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コラム
― コラム・1 ―
現像所での現像・プリント作業とサービス判プリントについて
筆者は以前10年以上に渡って現像所でアルバイトをしていた事があり、その経験を踏まえて 現像所についての解説をする事にしよう。

いわゆるサービス判と呼ばれるプリントがある。これは、撮影した写真を取りあえず見る為 に値段を安く、処理時間を速くして仕上げるようにしたプリントで、主にミニラボ処理と大型 現像所の処理に分かれている。

10年程前までは、大型現像所での大量高速処理が主流で、その内容は、DP専門店やカメ ラ店、提携の小売店で受付をして、それを定期的に回収し、フィルムメーカーの系列の大型 現像所で数十本のフィルムをつなげて1ロール単位とし、現像機に流した後フィルムの側面 にノッチと呼ばれる半円形の溝を1駒づつ付け(これは画像のプリントする位置を決定させる 為)プリンターにかけてプリントする。

プリントはロール状になっていてプリンターの一方に生 ペーパーが、もう一方にプリント済みペーパーがマガジンの中に巻き取られる状態で装着さ れている。プリントしたペーパーは、暗室の中でペーパー現像機用マガジンに詰め替えて、 ペーパー現像機に流す。処理液の順番は下記ミニラボと同じであるが、分子構成は若干 異なっている。処理液は絶えず循環しながら徐々に新液と古い液(廃液)が入れ替わってい る。廃液は専門業者が回収してから、銀を回収して再利用している。

現像し終えたペー パーは、露出・ゴミ・傷・色調等の検査をした後、オートカッターでカットし、一件づつ袋詰め されて出荷される。(大型現像所ではフィルムや写真用品のDP専門店への卸し売りもして いる。また、大型現像所自身で直接現像・プリントの受付をしている所も在る。) 現在でもこの処理方式は続いているが、時間の短縮を追求した結果、受付してフィルムをつ なげる処理を省き、すぐに現像、プリント作業をその場で小型の現像機・プリンターで全て 行える様にしたミニラボ体制が急速に普及してきた。ミニラボとは小さな(ミニマム)現像所( ラボラトリー)という意味の略語である。ラボラトリー(ラボ)は元々実験室や研究室の意味 だったのが転用されている。

ミニラボの場合は、フィルムは先ずベロ出しをして大抵2本づつ、ショートリーダーと呼ばれ る穴の等間隔に空いた板にテープで繋げて(これをデタッチという)現像機に流す。現像機 の中に誘導ギヤがあって、ショートリーダーの穴とかみ合って進むようになっている。 フィルム現像機の内部は現像、漂白、定着、安定の各層に分かれていて、フィルムを流すと 各層の中を流れていき、最後に乾燥機の中を通過して約5〜10分程度で現像終了となる。

プリンター(オートプリンター)には大抵スキャナー(アナライザー)が付いており、フイルムを 通すと(スキャニング)モニター画面に読み込んだフィルムの画像がスキャナーで濃度や 色調を適度に補正されて現れる。これは、フィルムに種類や感度やNo等の情報がバー コード化されて記録されているので、どのバーコードはどういう補正を加えればよいか、あ らかじめプリンターに記憶させておけば、そのフィルムを読み込んだ時に即座に補正が出来 るという事である。但し、補正データは飽くまで標準的なものなので、実際は、やはり人間の 目が頼りとなる。オペレーターはモニター画面を見て濃度や色調を濃度キー、カラーキーで 整えてプリント作業をする。

オートプリンターのプリントマスク(焼きマスク)は、フィルムに実際 に写っている画面より範囲が狭くなっている。これは、自動でフィルムが送られてプリントす る為に、例えば露出アンダーや縦線が映り込んでいるような画面の縁がよく判らない場合や カメラによって映り込む画面の範囲が違っている場合があるので、若干のズレはカバーする ようにしている為である。従って、画面の端に写った被写体はプリントには出ないという事が あるが、これはプリントミスではなく、上記の事から、普通の事なのである。 プリント用のペーパーはロールになっていて、プリント直前か、繋がったままプリントして 現像後にカットされて出てくる。現像・プリント作業のほとんどは明室で行い、ペーパー交換 時のみ暗袋を使用するが、その必要もない機種もある。

プリンターの内部には現像、漂白定着、安定の各層があり、露光したペーパーは各層の中 を流れて行き、最後に乾燥機を通過してプリントとなる。プリントをし終えたフィルムは日本 では6駒づつ、外国では大抵4駒づつカットされてフィルムケースに入れられ、最後にフィル ムとプリントの絵柄合わせ、ゴミ焼き・色調・濃度等の検査をして出荷される。プリント作業を してプリントが出来るまで数分程度である。従って受付をしてから現像・プリント作業をしてプ リントが仕上がるまで1時間以内で行う事が出来る。

しかし、サービス判のプリントは、高速・安価で出来る反面、微妙な色・濃度の調節が出来な くてスキャナーが自動補正する為にプリント作業は楽にはなったが、1つの色が画面の大部 分を占めると自動的に補正をかけすぎていびつな色になるカラーフェリアという現象が起き てしまう。その為に色の補正を少しに抑えたローワードコレクションというモードにする。 逆に、蛍光灯下やタングステン光下等の人工光源で色を補正する場合はハイコレクション (フルコレクション)というモードで、補正を多めにかける様にする。

人間の目は、人工光源下 にさらされると一瞬はその色で景色が見えるが、時間が経つと普通の色に見えてしまう。こ れを色順応といい、脳で自動的に色補正を加える為に起こる。同じように、瞳孔の大きさを 調節して暗闇で徐々に明るく見えたり(暗順応)、明るい所で眩しくなくなったり(明順応)も している。ところが、フィルムは撮影時にかなり細かく補正しない限り、順応などしてくれない のでプリント時に補正をかける事になる。それから、これは撮影時にもいえる事だが、画面 の中心付近に高輝度の物が映り込んだ時に、それを適正露出にする為に、極端にアンダー 露出にしてしまう事が在る。撮影時の極端な被写体露出アンダー・オーバーは、プリント作 業では救済不可能である。

ミニラボの現像・プリントでは、高速で処理する為に処理液を高温にしている為、コントラスト が高くなる傾向がある。又、少ない処理液で処理するようにしている為に、場合によって現 像・定着オーバーやアンダーの起こる確率が高いし、頻繁にメンテナンスをしていないと汚れが付き易い。


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