『週金』を(少し)もちあぐ!


                            中宮 崇


『週金』も、(ほんの)少しは良いことを言う!


 いつも本誌が批判してばかりの雑誌『週刊金曜日』でありますが、何も、いつも悪どい事ばかり書いているわけではありません。たまには正論を書くこともあります。

 そんな「悪どくない」記事の中で(比較的)秀逸なのが、5/16号の


   「これでもあなたは合成洗剤入り
      歯みがき剤を使いますか?」


なる、一連の特集記事。

 さて、実は筆者は、小学校の高学年あたりから、歯磨き粉は全く使っていません。ホテルなどに宿泊したときには、歯磨き粉付きの使い捨て歯ブラシしか備えられていない場合があるので、その時はやむを得ず使っていますが、日常的には歯磨き粉は一切使わない。

 それでいて、虫歯は一本もありません。中学のときには、「歯の健康優良児」として表彰された事もあります。

 これだけ見ても、虫歯予防には歯磨き粉の使用は必要条件ではありえない、ということが分かります。

 では、何か特別な歯の手入れをしているのかといいますと、何もしていません。普通に(歯磨き粉を使わずに水だけで)歯ブラシで歯を磨いているだけです。まあ、秘訣というほどの事ではありませんが、歯ブラシは、子ども用の、ブラシ部が小さくて小回りが効くものを使っています。それだけです。

 ところで、これは以前から思っていたことなのですが、日本人は諸外国に比べて、歯磨き粉の普及率が異常に高いようです。ほぼ100%と言っても良いでしょう。ところが、私の周りの留学生などを見た限りでは、歯磨き粉の使用率はせいぜい70%といったところです。

 歯磨き粉は、フッ素入りとか歯槽膿漏予防とかの一部の薬用のものを除いては、虫歯予防効果を含むいかなる効果もありません。ただ、歯の表面をがりがり削って、口の中をスッとさせる、それだけが効能です。そんな役立たずの粉を日本人のほぼ全員が毎日使用しています。しかも諸外国よりも圧倒的に多い割合で。

 それどころか日本の親は子供たちに、「いちご味」だの「バナナ味」だのという歯磨き粉をわざわざ買って与えたりしています。私には到底理解し難い行動です。なぜ日本人はこれほど、役立たずの歯磨き粉が好きなのか、私にはその理由は、単にマスコミの宣伝に載せられているだけのように思えます。特別な調査をしたわけではありませんからはっきりした事は言えませんが、こんなところからも日本人のマスコミに対する抵抗力の無さを垣間見る事が出来るように思えます。

 歯磨き粉は、ただ役立たずなだけではなく、はっきり言って歯の敵です。あんなものを使っていては、かえって虫歯になります。

 まず、どこが汚れているか分からなくなります。歯磨き粉を使わなければ、鏡を見ながら、汚れているところを探し出して集中的に磨く事が出来ます。歯磨き粉の泡は、そういった作業の邪魔にしかなりません。

 次に、歯磨き粉に最近よく含まれている研磨剤、これがくせものです。確かに歯の表面の汚れを磨き落とすことは出来るのでしょうが、同時に、歯の表面のもっとも脆いエナメル質をも傷つけます。歯が白いのはエナメル質の白さゆえですから、そんな事をしていてはやがて、歯は黄色っぽくなってきます。これは、エナメル質の下の象牙質が黄色いためです。

 よく、「白い歯を!」などという宣伝がなされていますが、歯磨き粉なんぞを使っていては、「白い歯」どころか確実に「黄色い歯」になるのです。色が変わるだけならまだ良いですが(白ではなく黄色が、歯の健康的な色なのだそうですが)、表面が削られてゆくわけですから、当然虫歯にもなりやすくなります。今話題の「知覚過敏」(冷たいものをかじったりするとシミルこと)の原因ともなりかねません。

 つまり、一部の薬用を除く一般の歯磨き粉は、虫歯になりたくないならば使ってはいけないのです。虫歯になりたい方は、どうぞお使いください(笑)。

 さて、『週金』の特集に戻りますが、同号では、以上の私の理解をさらに補う情報が色々と盛り込まれていました。

 もっとも衝撃的だったのは、「歯磨き粉には合成洗剤が使われている!」という事実。一番よく含まれているのは「高級アルコール硫酸エステルナトリウム」とか「アルキル・サルフェート」、「ラウリル硫酸ナトリウム」といったもので、これらは合成洗剤の材料として多用されているものなのだそうです。

 ちょうど家で使っている洗剤、花王の「アタック」には、「アルキル硫酸エステルナトリウム」なるものが含まれているようですが、これは上記のものと同じなのでしょうか?もし同じだとすれば、相当恐い事です。

 同特集では、合成洗剤の毒性や、歯磨き粉に含まれる他の様々な添加物の危険性についても詳しく触れています。歯磨き粉は「食品」ではありませんから、食品では禁止されている、危険性の高い添加物が多数含まれているのだそうです。

 他にも発癌性等についての指摘を始めとして、かいわれ大根を使った育成試験(合成洗剤入りの水を使ったかいわれはあまりよく育たないが、石鹸水のかいわれは育つ)とか、合成洗剤を滴らされたミミズは死ぬとか、合成洗剤を塗られたラットの舌の細胞は破壊されるとか、至れり尽くせり。

 考えてみれば、普通の歯磨き粉は、使用後には味覚が変になります(直後にみかんなどを食べたら悲惨です)が、石鹸系の歯磨き粉は味覚が変化しませんね。

 しかしこういう、『週金』の中でも比較的「マシ」な記事も、「正義真理教」信者の悪弊はどうしても拭い去れないようで、依然として「合成洗剤にくらべて石鹸は無害で、自然にやさしい」といった類の妄言を繰り返しております。先ほどのかいわれ実験でも、何を思ったか、


   せっけんの成分がいかに植物に栄養として利用されている
   かがわかります。


などとまで言っている。そんなに石鹸が植物の栄養になるのなら、畑には石鹸を撒けばよいのに。他にもこの種の、「正義の信念」ゆえの馬鹿な予断と妄言がいくつかあるのですが、まあ総体としては、週金としては「比較的マシ」な方だと言えます。

 どうも環境保護派は、どうしても石鹸に執着したいらしく、この特集でも、石鹸がいかに無害か(それどころか、いかにかいわれにとって「有益」か)を必死に宣伝しようとしています。また、歯磨き粉の使用を控えさせることよりも、石鹸系の歯磨き粉を使わせる方に力点を置いているようです。

 そういう、過去の「自然にやさしい」運動(本誌6/30号参照)を取り繕うためだけのプロパガンダがなければ、もっと良い記事に仕上がったのでしょうがね…。


 確かに、歯磨き粉を使わないと、口の中にかなりの違和感を覚えます。しかし、一週間も経てば、そんな違和感は消えてしまいます。日本人の歯の健康のためにも、そして環境保護派の最後の悪あがきに乗せられないためにも、歯磨き粉なんて捨ててしまいましょう!


                              なかみや たかし・本誌編集委員


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