脱ゴー宣裁判に行ってきた!(3)


                            中宮 崇


おい、いきなり弾圧かい!?


弁護士二人を従えて、何と原告の小林よしのり本人のお出ましである。見た目はなんとなく、どこぞの高校の教師のような感じ。その道に進んでいたならば、さぞ女子学生の心を騒がせたことであろう。女性裁判長をたらし込もうという遠大な計画でもあったのかもしれない(笑)。

動員されたサヨクさん達で占められている傍聴席が、一瞬ざわつく。女サヨクさんの中には、小林の魅力に心乱された純な子が、ひょっとしたら紛れ込んでいたかもしれない。何しろサヨクさんの唯一の取り柄は、純なことだけであると言って良いことであるし。被告のさとりんこと上杉聡も、意外そうな表情。彼らの面前で、原告席に悠々と着席するよしりん。

開廷早々、よしりん弁護団が訂正事項を述べ立てる。資料中のページ何かの修正が、やたら多い。ちゃんと資料検討しているのであろうか。大丈夫か?

数分に渡る訂正個所の確認が終わって、よしりん側が裁判長に、参考資料を渡す。でかくて重そうな手提げの紙袋いっぱいに詰まっているのは、「ゴーマニズム宣言」の連載されている雑誌『SAPIO』やら、ゴー宣単行本など。

「なくなったら困る資料はありますか?」と問う裁判長。証拠が紛失するなんてこともあるのか。私などには、あの大きな紙袋はよしりんグッズの宝の山にみえるのであるが、この裁判長ひょっとして、「実は無くしてしまいました」なんて言って、着服しようとしているのではあるまいか?

そんな馬鹿なことを考えつつよしりんの方を見ると、何やら手元が忙しそう。うぉー!描いとるな〜、描いとるな〜、漫画家としてー!やっぱあんた、プロだ〜。

ところが、よしりんがプロなら、弁護士もプロ。さとりんこと上杉聡側弁護士がいきなり挙手して発言。「裁判長!原告が今、漫画を書いているので、被告が気になると言うので止めさせて頂きたい」。なに〜!?

一瞬目が点になる裁判長。状況が良く飲み込めなかったらしい。数秒して、「漫画ですか?」と聞き返す。あんたも因果な裁判を担当したもんやね〜。

よいりん、すかさず反論。「裁判の様子を絵に書くことは、よくやられていることでしょ?」。固まってしまう裁判長。出てくる言葉は「え〜っと〜」だけ。

そんな裁判長に、さとりん側が駄目押し。「顔を書かれるのは、気になるので…」。意を決する裁判長。「そ〜ですね〜、やはり傍聴席ではなく原告席にいる以上、漫画を描くというのはちょっと…」。おいおい、そんな事で良いのか?

これは裁判の後に分かったことなのであるが、実は「顔を描かれるのが気になる」なんてのは、ただのこじつけ。さとりん側の意図は、別のところにあったのである。

大体、「気になる」なんて言う理由で漫画描くのを止めさせられるのなら、何でも有りである。傍聴席で漫画を描くことだって、当然止めさせることが出来るようになるわけだ。漫画が駄目なら当然のごとく、写真やテレビカメラでの撮影だって、「気になるから止めろ!」って言うことも出来るであろう。「メモを取られると気になるから、止めてくれ!」なんて強弁することだって可能だ。

そいうえばさとりん側は、裁判の前に盛んにビラを配っていたが、これだって「気になるから止めてくれ」と言えるはずだ。いやいや、そもそも今回の裁判の原因となった、上杉聡による小林よしのり漫画の「引用」だって、「気になるから止めてくれ」と言えるはずだ。

まあそこまでは行かなくても、最近「裁判の公開」なんて主張が世間の大勢を占めており、テレビカメラが裁判を生中継することを認めさせようとする動きもあるがさとりん側の弁護士は当然、そのようなことには反対なのであろう。サヨクさんは、自分たちのことについて情報公開することがよほどお嫌いらしい。

このように考えてみると、実はこの一件は、サヨクさん達を今後叩きのめす為の極めて有用な武器になり得るように思う。裁判そのものが今後どのように展開するかは分からないが、この裁判はこれだけでも、日本の裁判史に残るものとなるであろう。深い。

しかし、無責任な傍観者としての意見を言わせてもらえば、よしりんにはもう少し駄々をこねて欲しかった。「漫画はまずいでしょう…」という裁判長の勧告を、「あ、そうですか」と簡単に受け入れてしまったのは、ショーとしてはいささか物足りない。サヨク攻撃の武器を手に入れることの方を重視したのか、ちょっぴり江川昭子似の女性裁判長を困らせることに気が引けたのか、はたまた単にはずみか…。

一般に、初公判は事務的なやり取りが主で全然つまらないというのが相場らしいが、この脱ゴー宣裁判は、さとりん側もよしりん側も、最初からかなりとばしてくれて全く退屈させない。

あとは数分間細々としたやり取りがあり、次回は4月27日午後2時にしましょうってことで、無事(?)閉廷。時間的には、まったくあっという間だった。席を立つ原告、被告。

ここで私は、究極の選択を迫られる。一体どっちに行こう?つまり、さとりん側とよしりん側のどちらに駆け寄るかということ。個人的にはミーハーによしりんの所に駆け寄って、サインでもねだりたいところであったが、涙を飲んでさとりんの元へ。ワシには、サヨク監視という重要な使命があるんじゃ〜!

別にやけくそになったわけではないが、私の方に戻ってきたさとりんに、持参した『脱ゴーマニズム宣言』をとりだしてすかさずサインをねだる。のけぞるさとりん。そりゃ〜スキンヘッドの変なアニキがサインを求めてきたら、私だってのけぞる(笑)。



さとりんのサイン


                つづく…


                               なかみや たかし・本紙編集委員


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