'99世界陸上特集

SEVILLA '99
-THE IAAF WORLD CHAMPIONSHIPS IN ATHLETICS-

大会結果関連ニュース



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1.結果速報・関連ニュース 
2.今日の出場選手群像 


【 結果速報 ・ 関連ニュース 】

第7回世界選手権は21日、セビリアのオリンピック・スタジアムで競技が始まった。
[午前]
日本選手のトップを切って登場した女子100メートルの新井初佳(ピップフジモト)は、一次予選7組で11秒64の5位となり1次予選で姿を消した。連覇を狙うマリオン・ジョーンズ、アトランタ五輪金メダルのゲイル・ディバース(ともに米国)らは順当に2次予選に進んだ。

注目の男子100メートル1次予選では、日本記録保持者の伊東浩司(富士通)が10秒38で6組2着となり、同日夜(日本時間22日未明)の2次予選に進出した。中村哲也(登利平AC)は5組5着となり予選敗退が決まった。前回覇者で世界記録保持者のモーリス・グリーン(米国)は10秒30の1組1位で通過。

同砲丸投げ予選A組では、3連覇を目指すジョン・ゴディナ(米国)が20メートル69で決勝へこまを進めた。

男子ハンマー投げの室伏広司(ミズノ)は予選B組でベスト記録に3メートル以上及ばない75メートル18に終わり7位となり、A・B合わせた全体14位で惜しくも予選落ち。2大会連続の決勝進出は成らなかった。この種目ではアトランタ五輪金メダルのバラージュ・キシュ(ハンガリー)も予選落ちと大番狂わせが起こった。
[午後]
男子100メートル2次予選へ進出した伊東浩司(富士通)は10秒40で5組7着に終わり、準決勝進出は成らなかった。スタートのブロックをセットしているときに左の内転筋がけいれんするというアクシデントが響いた。9秒79の世界記録保持者モーリス・グリーン(25=米国)は伊東と同組で、9秒91の1位で順当に勝ち進んだ。
1500メートルの佐藤清治(長野・佐久長聖高3年)は3分45秒72で予選2組10着で落選。
走り高跳びの君野貴弘(ゴールドウイン)も2m15で予選で姿を消した。
最初の決勝種目となった男子20キロ競歩は、イリア・マルコフ(ロシア)が1時間23分34秒で制し大会の金メダル1号に輝いた。池島大介(長谷川体育施設)は1時間29分3秒で17位。
男子砲丸投げは、CJ・ハンター(米)が6投目で21メートル79を投げて見事な逆転優勝。

女子100メートル2次予選では、連覇を狙うマリオン・ジョーンズ(米国)が今季世界最高となる10秒76の大会新で準決勝に進んだ。
今大会から採用された女子棒高跳びは、ステーシー・ドラギラ(米)が4メートル60の世界タイで初代女王の座についた。
 

【 今日の出場選手群像 】

 男子ハンマー投げ=室伏広治選手 

 女子100メートル=新井初佳選手 

 男子100メートル=伊東浩司選手 


◇室伏、世界の壁を痛感◇
3回目を投げおえた室伏は、すぐにベンチに腰を下ろし、じっとうつむいた。前回の世界選手権は決勝に進出。メダル獲得をも射程に入れて臨んだこの大会だった。この2年間で父・重信さんの日本記録を追い越し、十分に力をつけているはずだった。それだけに予選落ちという結果をすぐには受け入れられないようだった。
1回目。タイミングを合わせにいった投てきで74m04。
国内で投げる時のような思い切りの良さがない。
2回目。ふんわりと上がったハンマーは75m18で落ちた。
3回目は74メートルにも届かない。73m68でジ・エンド。
1週間前、室伏は父親の重信さんの見守る中、オランダのスポーツセンターでハンマーを投げていた。
この大会に備えた調整合宿を行うために、2日前にオランダ入りしたばかりで長旅の疲れが残っているのは明らかなのに、その練習は4時間近くも続いた。
「今、ちょっと動きが狂っているから」。重信さんは猛練習の理由をそう話していた。
体重90キロでこの種目の選手としては軽い室伏の武器となるのは、重信さんとともに築き上げてきた芸術品のようなフォームとスピード。それだけにフォームを維持するために人一倍練習してきた。
しかし、わずか3回の試技で力を出し切れないとすべてが終わってしまうのが、世界選手権、そして投てき種目の怖さだ。
「もう一回しっかりやるだけ」と言葉少なに話す室伏。
世界の壁の厚さを、かみしめていた。
◆新井、後半失速で予選落ち◆
今大会、日本選手のトップを切って登場した女子100メートルの新井初佳(25=ピップフジモト)は、1次予選で落選した。
スタート良く飛び出したが、中盤以降伸びず11秒64。自己ベストで日本記録の11秒45より0秒19遅れた。
日本女子では世界選手権初の短距離個人種目出場。五輪を含めても64年東京五輪の伊沢まき子以来35年ぶりとあり期待を集めたが本番で結果を残すことは出来なかった。同組の第1レーンにはバルセロナ、アトランタ五輪を制したディバース(米国)の姿も見えた。

世界との差は後半のスピードだった。
スタートの反応タイム0秒159は8人中3番目の好タイム。だが、日本では強いと言われる後半の加速が世界に通用しなかった。

「スタートは合格。でも後半が……」

シドニー五輪に向け、自信をつかみ課題も見つけた。

○けいれんが伊東を襲う○
世界陸上で男子100メートルの決勝進出を狙っていた伊東にアクシデントが襲ったのは2次予選のレース直前だった。
5組の出場8選手のうち、伊東は3番目の記録を持っていた。上位3人が無条件で準決勝に進出できる。進出の可能性は高かった。

だが、いつ、何が起こるのか分からないのが五輪、世界選手権の「おきて」なのかも知れない。

スターティングブロックを調整しているときに突然、左足がぴくぴくときた。

「内転筋がけいれんを起こし、動かしているとつりそうになった」
伊東は悔しそうに振り返る。
スタートはよかった。
しかし、30メートルほど進んだところで、ズルズルと落ち始める。
立て直しはきかない。
1人置いた右レーンを走った世界記録保持者グリーンだけでなく、持ち記録の悪い選手からもあっさり置き去りにされてしまった。
レース後、ショックの色を隠せない伊東は「仕方ないです。終わったことは」。そう自分に言い聞かせるようにいった。その通り、得意の200メートルの予選が24日に迫っている。
「まだ200のことは考えられない」という放心状態だが、すぐに切り替えなければならない。

それが五輪・世界選手権など種目が続くビッグイベントでの敗者の「おきて」である。