激白!偏向授業!(その2)


                            中宮 崇


朝日に通じる、巧妙なる「圧力」!


 今回も、自虐史観教師による偏向授業告白本、


   「教室で語りあった戦争責任
     平和の主体が育つ近現代史の授業」
         久保田 貢  かもがわ出版


について見て行こう。

 前回指摘したように、この書は、中学教師である久保田による、生徒に対する巧妙なマインド・コントロール授業(本人は、「平和教育」などと称している)の実態を描いたものである。

 その1でも書いたが、久保田の「平和授業」なるものの手順を、もう一度見てみよう。


   1−久保田による、生徒への「基礎資料」の提示

   2−生徒自身による、図書館等での調査

   3−調査を元に、報告書を作成(久保田の「指導」が入る場
     合がある)

   4−久保田が選んだ報告を、学級通信へ、討論の前に発表

   5−報告の発表と、討論


 前回は、すでにステップ1と2の段階で、久保田による「洗脳」作戦が実施されていると言うことを暴いた。何しろ、「生徒への「基礎資料」の提示」などというが実はその実態は、朝日新聞と毎日新聞、中日新聞の記事を生徒に見せるということだったのであるから。


巧妙なる、家庭への圧力


 本に掲載されている、生徒の報告書を見ていると、すぐに気付く点がある。新聞を資料として用いる場合、朝日、毎日、中日のみしか使っていないのだ。読売や産経、ましてや日経などは、影も形も見られない。

 これは、教師である久保田のマインド・コントロール作戦の成果であるといえる。何しろ、久保田自身が、「基礎資料」として朝日、毎日、中日しか示していないのであるから。「熱心な親」が、自分の子どもが持って帰ってくる「先生からもらったプリント」を見て、朝日、毎日、中日しか載っていなかったら、それだけで、「我が家でも、子どものために、読売や産経、日経はやめて、朝日か毎日か中日をとろう!」ということになるであろう。

 久保田は生徒に対して、家庭でも新聞を読むように「指導」している。しかし、実質的に、「朝日か毎日か中日を読め!読売や産経、日経は読むな!」と、家庭に対して「指導」しているのと同然の、巧妙な圧力を加えているのである。その「作戦」が、生徒に対する「新聞投書指導」である。

 久保田は、生徒達に、新聞の投書欄への投書を「指導」している。ところが、一見生徒の自主性を尊重しているように見えるこの「指導」は実は、久保田の管理下で行われる、組織的な行為なのである。

 まず久保田は、生徒に対してノートを用意させ、毎日、新聞の切り抜きをするように「指導」している。生徒が毎日、何新聞を切り抜いているか、想像に難くはなかろう。

 次に、500字程度の自分の主張を生徒に書かせ、職員室前に置いてある箱に提出させる。

 それらの中から久保田が、「自校の生徒として恥ずかしくないレベルのもの」を選んで、久保田が新聞社に対して送付する。

 なお、生徒の文については「原則として」手は加えないなどと言っているが、こうも言っている。


   惜しいレベルの文については「ここを直すと投稿できるかも
   しれない」といって生徒に書き直しをさせる。


 一応この直後に、「どのように直すか(あるいは直さないか)は、生徒にまかせる」など言い逃れをしているが、手直ししなければ、久保田は投稿しないのであるから、実質的には「書き直せ!」と強要しているのと同じである。

 そもそも、なぜ久保田が「とりまとめて投稿」する必要があるのだ?生徒各自に投稿させれば済む事である。事前に検閲するのが目的なのであろう。しかも、「ここを直すと投稿できるかもしれない」とは何たる言い草か。久保田が、「ここを直すと新聞社に採用されるかもしれない」とは言っていないと言う事に注目するべきだ。結局、久保田の考えに合うように、生徒の主張を強制的に改変させているのだ。

 そして更に問題なのは、こういった「投稿指導」を成績評価の対象としていると言う点だ。生徒が提出したノートには、AからEまでの五段階評価をして、更に添削もして返却する。B以上が、「新聞社に送れるレベル」だ。これを、「平常点として増点」するというのである。ちなみに、評価の段階によって増点数が変化するのかどうかは全く触れていない。触れたらまずいとさすがにわかっているのであろう。

 ここから生徒は当然、「新聞社に送られるレベルのAやBをとりたい!」と思うであろうし、そうなれば、久保田の気に入るように書き直そうという気持ちにも当然なるはずだ。

 そして久保田は、ノートの提出を「忘れた者は減点」している。つまり、「新聞投稿指導」は、久保田による強制的なものなのである。生徒は、これを拒否する事はできないのだ。そして毎日、久保田の薦める朝日、毎日、中日をしこしこと切り抜き、久保田の気に入るように文章を書いてくる事になる。

