。いくらなんでも、ゴキブリよりはマシであろうし。

 こういうのが一人ぐらいなら、議員の中にいた方が、何かと面白い。二人は多すぎるが。「道楽」こそが、「動物保護」の本質である。


                              なかみや たかし・本誌編集委員


前のページへ