地獄への招待
中宮 崇
朝日は日本人を死なせたいのか!
世界のどこかでテロが発生すると、朝日新聞は非常に元気になる。「テロは許されない」などと、一応通り一遍の批判はして見せるが、実際のところ心の奥底では、テロ集団に同情心を抱いている。「テロは悪い。しかし、テロを生み出す社会の方がもっと悪い。全ては社会が悪いのだ」というわけだ。このような無責任な珍論は、酒鬼薔薇事件を始めとする日本国内の犯罪の際にも、サヨクの連中によって絶え間無く唱えられる。「少年は悪くない。彼に犯罪をおこさせた社会が悪いのだ」と彼らは言う。
朝日のやる事は、全く進歩がない。一昨年のペルー大使公邸人質事件の時などは、本誌でも暴いたように、嘘をついてまでテログループを擁護しようとした。
昨年の11月17日に発生したエジプトのルクソール神殿における、日本人観光客虐殺事件においても、朝日はいつも通り、テロ集団への支援に余念がない。それどころかこの事件の時には、日本人観光客をテロ組織に売り渡すような信じ難い報道を行っている。
12月9日の朝日朝刊に、こんな記事が載った。
観光客襲撃を停止
内容は、事件を引き起こしたイスラム過激派テロ組織が、「襲撃停止」の声明を出したというもの。「犯行は、組織内の跳ね上がりによるもの」などという釈明も同時に載せてある。
ところで、考えてみて欲しい。この記事の見出しである「観光客襲撃を停止」というのを読んだら普通は、「ああ。これでエジプトも安全になったのだな」と思うであろう。
実際にはテロが停止される保障など何もないのであるが、あたかも「テロは今後停止される」という印象を与えられてしまう。
この記事を見てエジプト旅行を行った観光客が、テロの犠牲となったら、朝日はどのように責任を取るつもりなのであろうか?取りはしない。現に今まで取った事など一度もない。「我々は、過激派の声明をそのまま掲載しただけである」などと言って、責任逃れするのは目に見えている。
「我々は、誰かの言ったことをそのまま掲載しただけ」という言い逃れは、朝日の得意芸である。今問題の北朝鮮日本人妻を生み出す大きな原因となった、朝日等による「北朝鮮は楽園天国」キャンペーンでも、同様の手法が採られた。朝鮮総連や金日成が垂れ流す嘘を、何ら批判することなくそのまま掲載し、自らは、嘘を掲載した責任を取らない。あまつさえ、自らの行為を棚に上げて、「日本人妻の悲劇を生んだのは、日本人による朝鮮人への差別意識だ」などと涼しげにうそぶく始末。
エジプト事件に話を戻そう。この記事に関する限り朝日は、いつものような言い逃れは通用しない。何しろ本文で、「声明が本物である事を確認した」などとまで書き、太鼓判を押している。更に、実際にはテロが停止される保障など何もなく、「停止の声明が出された」だけであるにもかかわらず、「観光客襲撃停止」などという紛らわしい見出しをつけたのは何故か?何故、「観光客襲撃停止を声明」と書かなかったのか?
これは、単なるミスではない。意図的なものである。その証拠に、翌12月10日朝刊には、こんな見出しがある。
襲撃の停止を否定する声明
一日で、「テロ停止」の約束が反故にされてしまったわけだが、なぜ前日のように「襲撃の停止を否定」という見出しではいけなかったのか?前日には「声明」という文字を隠し、この日になって「声明」を付け加えたのは何故か?
思うに、朝日は前日に、「テロ組織もこれで、犯行を停止するのだな。いや、めでたい!」と浮かれていたのであろう。ところが次の日になって、「停止」を宣言したはずの同じ組織から、「停止などしない!テロは続ける!」と声明が出され、能天気かつ無責任な朝日新聞は、面目を潰される事になってしまった。で、最後の抵抗として、
テロは止んだ!いや、止んだに違いない!「テロ続行」っ
ていうのは、それこそただの「声明」だ。口先だけにすぎな
い。そうに違いない!
ということなのであろう。9日の「停止声明」も10日の「停止拒否声明」も、どちらもただの「声明」に過ぎない事には変わらないのに、独善的な朝日の都合によって、意図的に歪められた伝えられかたをされているのである。
朝日がテロ組織にどれだけ肩入れしているかについては、他にも色々と証拠がある。11月23日の朝刊では、松本仁一編集委員が「閑話休題」という連載コラムで、
希望を持てない社会
と題して、「社会が悪いんだ」論を展開している。この中で松本は、イスラム過激派は民衆の支持を受けており、腐敗した政府と警察、軍により悪化するエジプトの経済状態が、テロの原因であると主張する。ペルー事件の時にも用いられた論であり、何ら新鮮味はない。
同様の論調は、事件発生直後の11月18日朝刊記事、
悲劇生んだ力の対立
でも見られる。政府が力で押さえつけようとするから、テロが発生するのだ、と言うわけだ。そしてこの記事でも、「(過激派は)単なるテロ集団ではなく、貧民救済などで政府の政策に見放された貧しい人々に根を張っている」などと書き、あたかもテロが民衆の支持を受けているかのような書き方をしている。
ところが、事件発生直後にテロ集団を阻止したのは、まぎれもないエジプトの民衆であるのだ。犯人たちを一人ずつ追いつめ取り囲み、車両の前に立ちはだかった者までいた。考えてみれば、テロの多発で観光客が来なくなって一番困るのは、エジプトの民衆自身であるのだから、これは当然といえる。朝日はこれらの事実を意図的に、読者の目から隠しつつ、悪質な妄論を垂れ流しているのである。翌19日の
穏健国家、内に不安
なる記事でも、またまた同様のプロパガンダが繰り返されている。
朝日は一体、何を考え、何を望んでいるのであろうか?ひょっとすると、何も考えてはいないのかもしれない。
単純に、日本人が死ぬのを喜んでいるという可能性もある。何しろ各記事の中には、「やはり起きたかという思いをいだいた」だの「これにいたる不穏な兆候はすでに現れていた」だのという文が踊っている。つまり、「エジプトでこういう事件が起るだろうという事は、俺達はとっくの昔に分かっていたんだ」と言っているのだ。朝日は、分かっていて警告を与えなかったのである。無策のままにエイズを日本中にばらまいた厚生省と、いったいどこが違うというのだ?厚生省の当時の責任者は今、殺人罪で訴えられている。
まあ少なくとも、これだけは言える。たとえ何も考えていないにせよ連中のやっている事は、日本人を死地に追い込む事であり、読者を騙すことであり、人間として許されざる行為であると。そしてこれも歴然たる事実であるが、他人の責任追及には常に熱心な朝日は、これまでの数多くの誤報や虚報に対して、一度もまともに責任をとった事などない。ところが、そんなとんでもでもない新聞を喜ぶ人々が、何故かサヨクには多い。まことに奇怪である。
なかみや たかし・本紙編集委員