『週金』を撃つ!−9(その1)

弾圧支持者『週刊金曜日』


                            中宮 崇


メディアとしての役割を放棄し、「日本人は弾圧されても仕方がない」とまで放言!


 別記事でも書いたように、中国にシンパシーを持つ連中は、このたびの香港返還を、見て見ぬふりをしている。口を開いてしまったら、中国による香港人への人権弾圧の可能性についても触れざるをえなくなるからだ。

 岩波書店の雑誌『世界』などは、ただ無視するだけでなく、日本軍国主義やインドネシア、ペルー等の劣悪な人権状況を糾弾する特集を、わざわざこの時期に組むことによって、中国の人権弾圧や侵略行為から目を逸らささせると言う、まことに高級な情報操作作戦を展開中である。

 そんな中で、特集は組まないまでも、積極的に中国を擁護する珍しい雑誌がある。あの『週刊金曜日』である。

 この雑誌は、6/6号から6/27号にかけての4週に渡って、


   「‘97香港“狂想曲”」
      金丸 知好


なる連載を行った。

 その各回の副題を見てみると、「作られた返還不安」、「爆発する香港人の中国ナショナリズム」、「香港人と中国人の心の「国境」」、「香港、ゆく人、くる人」と、その中国擁護姿勢を隠そうともしていない。


「返還不安」は作り物?


 第1回の「作られた返還不安」では金丸は、要約すると以下のように言っている。


   「香港人は返還を不安がっている」というのは、日本マスコ
   ミによって作られた嘘である。実際には誰も、不安になんて
   思っていない。香港人にとって返還よりも心配なのは日本人
   の精神構造である。


 いや〜、最初からずいぶんと飛ばしてくれるものである。「心配なのは日本人の精神構造」とまで言い切ってしまうところがスゴイ。さすがにかつて、オウムに殺された坂本弁護士一家を侮辱する記事を書いておいて、なんの責任も取らなかっただけのことはある。将来、香港の地が朱に染まっても、週金がこの記事についての責任をとる事は決してあるまい。

 確かに金丸が言うように、マスコミが香港返還ブームを煽ったという一面は否定できない。しかし、少なくとも私には、金丸が言うような「日本マスコミは返還不安を煽っている」などと事実があるようには到底思えない。むしろ、「香港の住民は、返還への不安は全く無いようです」と言った類の「現地レポート」の方が多いように思えるし、そういったレポートをしていたテレビ番組について具体的な例を、別記事でも挙げた。

 ところが金丸は、自らの主張を裏付けるような具体的な実例を、一つも挙げてはいない。いや、例を挙げてはいるのであるが、そのいずれを取っても、なぜか具体的な番組名や発言者名は伏せている。まあ、作り話を適当に寄せ集めただけなのであろう。そうでないというのなら、なぜ番組名を伏せる必要があるのだ?本誌でもしばしば批判しているように、この手の連中は、「匿名」を悪用してでっち上げ行為を行うことがよくある。

 そういった、金丸の「匿名実例」を並べて見よう。


   「黄大仙という寺院があって、ここを取材したテレビレポー
   ターのコメントにはびっくりした。ここは平日でもお祈りやお
   みくじを引く人であふれているのに、いきなり『香港の人々は
   返還への不安を打ち消すためにお祈りにやってきます』
   だって。そのコメントのあと、実際に祈っているじいさんにイ
   ンタビューしたら『金が儲かりますように、って祈ったのさ』
   だって!」(日本人ジャーナリストKさん談)

   (Kさんが見たという、香港特番用台本における記載)
   スタジオ:ところで香港の人たちは覇気がないように見えま
         すが。
   中継記者:はい、返還からの不安感からでしょう

   「香港には返還に対する不安の空気はほとんど無い」と
   いう記事をいくら送っても、「東京(のデスク)に受けないか
   ら、うまく書かないとボツになる。どうしても悲観的なものが通
   る」(某大手新聞社特派員談)

   「日本人にとっての香港は、これはパプアニューギニアの原
   住民がペニスケースを『していなければいけない』のと一
   緒。『不安定』でなければ画にならない」(某香港人コラムニ
   スト談)


 まだまだあるのであるが、驚くべきことに、具体的に実名や番組名を挙げているものが、ただの一つもない。本当に金丸は、取材を行ったのであろうか?欧米のマスコミなら、こんな匿名だらけの手抜き記事は、到底まともな記事としては受け入れられないであろう。つまり、そんないい加減な記事を載せる『週金』は、常識的に考えて「まともではない」ということである。


