(00/11/23)

国際千葉駅伝を見ながら、ふっと...

TVで国際千葉駅伝を見ていた。
今年で日本代表チームの男女アベック優勝は3年連続なのだそうだ。
でも、おかしくないか?日本の長距離って、そんなに強かったっけ?
TVを見ながら、ふと思った。確かに実業団が力を入れてきたことで女子のレベルは相当上がった。そのピラミッドの頂にあるのが現在の積水化学であり、高橋尚子選手のマラソン金メダルであることに誰も異論は無いだろう。
だが、日本女子の台頭に歩調を合わせるかのように男子長距離の長期低迷期が始まったのは92〜3年頃からでしょうか。
世界的にはケニア・エチオピア・モロッコなどアフリカ勢がのしてきて、世界クロカンなどに出場する日本代表選手は大体下記のような結果が現在に至るまで続いています。
【男子】
ジュニア・高校生=そこそこ
シニア=全然通用せず
【女子】
ジュニア・高校生=かなり頑張る
シニア=そこそこ
もともと、中距離の発展を完全に放棄したかのような日本陸上界にあって、インターハイ・国体の1500mや5000mで活躍した前途有望な高校生達が大学生になって続々と芽を摘まれてしまっている異常な状況が再生産されている現状では、突然のレベル向上は無理でしょう。(=この点については、後日考察を加えてみたいと思います)
現実は、以上の通りです。
この現実を踏まえて、「国際千葉駅伝で日本男女アベック3連覇」という現象をどのように理解すれば良いのでしょうか?

確かに、女子は強い+選手層も厚い。
時期的にも、トラックシーズン終了直後で世界の強豪が参戦目的では来日し辛い日程なので、日本のトップ級を揃えれば世界のレベルで見ても相対的に上位に食い込むことは容易に想像出来る。
一方、男子。
一時期、千葉駅伝には全然選手が集まらず、陸上マニアを自任する自分でさえ「誰、あなた?」という選手が日の丸のユニフォームを着ていた時期があったが、ここ数年は陸連も相当力を入れているようだ。

今年の代表5名も2000年の日本を代表する選手たちであることに変わりはない。今回のメンバーに補強を行うとすれば、高岡・瀬戸(鐘紡)に三代(富士通)、花田(SB食品)という程度で、補欠に三代が入っていたことを考えれば、考えられる選手にはほぼ全員に声を掛け、代表入りさせたと考えても良いだろう。
だが、肝心の相手に恵まれていない。アナウンサーが「駅伝の世界一決定戦!」と、まるでサッカー中継でもあるかの如くダミ声を張り上げるのに反比例して、自分の心は醒めてしまった。
日本代表がこれだけマジの布陣で臨んでいるのに、各国の代表選手にこれという選手がいないのだ。

思えば、まだ自分が学生の頃、瀬古利彦選手(SB食品)が引退レースとして国際千葉駅伝を走った時には、世界のビックネームがごろごろ参加していた記憶がある。バブル真っ最中だったあの頃とはいかなくとも、ジャパン・マネーの力をもってすればゲブレシラシェ(エチオピア)やテルガト(ケニア)を呼んでくることも可能なはずなのに...

そう考え出すと、何だか【敢えて】世界の一線級を呼んでいないのではないか?そういう疑念すら沸いてきたのだ。
特に、この3年間なぜ男子が連勝できているのか?
「 謎 」 である。
世界のレベルアップと比較して、日本男子長距離のレベルアップが飛躍的であるならば話は別なのだが、事実は逆なのだから。
箱根駅伝がマスコミに大きく取り上げられ、私立大学が学生数減少の中で生き残り策として力を入れだしたお陰で、20kmを3分10秒ペースで集団ペース走を行うことが可能なレベルの学生選手数は、以前よりも増えたのではないだろうか?そう考えると、長距離選手の裾野は広がったと言えるかも知れない。
しかし、全日本クラスで見た場合、5000mや10000mの走力は80年代の選手とほぼイコール。進歩が全く見られていない。(世界のレベルはこの間に5000mで30秒、10000mでは1分も前に行っているというのに)

こんな後ろ向きな考えで頭の中が一杯になっている頃、アンカーの高橋健一選手が独走でゴールに飛び込んでいた。今年の東京ハーフ。私はリハビリメニューの一貫として参加していたが、海外・国内招待選手をスタートから相手にせず、圧倒的な走りで日本最高記録をマークしたすばらしい選手だ。

あぁ、「絵」的にはすごく良いシーンだなぁ。
なんだか、マスコミ人のようなことを考えながら、淡々とTVを見ていた。
そういえば、この大会の中継は民放のフジサンケイグループが実行している。