「アイヌ民話」に語られる人食い刀。外敵やアイヌに仇なすものが現れた際に、祈りを込められることにより自ら敵の所まで飛翔しこれを討ち払う。また、その際にだすカタカタという鍔鳴りは聞いた者を震え上がらせる。しかし、エペタムの力は強大で、静める方法が失われると周りの人間をもその刃にかける。強い力を持つ刀であり、相応しい術者が扱えば強大な力を発揮し反対に術者の力がおよばざれば災いをもたらすことになるという性格、つまり使い手を選ぶという性格は、刀剣に属する物にわりと共通する性格のようで妖刀村正や聖剣エクスカリバーにも見ることができる。アイヌの伝承によれば、古い知識を持つ長老が亡くなりエペタムを静める方法が失われたため、エペタムは厳重に包まれてその封印を破らぬように伝えられ酋長の家に保管されていた。ところが、いつの頃からか夜な夜な動き出し人を斬るようになったため、やむなく処分されることになるのだがどこへ捨てても再び現れ人を斬ったという。石を与えれば静まると伝え聞いた人々によってエペタムは石と共に保管されるのだがおとなしくしていたのは一時的で、しばらくするとやはり再び人を斬るようになった。このことから見ると「妖刀」村正とちがい、封印されていたにもかかわらず自ら血を求めだすなど、エペタムは「狂刀」とも呼べる性格を持っているように見える。結果としては神のお告げを受けこれに従った人々により、エペタムは底無し沼に沈められ祈願によって封ぜられたため、それ以降は姿をあらわさなくなった。 |