"Sports Big News"の最初には、長らくこのコーナーを放っておいた私がこのコーナーを制作するきっかけを与えてくれた偉大な女性に関する記事を充てたいと思います。
私と同級に当たる年齢で、かつては「マシン」のような強さが嫌いでしたが、そんな彼女もやはり生身の人間でした・・・
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女子テニス界のスーパースター、シュテフィ・グラフ(ドイツ)が、ついにラケットを置くことになった。強烈なフォアハンドを武器に数々の金字塔を打ち立てたグラフは、ここ数年、引退のうわさをことごとく跳ね返してきた。だが、ここにきてテニスに楽しさを感じなくなったことで、17年間親しんだコートから去る決断を下した。
1982年に13歳でプロ転向。数年は当時の女王マルチナ・ナブラチロワ(米)の壁にはね返されたが、バンビ(小鹿)のような軽快なフットワークとフォアハンドの強打で、87年の全仏でナブラチロワを破って初めてグランドスラム(4大大会)に優勝。翌88年にはソウル五輪も含めた“ゴールデン・スラム(5冠)”を達成、一気にトップの座に駆け登った女王ももう30歳になっていた。
「プロテニス生活からの引退を表明します」記者会見で、グラフは寂しげに切り出した。
今年の全仏オープンとウィンブルドン選手権の後に「この大会は今回で最後」と表明し、引退間近を示唆。一方、7月12日に行った米国での記者会見で「今季限りのツアー引退」を表明したと報じられると、「通訳ミス」と全面否定するなど、心中は揺れ動いていた。
先週、米カリフォルニア州で行われた試合の前、「選手生活で初めて、やる気が起こらなかった」(グラフ)という。そして、「プレーをしていて楽しさを感じなかった」と話すその試合を、太ももの故障のため途中棄権。これが、間近に迫った全米オープンを前に、引退を決意する引き金となった。
復帰と故障する繰り返しの末、全仏で「新女王」ともてはやされる18歳のマルティナ・ヒンギス(スイス)を決勝で下し、技術と精神の充実ぶりを見せつけた。そして、一番好きだったウィンブルドンでの準優勝―。ほんのひとときではあったが「女王復活」ともてはやされた。
だが、そんな周囲に対し、「今後、これ以上になることはない」といかにも冷めた発言をしていた。全米オープンで最後の姿が見られなくなったのは残念だが、グラフの闘争心が既にかつての物でなくなっていたのは確かだ。テニスにかけた執念を燃やし尽くすように健在ぶりを示した後、全米を目前にしての潔い引き際は、コート上でいつもストイック(禁欲的)だった女王の最後にふさわしい。
グラフ選手は1969年6月ドイツ生まれ。
87年全仏オープンで、4大大会の初優勝を遂げ、翌88年、グランドスラム(年間4大大会制覇)を果たした。4大大会シングルスの優勝はコート夫人(豪)の24回に次ぐ歴代2位の22回、通算勝率は9割近い。
87年から97年にかけて男女通じて最長となる通算377週にわたり、世界ランキング1位の座を守った。