 ここまででも、久保田の行為は十分、生徒及び家庭に対する「マインド・コントロール」として成立している。しかし、久保田は更に駄目押しをしている。それが前回少し触れた、「焼き付け作戦」である。

 これは、どういうことかと言うと、「投稿先を朝日、毎日、中日だけに限定する」ということなのだ。まったく恐るべきことである。

 考えても見て欲しい。投稿先を「朝日、毎日、中日に限定する」などと言われれば、それだけで、採用され易くするために、それらの新聞の論調に合わせるような文章を書こうと最初から心がける事になる。久保田が最初に生徒に提示する基礎資料(朝日、毎日、中日)とあいまって、これで生徒への統制は完璧となる。

 そしてこれは、家庭に対して「読売や産経の購読を中止して、朝日や毎日、中日を取れ!」と言っているのと同じである。先に触れたように、「熱心な親」は、自分の子どものためにも「先生の薦める」朝日、毎日、中日をとろうとするであろう。その上、「あなたのお子さんの文は、朝日、毎日、中日に投稿します」などと先生に言われては、親は当然、「うちの子どもの文が載るかもしれない新聞を、日ごろからとっておこう!」ということになるであろう。久保田はそうした「親の心理」を実に巧妙に利用して、自分の教え子の家庭に朝日、毎日、中日を「売り込んでいる」のである。朝日のヤクザまがいの販促員よりも、遥かに「好営業成績」であろう。


生徒へのレッテルはり


 久保田は、生徒の討論の様子についても書いている。前に書いたように彼は、討論の前に、偏向基礎資料を提示して生徒をあらかじめ洗脳しているのであるが、討論の途中にも「司会」として口を出し、それでもまあ足りないのか、自分の気に入らない生徒について、実に信じられないレッテルはりをしている。

 それについて見てゆく前に、久保田の偏向基礎資料の例を、もう一つ見てみよう。彼は討論の前に、こんなものを配布しているのである。


   「シベリア抑留」とは
   …(略)…もっとも、これ(シベリア抑留)については、日本側
   が戦争末期、国体護持と引き替えに「領土割譲」や「賠償
   としての若年労働力の提供」という提案を用意していた、と
   いう資料があるので、日本の指導部の了解済みのこと、と
   も言えるが、しかし旧ソ連の責任が全く無いとは言い切れ
   ない。


 とんでもない事だ。何が「ソ連の責任が全く無いとは言い切れない」だ。責任は大有りだ。ソ連の戦争犯罪を少しでも薄めようという、久保田の意図が見え見えである。そしてそういう、国際法にも明らかに違反する行為について、あたかもソ連よりも日本の方が悪いような書き方をし、生徒をマインド・コントロールしようとしているのだ。

 このような資料に影響されて久保田に追随する生徒について、彼は最大限の賛辞を送る。例えば、「現代の我々にも戦争責任がある」などという生徒について、こんなことを言っている。


   典(生徒の名前)は、この学年で社会学的な考察力の最も
   優れた生徒である。事務能力も卓越しており、この頃、中
   学生徒会会長として「制服自由化運動」を引っ張っていた。


 そして一方で、久保田の支持するところの「制服自由化運動」に反対する生徒については、こう言っている。


   斬新な改革を好まないところもあった。
   社会科の課題でも、「支配者層」の立場にたって考えること
   が多く、いつも極めて保守的な意見を書いていた。


 自分の考えに沿わない生徒は、「支配者層の代弁者」などと考えているのである。よくこんな偏向教師がでかい顔していられるものだ。

 彼は討論の様子を延々と描いているが、全部が全部、この調子である。そして討論の途中で「司会者」として口を出し、一定の方向に引っ張ってゆこうとしている。寒気を感じるのは私だけであろうか。


 久保田は、自分の学校についてこんなことを言っている。


   本校では、私だけでなく、他の教科でも検定教科書を使わ
   ずに、独自の教材や補助教材を中心にして授業を行う教
   員も少なくない。


 とんでもないことだ。教師の恣意的な判断によって、教科書がごみ箱行きにされているのだ。そして、「独自の教材」を使っていると言う。先ほどのシベリア抑留の件といい、ソ連礼さんの、「家永検定不合格教科書」でも使っているという可能性も捨て切れないであろう。

 これはもはや、「教育現場の自由化」などとして済まされるような問題ではない。このような露骨なマインド・コントロールが行われているという現状を、生徒の親たちは、常に意識しておく必要があろう。


                              なかみや たかし・本誌編集委員


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