「人権派」よ!青年を守れ!

中宮 崇

 

 


・見捨てられる青年


 サミットが終わった沖縄で、ある19歳の青年が、「人権派」によって見捨てられようとしている。

 バスをのっとり何の罪もない無抵抗の女性を殺害した17歳の少年も、少女を強姦したあと無残に殺害した変質者も、数千数万を殺そうとしたオウム信者でさえも「市民団体」だの「人権団体」だの「進歩派文化人」だのと僭称する恥知らずな輩が、物言えぬ被害者やその家族の人権を最大限無視して守ってくれる。そして例のごとく、朝日新聞やNEWS23の筑紫哲也などが、彼らを全面的にバックアップする。

 しかし彼ら「人権派」は誰一人として、この19歳の青年を守ってやろうとはしない。それどころか「極刑を!」と叫ぶものさえいる。普段は強姦魔や無差別殺人者の「人権尊重」を主張してはばからないはずの、その同じ連中がである。

 青年は、酔って他人のアパートの一室に侵入し、そこで寝ていた女子中学生の体を触った。いつもなら被害者の気持ちのことなどまったく考えない「人権派」はこう言うだろう。「たったそれだけではないか。暴行したわけではない。彼に罪はない!」と。しかし今回はなぜか彼ら「人権派」は、いつもとはまったく逆に加害者の人権を完全に無視し、青年を死刑にしてしまえという勢いである。


・差別主義の「人権派」


 青年は差別されている。明らかに差別されている。変質者の強姦魔を守り、酔って羽目をはずしただけの青年に極刑を求める「人権派」は、実は差別主義者なのである。

 青年が「人権派」に差別される理由はただ一つ。彼が沖縄に駐留するアメリカ海兵隊の隊員だからである。

 かつて、ある日教組の教師は、自衛隊員の子供に、「おまえの父親は人殺しだ」と「教育」していたという。今でも「人権派」は、「軍人は人殺し」、「海兵隊員は強姦魔」と罵ってはばからない。最近も、「人権派知識人」として知られ、石原都知事の「三国人」発言にヒステリックに反応した辛淑玉女史が、「人間のくずが自衛隊員になる」と発言したと伝えられる。

 23日、那覇地検は、青年の裁判権を放棄し、アメリカ側に引き渡す決定をした。19歳の青年は、日本の法律では未青年とされるため、罪が軽くなるかまったく罰せられない可能性があるためである。

 アメリカに引き渡された青年は、アメリカ軍の軍事裁判で裁かれ、数年の実刑判決が言い渡されることは確実だ。「行動する女達の会」と称する人権団体は、こういう。「軍事法廷ではより重い刑罰を科せられるというが、保証はない」。できるだけ厳しく罰せよというわけだ。

 辛淑玉女史のような「人権派」は、中国人マフィアが少女を強姦しようが、イラン人麻薬密売人が小学生をヤク中にしようが、「マフィア出て行け!売人出て行け!」とは決して言わない。彼ら犯罪者の「無罪」を声高に叫び、犯罪抑止を計画する為政者を「悪魔の差別主義者!」と非難する。最も最近その毒牙にかかったのが、石原慎太郎というわけである。

 ところが彼らは、海兵隊員が何か事件を起こすと「海兵隊は悪魔だ!海兵隊出て行け!」と叫ぶ。真の「悪魔の差別主義者」は、いったいどちらなのだろうか。


 日本では「人権派」、「市民団体」、「進歩的文化人」などの名称は、「二枚舌の大嘘つき」や「差別主義者」と同意語なのである。

 彼らの誰一人として、青年の人権を守るために沖縄に行こうとしないそのことこそが、最大の証拠だ。

 

2000/07/25

なかみや たかし(本誌編集委員)


前のページへ