白骨を乗せた飛行機

 海上をさまよう幽霊船は昔から多くの船乗りたちに目撃され、場合によってはその国の海軍までもが調査に乗り出していることもある。何年か前に遭難して消息を立った船が現れ、調べてみると乗組員の姿はどこにもない、あるいは白骨と化した亡骸だけが残っている・・・。しかし、こういった事例は実は船だけに限ったことではなく、飛行機でも起こっている。

 南米大陸にあるブラジルの南部に位置するリオ・グランデ・ド・スール州、ポルトアレグレはその州都である。西暦1954年9月4日、そのポルトアレグレにある空港に向けて、西ドイツ(当時)のオランダ国境に近いアーヘン空港から一機の旅客機が離陸した。この旅客機は乗員乗客合わせて93名を乗せたサンチアゴ航空513便で、西ドイツのアーヘンからブラジルのポルトアレグレまで直線距離で約10600キロ、実際にはまっすぐ飛行するわけではないが、航路上にとくに危険な空域は無く、翌日には常夏のブラジルに到着する予定だった。しかし、何ら問題も無く飛行を続けていたはずの513便だったが、大西洋上を飛行中に突然消息を絶った。いつまでたっても通信が回復しないどころか、どこのレーダーサイトでも機影を捉えることが出来なかったことから、単なる通信機器の故障などではなく、洋上での遭難、つまり海上に墜落した可能性が高いと判断され、すぐさま関係各国による海空からの大規模な捜索が開始された。しかし懸命の捜索にもかかわらず機体の破片すら発見されず、また、当初緊急事態でどこかの空港に着陸しているのではないかとも思われたが、航路上あるいはその付近にあるどの飛行場にも着陸した事実は無く、そのためこの件は乗員乗客の全員は絶望、遭難事故として処理された。

 1989年10月12日、ブラジルのポルトアレグレ空港ではいつものように航空機が離発着し、管制官がその対応を行っていた。そのとき、あまり見馴れない型の一機の旅客機が近づいてくるのが見えた。その機体は3枚の垂直尾翼を持つ独特のスタイルのロッキード製スーパー・コンステレーションという旅客機だったが飛行計画にはなく、管制塔からは問い合わせの呼びかけが行われた。しかし、その呼びかけに応答は無く、旅客機はそのままポルトアレグレ空港に進入、着陸した。通常、個人所有の小型機から航空会社の大型の旅客機まで、飛行機はその飛行に際し、どういった経路で飛行を行うかなどを記載した飛行計画書を提示することになっているのだが、この旅客機は飛行計画に記載が無く、通信にも返信が無かった。そのため、不測の事態が発生して緊急着陸したのではないかと係官が駆けつけたが、旅客機からは出てくるものは一人も無く、相変わらず呼びかけにも応じない状態だった。はじめはテロやハイジャックの可能性も考えられたがその様子も無く、調査のため外側から扉を開けて中へ入った。しかし、そこには信じられないような光景が広がっていた。座席に座る乗客は全て白骨化しており、パイロットや乗務員も同様に白骨化していた。さらに驚いたことにフライトレコーダーの記録を調べたところ、この機体は1954年に西ドイツのアーヘン空港から飛び立ち、大西洋上で消息を立ったサンチアゴ航空513便であることが判明したのだ。

 関係部署があらゆる調査を行ったが、なぜ35年前に消息を絶った飛行機が突然現れたのか、乗員乗客はなぜ特に争った形跡も無く白骨化していたのか、この飛行機は35年間どこを飛行していたのか、すべて謎のまま現在でも解明はされていない。

 

 

ところで、上記執筆にあたっていろいろと調べてみましたが、下記のことがわかりました。 

・この話に出てくる「サンチアゴ航空」という会社は実際のところは存在していない。過去に存在したこともない。
・アーヘン空港からポルトアレグレ空港の直行便も現在も過去にも開通していたこともなく、特別便が運行されたこともない。
・近隣の海空軍に上記に該当する捜索記録が存在しない。
・確認できる最古のネタ元がアメリカのタブロイド紙である。

残念ながらこの話は不思議な話ではなく、いわゆる「ジョーク記事」や「都市伝説」に分類されるもののようです。 

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