『週金』を撃つ!−13(その2)

後ろめたさからの逃避


                            中宮 崇


跋扈する「放火魔消防士」たち!


 先週に引き続き、雑誌『週刊金曜日』記事


   「女子高生 その実態と主張」
         竹内 真理


なる差別記事について。

 市民運動や人権派などが陥り易い病理の一つに、ある対象の権利を擁護しようとしつつ、実のところただ単に差別し貶める結果に終わるという物がある。

 例えば慰安婦問題の場合、「慰安婦は売春婦なんかではない!」という主張からも分かるように、売春婦という職業を差別している。また、慰安婦を「性奴隷」、「性囚」、「淫獣」などと平気で呼んでいるが、元慰安婦たちがこれを聞いて、心安らかでいられるであるか?彼等は、売春婦だけではなく、慰安婦さえも心の奥底では差別し、汚らわしく思っているのである。


真偽不明の怪しい「ルポ」


 「女子高生の実態を取材した」などと称し、週金ルポ大賞なるものまで獲得したこの記事も、女子高生を擁護しているように見せつつ、実のところ彼女たちを軽蔑し、差別し、貶めている。

 ルポを書いた竹内は、女子高生三人を集めてインタビューし、援助交際等の実態に迫った、と称している。本当にそんな取材をしたのかどうか、怪しいものである。何しろこの三人(例のごとく、いずれも匿名)は互いに小学校のころからの友達で、現在は高校三年生。三人とも援助交際をしていて、毎月30万円も稼いでいるというのだ。

 援助交際女子高生などというもの自体が、実際には女子高生の中では極少数派に過ぎないのであるから、竹内が彼女たちをどこから捜してきたのかは知らないが、「お友達三人で援助交際」なるこのような例は、極めてまれであるといえる。しかも、ルポを書いた竹内は、プロのジャーナリストではない。販売員のアルバイトをしている、ただの素人だ。そんな竹内が、このような希少な例を、実に都合良く探してこられたとは、彼女のジャーナリストとしての才能は大した物である。『週金』や朝日は、すぐにでも雇ってあげるべきだ。まあ所詮、「朝日さんご事件」と同類の性質の記事なのであろうが。

 大体、竹内は、毎月何十万円も使う三人の女子高生の話を聞いて、


   40万円という金額を簡単に口にした彼女に私は驚きました。


などと驚いて見せているが、一方で、このような特殊な例をどこからともなく探してきて(もしくは適当にでっち上げて)、女子高生はみんなそのようなことをしているかのように書いているのである。実際、


   ごく一部の人がしていたことを、今は当たり前のように多くの
   女子高生がしている


などと書いているし、


  もちろん真面目な子もいるでしょう。


などとわざわざ書いている。普通に読めば、「普通の女子高生はみんな援助交際しており、真面目な子はごく一部」と主張していることになる。

 そして、竹内は1979年生まれ。つまり、最近まで自身が女子高生世代であったわけだ。なのに、「月に何十万円も援助交際で稼いで使っている、一般的な女子高生」に驚いて見せる…。いい加減この上ない。最近まで女子高生世代だった竹内が驚いたということは、そんな女子高生など一般的ではないということを意味するのだから。高校を卒業していない竹内は、「私のような人間と、女子高生とは違う!」とでも思っているのであろうか。そうであるならば、結局女子高生を差別しているのは、社会でも大人でもなく、竹内自身であるということになる。


差別の挙げ句、「社会が悪い!」


 竹内が「やった」と称するするインタビューは、テレクラやデークラの利用の仕方とか、「売春の摘発にあせった」という話などが続く。この部分だけならば、「女子高生のただれた実態」とでも題して、女性週刊誌の記事にしても通じるぐらいだ。そしてこれは、市民団体や人権派がよく行う手法なのである。

 まずは、「女子高生のただれた実態」を書きたてる。その際、インタビューなどを適当にでっち上げることもする。そうして読者に、「今の女子高生は、深刻な状況にある」と印象付ける。そして最後に、「これは社会が悪いのだ。社会の責任なのだ」という結論に持ってくるというわけだ。

 冷静な目で見てみれば、彼等のやっていることは結局、一部の特殊事例を、さも一般的なことであるかのように見せて、有りもしない「社会の責任」をでっちあげて責任を転嫁するというものであり、ここで典型的に見られるように、結局のところ差別や偏見を助長しているだけなのだ。それどころか、彼ら自身が差別や偏見を持っているくせに、正義の味方ヅラして「社会の責任」を糾弾するという、何とも始末におけない連中なのである。

 竹内の奇天烈な御都合主義については、前回十分に指摘したと思うので、それをもう一度思い出して頂きつつ、この「ルポ」と称するデマ記事の最後の部分を、少し長くなるが読んで頂きたい。


   みなさんは、女子高生とはどのようなイメージをお持ちです
   か?

   みんながみんな、同じ格好をする個性の無い集団ですか?
   本来なら彼女たちには必要のないはずの大人の持ち物を
   持ちたがる、生意気な集団ですか?少し見方をかえれば、
   流行を作り出すことによって企業を支える大切な集団なの
   ではないでしょうか。


 そんなイメージを作り出しているのは、実のところ竹内自身なのである。大体、「少し見方を変えれば」、談合だって、「企業を支える大切な」行為ということになるであろう。竹内の妄言は、依然として続く。


   みなさんが働くのはなぜですか?お金のために何かをする
   という原典を教えたのは社会のはずです。


 冗談ではない。たとえそんな阿呆なことを教えた大人や教師がいたとしてもそれは、週金や朝日、人権派や市民団体のような族ではないか。自身の犯罪を、他人に平気で擦り付けるこの神経は、いったいどうであろう。


   彼女たちとみなさんの求める物はなんら変わりありません。
   それなら、お金の本当の得方を知らない彼女たちに教えて
   あげればいいのです。教えれば、すぐに学ぶ集団なのです
   から。

   今の女子高生、確かに問題はたくさん抱えています。し
   かし、その理由をひとつひとつ聞いてあげると問題点は明確
   になってきます。そしたら、答えを一緒に考えてあげてくだ
   さい。彼女たちは、まだ誕生して15〜18年しかたっていな
   いのです。そんな彼女たちを否定してしまうのは、まだまだ
   早すぎるのではないでしょうか。


 全くここまで来ると、呆れて開いた口がふさがらない。「自分で放火しておいて、火消しに駆けつけ、その上火消し料まで請求する」という、典型である。「そんな彼女たちを否定」しているのは、竹内を始めとする人権派や市民運動、週金自身なのであるから。

 しかし、竹内の言うように確かに、「その理由をひとつひとつ聞いてあげると問題点は明確になっ」た。問題点は、竹内のようないい加減な族がでかいツラして跳梁できるという点にあることは明白である。そして連中がこのような卑劣な行為に走る理由は、自ら享受している豊かな生活に対する後ろめたさから逃避するためなのである。そんなことのために、責任転嫁やでっち上げを恒常的にされてはかなわない。

 そして、このようないい加減なデマ記事を「ルポ大賞」などに平気で選んでしまう週金は、どうであろう。もっとも、本誌でも何度も暴いているように週金は所詮、でっち上げを平気で書いて、謝罪も訂正もしないような雑誌であるのだが。


                              なかみや たかし・本誌編集委員


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