悲劇喜劇
中宮 崇
朝日とともに、笑いのある生活を!
朝日新聞がテロ集団に甘いのは、いつものことである。本誌でも何度か取上げた、ペルー大使公邸人質事件などの時もそうであった。朝日は、彼等犯罪集団の虐殺行為を始めとする、ありとあらゆる悪行を、暗黙裏に支持している。
同様の傾向は、サヨク全般に渡って見られる。日本人観光客が多数虐殺された、昨年のエジプト・ルクソール事件の時には、筑紫哲也や『週刊金曜日』などは、事件そのもののことを出来るだけ忘れさせようと意図したらしく、他のメディアに比べて扱いは、極めて小さいものであった。
そして最近、またもや彼等卑劣なサヨク集団による、テロ集団の擁護行為が行われている。今回の舞台は、アフリカ大陸の北部、地中海に面した国、アルジェリアである。
アルジェリアは揺れている。イスラム過激派によるテロ行為により、連日数多くの国民が、その犠牲となっている。思えば、エジプト・ルクソール事件の犯行グループも、イスラム過激派であった。
朝日新聞は、1/8朝刊でこう言う。
テロが起るのは、アルジェリア政府が悪いからだ!
政府は虐殺と拷問を繰り返している!
このような馬鹿げた主張は、サヨクの常套手段である。連中は昨年、ペルーのフジモリ大統領にこう言った。「テロリスト!」と。その一方で、MRTAなどのような犯罪集団には「同志!」だのと言ってまで擦り寄るのであるから、どう考えてもまともな連中ではない。
記事によると、アルジェリアではこの六年間で、65000人の犠牲者が発生したのだそうだ。ところが朝日は、これについてこう書いているのだ。
6年間の軍とイスラム過激派の抗争で犠牲者は計65000
人。
「抗争」と来た。つまり朝日にとって、アルジェリアの状況は、「軍と過激派による喧嘩」に過ぎず、「軍も過激派もどっちもどっち」ということなのである。呆れて物が言えない。
過激派が、軍人だけを標的としているのなら、「軍と過激派による喧嘩」などという詭弁も、ほんの少しは説得力を持つであろう。しかし、過激派が狙うのは、「喧嘩相手」であるはずの軍人ではなく、無防備な一般市民なのだ。これのどこが、「軍と過激派による喧嘩」なのであろうか?朝日の感覚を、疑わざるをえない。
現に、これは朝日自身が書いている事なのであるが、今月5日にも村が襲われ、62人の村人が殺された。朝日の記者は、目や頭を持ち合わせているのであろうか?極めて疑問である。
朝日はこうして出来るだけ、テロ集団をかばう一方、政府側を攻撃する手は全く緩めない。国連の人権査察チームの入国を拒否する政府に対して、記事の最後でこう書いている。
政府自身がイスラム勢力に対する弾圧、拷問などで人権侵
害を問われることへの危ぐがあると見られる。
言わんとする事は分からないでもないが、朝日は少なくとも、その「弾圧、拷問」の一例でもきちんと提示するべきだ。もっとも彼等サヨクが、ろくな証拠も無しに敵を断罪するという行為も、別に今に始ったわけではないが。それに仮に「弾圧、拷問」があったとしても、その原因と中身が問題である。
原因から言えば、イスラム過激派のテロが無ければ、軍が「弾圧、拷問」などを行う必要はないのであるから、朝日が本当に「弾圧、拷問」を止めさせたいと思うのならば、早いところアルジェリアに行って、テロ集団にテロを止めるよう説得するべきだ。
次に、「弾圧、拷問」の中身であるが、朝日が何も伝えていない以上、我々読者には何ら判断材料が無い。朝日が軍の行為の何をもって「弾圧、拷問」と騒いでいるのか、我々には判断のすべが何も無いのである。何しろ、兵庫県南部地震の後に仮設住宅に入った老人の状況を、「これでは拷問である」などと言った類の書き立てかたをした朝日の言う事である。連中の言う事を、鵜呑みにする事は出来ない。
朝日は、政府が人権査察団の入国を拒否したという一点だけをもって、「政府がイスラム勢力に弾圧、拷問を加えている」などと推論する。確かに「弾圧、拷問」の存在する可能性は極めて濃厚ではあるが、たとえ「弾圧、拷問」の事実がなくても、査察団の入国を拒否するという事は十分考えられる事である。
例えば日本が国連から、「あなたの国は人権侵害行為を行っている可能性があるから、査察団を入国させろ」と言われたとして、入国を認めるであろうか?認めるわけが無い。「査察団の入国を認めた」というだけで、国際社会においては大きな打撃となるからである。ましてや朝日などを始めとするサヨクは、入国して来た査察団に対し、「日本は、ほら、こんなに沢山人権侵害をしていますよ」などと、でっち上げも多分にまじえて「告発」するに決まっているのであるから。もっともサヨクの連中は、わざわざニューヨークにまで足を運んで、でっち上げの人権侵害を「告発」するということを既に行っているから、日本に関して言えば、査察団が入ろうが入るまいが同じことなのかもしれないが。
ところで1/8の朝日の記事は、実に巧妙にできている。何しろ、記事のすぐ隣りに、
米とトルコ・イスラエル海軍初の合同演習実施
などという記事を持ってきているのだ。そしてその中で、こんな事を書いている。
イスラエルは敵対するイスラム世界を分断する対外戦略か
ら、トルコとの軍事協力を進めている。
どうやら、ありとあらゆるネタを利用して、「弾圧され抑圧されるイスラム勢力」という構図を作り上げたいらしい。
ところで、この記事からしばらく経った1/19の朝日朝刊に、
コーランと剣の国から 最近中東事情4
なる記事が掲載された。これほど呆れる記事には、しばらくぶりに出会った。
内容は、朝日の特派員が、アルジェリアの情報省が企画したテロ危険地帯ツアーに参加した様子を描いたもの。
記事によるとその川上泰徳特派員は、情報省が用意した車からあぶれたので、タクシーを雇って列に紛れ込んだのだそうだ。ところが途中で車の調子がおかしくなり、列から脱落。現地には何とか着いたが、取材もそこそこに引き返してきたというのである。
ホテルに戻った川上は、情報省の役人に「どうして先に帰ってきたのか」と叱られる。馬鹿な記者が勝手にはぐれてテロの犠牲になって、責任を問われるのは情報省の役人なのでるから当然である(責任を問う急先鋒となるのは当然、朝日であろう)。ところが川上は、こう居直る。
「そっちこそ責任放棄だ!」。
と。それも、「怒鳴りかえした」のだそうだ。これはもう、同じ日本人として恥じ入るしかない。
無理矢理ツアーに加わり、整備不良の車を借りた上に、列から脱落する時に護衛の車になんらサインも送らなかったという餓鬼が、何を言うか。
そもそも川上は、覚悟が足りない。思い起こして頂きたい。数日前の記事で朝日は、テロを擁護していたはずである。自分たちが擁護しているテロ集団を、この男は恐れているのだ。何とも呆れた話である。
自衛隊を始めとして、軍備というものに批判的な朝日の人間が、軍の護衛が無ければ安心して(恐らくアルジェリア政府批判の)取材も出来ないというのも、実に面白い話である。
私は朝日新聞の、こういう喜劇的な面が、大変好きである。
なかみや たかし・本紙編集委員