'99世界陸上特集

SEVILLA '99
-THE IAAF WORLD CHAMPIONSHIPS IN ATHLETICS-

大会結果関連ニュース


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1.結果速報・関連ニュース 
2.今日の出場選手群像 


【 結果速報 ・ 関連ニュース 】

(午前)
男子200m20秒16のアジア記録保持者・伊東浩司(29=富士通)が、夢のファイナリストに向け、第1歩を切った。1次予選第3組に出場した伊東は、スタートから140mまでトップ。最後は流して20秒59の2着で、夜に行われる2次予選進出を決めた。
男子400m障害は48秒26の日本記録を持つ山崎一彦(28=デサント)が、49秒08で1組1着となり準決勝進出を決めた。前日本記録保持者の苅部俊二、アジア大会優勝の河村英昭両選手は予選落ちだった。
(午後)
男子1500m決勝はヒシャム・エルゲルージ(モロッコ)が3分27秒65の大会新で2連覇を果たした。
男子10000m決勝は、世界記録保持者のハイレ・ゲブレシラシエ(エチオピア)が27分57秒27で大会4連覇。日本勢は高岡寿成(鐘紡)が28分30秒73で12位に入ったのが最高だった。高尾憲司(旭化成)は18位、入船敏(京セラ)は20位だった。
男子200m2次予選に出場した伊東浩司は20秒62で3組4着となり準決勝に進出。
男子棒高跳びに出場した小林史明(ミキハウス)は予選落ちした。
男子400メートル準決勝でマイケル・ジョンソン(31=米国)が「最後の標的」へ大きく前進した。
ただ1人44秒を切る43秒95をマークしてトップ通過。本人も4連覇へ向け絶好調を宣言した。26日の決勝で、11年間破られていない43秒29の世界記録を更新する可能性が高まってきた。

女子5000m予選では、田中めぐみ(あさひ銀行)が15分34秒51で1組5着、アトランタ五輪4位の志水見千子(リクルート)も15分24秒85で2組4着となり決勝に進んだが、藤永佳子(長崎・諫早高3年)は一時トップに立つ場面のあったが2組14位に終わり落選。

【 今日の出場選手群像 】

男子10000m=ハイレ・ゲブレシラシエ選手(エチオピア)

男子200m=伊東浩司選手

男子400mH=ヨンパー3人集


◇ゲブレシラシエ、残り1周ですさまじいスパート◇
エチオピアの貧しい村に、郷土の英雄、アベベ・ビキラにあこがれる少年がいた。貧しい農家の10人兄弟の8番目に生まれ、毎日、ひたすら走っていた。学校までの片道10キロ近くの道。焼けつくような荒れ地を、はだしで走る。貧しさから抜け出す方法は、走って成功することしかなかった。
ハイレ・ゲブレシラシエ、26歳。
五千メートルや一万メートルの世界記録を15回も塗り替え、長距離の「皇帝」と言われるようになった今でも、ハングリーな気持ちを少しも失わない。
男子一万メートル決勝。
彼は負けるわけにはいかなかった。
気温31度、湿度53%という過酷な条件で行われたレース。前半は異常なほどのスローペースになった。彼は注意深く周りを見渡し、常に2、3番手をキープする。
「だれが飛び出してもついていけるように、気持ちをリラックスさせて、いつでも足が動く状態にしていた」
残り1周ですさまじいスパートを見せた。半周の間にぐんぐん引き離し、すぐに勝利を確信したという。「金メダルは私のものだ」。最後の直線に入った時、顔には笑みが浮かんでいた。
「4度目の優勝は確かに格別だけど、次の五輪やマラソン挑戦も考えなくちゃならない」
五千メートルからマラソンまでのあらゆる距離の世界記録を自分のものにすることが、今の目標なのだという。
◆伊東浩司、「アジアの疾風」のプライド◆
男子200メートル1次予選。
ある種の開き直りが、伊東の闘争本能を呼び覚ましてくれた。
「怖くてダッシュは無理にかけられなかった」
とスタートを抑えても気が付けばトップを快走。140メートルすぎで「順位を確認して」ギアを緩めた。各組3位まで(プラス2)の通過圏内を確信しつつ、3番目にゴール。その後、トップで入ったヤンコフ(ブルガリア)の失格が判明し結局、2着が確定した。

左足付け根にはまだ、3日前のけいれんの痛みが残る。本来のスピード練習も皆無のまま、いわばぶっつけ本番でのレース。「汗が流れて集中できないから」といつもかけているサングラスも外した。「バランスが悪く肩がブレた」とフォームの崩れも自ら指摘。そんなマイナス材料ばかりがそろう条件で残した、プライドの結果だった。

もう後がない、の緊迫感が伊東の潜在能力を引き出した。

欧米で一流が集まるグランプリを転戦しても、ここは予選から3レースをはい上がらなければ「夢のファイナリスト」にはなれない世界舞台。「100メートルはあまりにもダラーッとし過ぎた」の言葉には、自分を叱咤(しった)する気持ちが込められていた。
反省材料も生かした。けいれんの原因が脱水症状だったため、この日は「2リットルぐらい」(伊東)の水分を摂取。宿舎では個人種目初出場の選手に対し、水分補給の重要性、アップ時のメリハリなどをさりげなくアドバイス。個人競技ではあるが「チームリーダー」的役目も果たしている。
運命の神も、伊東にほほ笑みかけている。ヤンコフの失格で2着に繰り上がったことで、2次予選はビッグネーム不在、自己ベストトップ(今季2番)の第3組にリストされた。

「次が勝負ですから」
100メートルの屈辱を晴らすべく、伊東がリベンジのスタートラインに立つ。
○山崎ガッツ1着通過/苅部・河村は予選落ち○
山崎一彦選手
同じ轍(てつ)は2度と踏むまい。

全身からそんな思いを発散させながら、山崎が次々とハードルを越えていく。
日本記録更新狙いと思わせるほど、グングン飛ばし後続に2メートル以上の差をつけフィニッシュ。95年イエーテボリ大会のファイナリストは、楽々と準決勝進出を決めた。

「前半からいかないとアトランタの二の舞いになりますからね。イメージ通りに前半、いけたし一応、自分の走りができたので余裕もあって(つい)出しちゃいました」
予選でガッツポーズを出した気恥ずかしさ?から、照れ笑いを浮かべて振り返った。栄光のファイナリストから悪夢の始まりとなった3年前のアトランタ五輪。ゴール直前で流したのがたたり、1次予選敗退の辛酸をなめた。アトランタの悲劇からセビリアの栄光へ――。「長老軍団の1人」と自称する山崎がプライドをかけてセミファイナルに臨む。
苅部俊二選手・河村英昭選手
昨年のアジア大会400メートル障害覇者・河村と前日本記録保持者の苅部は、そろって予選落ちした。

49秒66で5組4着の河村は「緊張のし過ぎ。朝起きてからも、アップ中もそうで、レース前に(集中力が)切れてしまった」。

一方、右太ももの内外側を故障中で、前日23日に丸1カ月ぶりのハードル練習をこなした苅部は「言い訳はしたくないけど万全ではなかった。体調は悪くなかったからいける、と思ったけど、甘くはなかったですね」と調整不足の無念さを隠せなかった。