シドニー五輪米国代表を決める全米トライアルは14日(日本時間15日)から23日(同24日)まで、2日間の休息日をはさんで米カリフォルニア州サクラメントのホーネッツ・スタジアムで行われる。上位3人までが五輪代表に決まる一発勝負の選考会。男子二百メートルで対決が実現するモーリス・グリーン(25)とマイケル・ジョンソン(32)、シドニー五輪での女子スプリント5冠達成に向けて第一歩を踏み出すマリオン・ジョーンズ(24)の「3M」が注目を集めそうだ。
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百メートルの世界記録(9秒79)を持つグリーンと、二百メートル(19秒32)、四百メートル(43秒18)の世界記録保持者、ジョンソン。男子短距界の人気を二分する2人だが、過去にまともに対戦したことはなかった。二百メートルではこれまで、ジョンソンが96年アトランタ五輪で世界記録の19秒32で優勝するなど、圧倒的な強さを誇ってきた。しかし、昨年の世界選手権では、ジョンソンが二百メートルを回避してグリーンが優勝。「対決を避けた」との憶測も呼んだジョンソンだったが、四百メートルで世界新の43秒18をマークし、「今後は二百メートルの世界記録更新も狙っていきたい」と意欲も見せた。
注目の新旧対決が行われる大会最終日の23日は、くしくもグリーンの26歳の誕生日。「ジョンソンは四百メートルなら確かに世界最速のランナー。でも二百メートルで自分より上とは思わない」と打倒ジョンソンに自信を見せる。
シドニー五輪で、女子百メートル、二百メートル、四百メートルリレー、千六百メートルリレー、走り幅跳びの五冠を目指すジョーンズ。夢への挑戦の第一歩に、まずサクラメントの暑さと超ハードスケジュールが立ちはだかる。初日はまず百メートル予選の2時間後に走り幅跳び予選。2日目が百メートルの準決勝、決勝。3日目が幅跳び決勝。7日目、最終日が二百メートルの予選と決勝という具合だ。最後まで戦うスタミナを計算しながら、かつ一つのミスも許されないという過酷な毎日を送ることになる。
カギを握るのは、本人も発展途上と認める幅跳び。「技術だけじゃなく知識も豊富になったと思う」と話すジョーンズが、まずは初日の予選を、いかに少ない回数でクリアし、体力を温存できるかがポイントになる。
十種競技の世界記録(8891点)を持ち、シドニー五輪で連覇を目指す鉄人、ダン・オブライエン(33)にとって、今大会は復帰初戦になる。アトランタ五輪以後、オブライエンは97年に右足を骨折、昨年夏にはひざを手術するなど故障続き。この4年間で十種競技で試合に出場したのは、98年のグッドウィルゲーム(8755点)のただ一度だけ。コーチは安全策を取って3位狙いを勧めているというが、本人は「これまでずっと全米で優勝してきて誇りに思っている。3位では終わりたくない」と、全く意に介さない。
あくまでトライアルで完全復活して、五輪に臨む考えだ。
米国陸上界のスーパースター、マイケル・ジョンソン(32)が五輪2大会連続2冠奪取を宣言した。14日(同15日)開幕の全米陸上選手権(兼五輪代表選考会)を翌日に控えた13日、市内のホテルで有力3選手の記者会見が開かれた。女子短距離のインガー・ミラー(28)を間にはさみ、モーリス・グリーン(25)とともに出席したジョンソンは「最後の五輪は2つの金メダルと(世界)記録で終わりたい」とWクラウンをぶち上げた。世界記録狙う
淡々とした口調に、王者の風格を漂わせていた。200メートル、400メートルの世界記録保持者ジョンソン。4年前のアトランタ五輪で、史上初の2種目制覇を果たした男の「牙城(がじょう)」は簡単には崩れない。左端に座るグリーンとの舌戦に期待し、誘い水を掛ける米国プレスをアッサリ退けた。「2人の対決?その手の話はプロモーターやマスコミが騒いでいるだけだ。だれが何を言ってもベストなレースをして勝つ。それだけだ。」五輪選考会を直前に控え一応(?)はペティグリー、ワシントンらライバル勢の名前を挙げた。だが、どうしても本音は隠せない。2カ月後に迫ったシドニー五輪での夢に心をはせた。
ジョンソン最後の五輪は、2大会連続の2種目金メダルで飾りたい。金メダルは持ってるけど、まだ欲しい。それも(世界)記録を残してだ。
アトランタ五輪後は、試合数をセーブしてきた。年齢的な問題、97年にベーリーとの150メートル対決で負傷したことも一因となった。昨年の世界選手権も200メートルは回避。すべては最後の五輪、そして2001年のグッドウィルゲームでラスト・ランを飾るためだ。
コーチのクライド・ハート氏とそのためのプログラムを組んでここまできた。200メートル(19秒71)400メートル(43秒92)とも今季世界最高。3月には300メートルの世界記録も樹立した。
アトランタ五輪後、ナイキ社と1200万ドル(約12億6000万円)の契約を交わした。そのナイキ社のホームページの、ファン投票NO・1になったシューズを、ジョンソンは準決勝まではく。「五輪は前回も経験している。何を準備すべきかすべて分かっている。」言葉もシューズ選択も余裕たっぷりの男が全米を熱狂させる。
100メートル9秒79の世界最速男グリーンは、ジョンソンとの200メートル対決に思いをはせた。
「世界中のファンが注目するレースをみんなが望むショーにしたい。お互いに競い合うことが好きだけど、2人とも勝つのは無理な話」
と笑いつつライバル心を燃やした。今年から女性栄養士をつけるなど五輪に向けた準備も着々。「いつも通り110%の力を出す」と、まずは2日目の100メートル決勝を目標に置く。
シドニー五輪米国代表選考会を兼ねた全米選手権開幕を翌日に控えた13日、1998年に一度引退を表明していた女子7種競技の世界記録保持者ジャッキー・ジョイナー・カーシーが現役に復帰、シドニー五輪出場をかけ、選考会で世界歴代2位の記録を持つ走り幅跳びに挑戦することを明らかにした。
38歳のカーシーは84年ロサンゼルス五輪で五輪初出場、88年のソウル五輪の走り幅跳び、7種競技の両種目で金メダルを獲得。その後もアトランタまで4大会連続で出場、世界の一線のまま、98年に引退していた。5度目の五輪出場を狙うカーシーは「練習の中で気持ちを高め集中して臨みたい」と決意を口にしていた。