僵尸

 中国の伝承に見られる動く死体。顔つきや体つきなどは生きている人間とそっくりでほとんど見分けがつかないが、体が硬くあまり曲がらないかのような描写も見られる。もともと出先で亡くなった人を故郷まで運ぶ際に腐敗を防ぐために作り出されたもので、この間暴れださぬようにお札を貼り導師が鈴を鳴らして先導する。この間にお札がはがれたり、導師の術が弱いと既に人であらざるものとなっている僵尸は暴れだし、人を襲うことにもなる。また、自然発生的には強い思い・怨念・恨みなどから僵尸となる場合がほとんどで、そのため人を襲い、あるいは災いをもたらす。場合によっては誤った埋葬をされて僵尸となる場合もある。

 一般にイメージされる僵尸の動きはぎこちないものだが、僵尸の体の硬さはまちまちのようで、襲われた際に反撃を試みて殴りつけたところまるで木や石の様に固く動きもぎこちなかったとしているものから、通常の人間のように動く女性の僵尸に襲われた描写や普通の人間と何ら変わりなく動いて生活している姿もある。しかし、どの場合でも生前の力に関係なく怪力を持ち、一度しがみつかれるとそれを振りほどくのは困難である。さらに、西洋の「吸血鬼」の伝承などによく見られるように、僵尸に襲われ噛み付かれると噛み付かれた人間も僵尸となってゆくとしているものもある。基本的に僵尸が動くのは夜間だけで、夜が明ける頃には棺に戻って行く。また、必ずしも棺に戻るわけではなく、襲おうとした人間を狙いつづけるうちに明るくなり始め、その場で動かなくなる描写もみられる。夜間は生前と変わらぬ姿の僵尸も昼間棺に戻るとまるで痩せ細ったミイラのようになっており、この間に燃やせば退治する事ができるが、この際には奇声を発するとも言われる。

 僵尸を防ぐあるいはその動きを封じるためにはお札や呪文、もち米、鶏の血、火などあるいはこれらを組み合わせたもの(例えば鶏の血で書いたお札を用い呪文を唱えるなど)を用いると良いとされるが、どうも僵尸によりけりのようで全てに効く決定打と言えるものがないため、これを扱う導師の力量によるところが大きいとされている。

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