健忘症患者の乱舞
中宮 崇
マスコミ人は、健忘症なのか、二枚舌なのか?
その貴人の葬儀の日、全国の商店は営業を自粛した。祭りやスポーツ大会等の各種行事は延期、または中止された。
筑紫哲也や久米宏、朝日新聞、そして「進歩的文化人」達は、このような「自粛ムード」を、「後進的」、「前時代的」、「封建的」、「民主主義の未熟性」と、ありとあらゆる罵詈雑言を浴びせ掛けて罵倒した。中には、その国の国民を「土人」とまで言い放った者までいた。
これが、8年前の、昭和天皇崩御の際に発生したことである。普段から日本人を貶めようと、てぐすね引いて構えているこの連中は、ここぞとばかりに食らい付き、「日本人の劣等性」を、これでもかとばかりに言い立てた。
ところで、先週の6日に行われた、ダイアナ妃の葬儀のことを思いだして頂きたい。その日、イギリスの多くの商店は営業を自粛した。各種行事も延期、または中止された。それどころか中には、脅迫まがいの圧力に負けて中止や延期に追い込まれた行事もある。例えばスコットランドサッカー協会は、ワールドカップの地区予選を予定通り強行しようとしたところ、国民からの多くの抗議によって、延期を余儀なくされた。
考えて見て頂きたい。8年前のあの時、もし誰かが何かの行事に対して、「不謹慎だから延期しろ!」と電話していたら、朝日新聞や筑紫哲也などの連中は、いったいどのように報じたであろうか?恐らく、「右翼が脅して行事を中止させた。日本人は、何と民主主義にふさわしくない遅れた国民なのであろう」とでもわけ知り顔でコメントしたに違いない。実際、そういう報道が一部マスコミでなされた。
朝日新聞を始めとする、この手の「日本人を貶める会」の会員たちは、8年前の自分たちの発言に頬被りしている。ダイアナ妃の葬儀の際に発生した「自粛ムード」について、ほとんど無視している。当然である。市民に、8年前のマスコミ自身の犯罪を思い出して欲しくないのであるから。
日本のマスコミに広く巣食う、この手の「日本人を貶める会」の会員たちは、今回のダイアナ妃の葬儀の例でも分かるように、同じことをしてもそれが日本人ならば、「後進的」、「前時代的」などと断じ、イギリス人や中国人、朝鮮人(そしてかつてはソ連人)がやることならば、「進歩的」、「恩情的」などと、180度評価を翻す。彼等の頭には、「何がなんでも、嘘やでっち上げをしても、日本人を貶めよ!」という命令が刷り込まれているのである。誰に刷り込まれたのかは知らないが。
例えば連中は、太平洋戦争における日本の行為を「侵略である!」と言い立て、教科書にまでそう記述させてきたが、こういう卑劣漢どもにとってはなぜか、北朝鮮が韓国に対してやったことは「南進」であり、ソ連が中立条約を破って日本に攻めてきたことは「進出」なのである。同じことをしても、日本の行為は「侵略」、北朝鮮やソ連がやったことは「南進」、「進出」なのだ。連中の奴隷根性を暴くには、この例だけでも十分であろう。
さて、ダイアナ妃の葬儀に話を戻そう。今回のダイアナ妃事件において、日本のマスコミは、以下のような方針を採っている。
8年前の、昭和天皇崩御の際との比較をしない。
酒鬼薔薇聖斗事件を持ち出さない。
ダイアナ妃とアルファイド氏をチクチクと貶める。
マスコミへの批判をかわすため、適当ないけにえを作り上
げる。
・ダイアナ妃の運転手の責任を不当に拡大して報じる。
・「イギリス王室への批判」をでっち上げる。
・全ての責任を、一部のパパラッチだけに押しつける。
「報道の自由」を絶対視する論調を垂れ流す。
これらの方針を実現するための彼等マスコミの犯罪は、これまでの記事で何度も暴いた通りである。これらの中でも最初の二つは、日本マスコミ特有の「日本人を貶める会」的方針であり、他の国では全く見られない自虐的性質から出たものである。
昭和天皇の崩御のことを持ち出したら、かつての巨大な犯罪を、国民に思い出させてしまう。悪逆非道なマスコミは、それを隠そうとしている。
それと同様に、つい先日発生したばかりの酒鬼薔薇聖斗事件、あの時マスコミは、何と言っていたか?酒鬼薔薇少年の写真を掲載した雑誌『フォーカス』を、自分たちのこれまでの少年法違法行為は棚に上げておいて、「少年法違反だ!」と、徹底的に叩いたのではなかったか?「人権侵害だ!」と、罵倒したのではなかったか?朝日新聞を始めとする団体は、書店に圧力をかけてフォーカスを販売中止に追い込んだのではなかったか?「後進的」、「前時代的」なのは、日本国民ではない。日本マスコミである。
つい先日まで口を極めてがなりたてていた「人権を守れ!」の声は、愚劣なマスコミどもの陰謀によって、ダイアナ妃の事件発生とともにぱったりと聞かれなくなった。今毎日聞こえるのは、「報道の自由は絶対だ!」という大合唱だけである。少年の人権を守るためなら法規制どころか卑劣な圧力まで加えることまでしていたマスコミが、今や、「報道の自由のためには、人を死に追いやってもよい!法規制など論外だ!」と堂々と主張しているのである。これを破廉恥と言わずして、何と言うべきであろうか?
人間性の一かけらさえも持ち合わせていない日本のマスコミは、今回のような悲劇的な事件でさえ、日本人を徹底的に騙くらかし、貶めるための作戦に利用しているのである。そして多くの日本人は、そのことに気付いていない。
先週号と今週号とで、マスコミの犯罪と卑劣な情報操作の実態を、いくつも暴いてきた。世間では「パパラッチがダイアナ妃を殺した!」という点からしか、マスコミ批判を行っていないようである。しかし、そういう直接的な犯罪の影に、更なる巨大で陰湿な犯罪が、数多く隠されているのである。ここで暴いた連中の犯罪は、氷山のほんの一角に過ぎない。目に見え易い悪の影に、巨悪が隠れていることを我々は忘れてはならない。
なかみや たかし・本誌編集委員