『週金』信者の異常な精神構造


 金丸は、「心配なのは返還よりも、日本人の精神構造の方だ」などと言うが、私に言わせれば、金丸のような『週金』信者の方がよっぽど心配である。

 金丸は、香港の若者について、以下のような詐欺文を書く。


   「せっかくの連休だし、タイにでも行ってくるつもり。返還儀式
   なんて興味ない」という香港人が、とりわけ若者に多い。


 朝日や週金などの嘘つきメディアがしばしば使う手口であるが、「とりわけ若者に多い」などと言いながら、その根拠となるデータを全く示していない。それに、「連休には遊びに行く」と若者が言っていたからと言って、それが即、「返還に不安はない」と考えていると言うことにはなるまい。

 ちなみに、香港の沙田区議会と中文大学が合同で行った調査では、15〜24歳の青少年のうち、実に43%が「移民したい」と回答している。また、香港大学が行った、市民一般を対象とする調査でも、「政治的に不安定になれば、香港を離れる」という回答だけで15%にのぼった。

 金丸は、私のような一学生でも知っているこういった調査を知らないのであろうか?ならばジャーナリストとしては失格であるし、分かっていてこんな事を書いたとすれば、人間として失格である。


メディアの役割を放棄する週金


 金丸は、日本の「香港ブーム」を、以下のように批判する。


   しょせん日本人にとって香港返還なんて、「たまごっち」な
   どの流行ものと一緒の扱いなのだ。


 はて、「流行ものと一緒」で何が悪いのであろうか?一般人が、香港返還についていつも、「これは大変だ!我々ももっと深く考えなければならない!」などと思っていないといけないのか?

 「流行ものと一緒の扱い」をしているとすれば、それは一般の日本人ではなくマスコミなのであって、「流行ものと一緒の扱い」で終わらせない責任もマスコミにある。一般人が見逃している、あるいは関心を持とうとしない問題について注意を喚起する役割こそ、マスコミの第一の仕事であるはずなのに、それを無視しておいて他のマスコミと同じように「流行ものと一緒の扱い」をしている『週金』が、よくもまあ破廉恥にも、日本人にこんな不当な攻撃を加えられるものである。


狂った金丸


 金丸の記憶力は、どうやら1週間もたないほど貧弱なものである。一度病院にかかるべきだ。

 第1回において「返還不安なんて、日本マスコミがでっち上げたものだ!」などと言っていたくせに、次の週の第2回「爆発する香港人の中国ナショナリズム」においてはなんと、「香港人は、返還の不安を反日行動によって紛らわせている!」などと言っている。おいおい、「返還不安は作られたもの」なのではなかったのか?

 昨年7月に日本青年社(なぜか日本国内では、単に「右翼団体」としか紹介されない)が尖閣諸島に上陸して灯台を建ててから、香港では反日運動が盛んである。金丸も書いているように、香港では巡視船を「軍艦」と呼ぶなどの、常軌を逸した虚偽の報道が堂々とまかり通っている。

 しまいには、尖閣上陸を企てたお調子者が、海に飛び込んで水死するという珍事まで発生し、予想された通り、香港マスコミはこれを、「日帝による殺人」などと書きたてた。

 また、金丸によると、香港メディアで活躍していた2人の日本人女性が、「もっと冷静になれ」と発言したとたん、「日本のスパイ」とか、「ポルノ映画に出演」などというでっち上げのバッシングを受け、言論の場から追放されてしまったのだそうだ。

 こういったとんでもない言論弾圧についても金丸は、「香港人は、返還の不安を反日行動によって紛らわせている」などと言って擁護する。しかもろくでもないことに、こんなことまで言う。


   過去への誠実な対処。これが行われないかぎり、日本人か
   ら「尖閣諸島について冷静に話し合いましょう」と香港人に
   呼びかけても、説得力はまったくない。


 つまり、戦争責任を認めて賠償を行わない限り、日本人は嘘まで書かれて弾圧されてもかまわないと言うことなのであろうか。こういう連中は、そのうち、こう言い出すであろう。


   過去への誠実な対処。これが行われないかぎり、日本人か
   ら「日本人拉致事件について冷静に話し合いましょう」と北
   朝鮮に呼びかけても、説得力はまったくない。


と。現に、この手の発言は、朝生などでも見られた。


 金丸は、例の匿名の、実際にいるのかいないのかも分からない香港人コラムニストに、こう言わせている。


   「香港返還より日本人の精神構造のほうがよっぽどこの先心
   配なのです」


 賢明なる読者は、ここまで見てきただけでも、心配なのは『週金』信者のような連中の異常な精神構造と虚言僻の方であるということが、十分お分かりになるであろう。

 「過去への誠実な対処をしないような日本人は、香港人から弾圧されても仕方がない」とまで言い切る『週金』には、私はこう言ってやろう。

 「坂本弁護士一家侮辱事件への誠実な対処をしない『週金』は、日本人からどんな批難や弾圧を受けても仕方がない」と。


                              なかみや たかし・本誌編集委員


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