御賜時計

 御賜時計とは、帝國陸海軍の学校や帝国大学等の優等卒業生に贈られた時計です。
 もともと御賜時計は、明治天皇が収集されていた懐中時計を私的に記念品として賜ったことに由来するといわれています。
 御賜の時計を賜るというのは大変な栄誉とされ、軍学校や帝国大学等で下賜されるようになったのは明治三十二年の七月に東京帝国大学がはじめとなっています。
 御賜時計は当初、ロンジンやウォルサム等が用いられていましたが、明治四十年には、精工舎で開発されたエキセレントが採用されました。
 この間、諸事情で下賜することが出来なくなった大学もあり、御賜の栄誉を賜ることができたのは陸軍士官学校をはじめとした少数の学校になります。
 その後、精工舎最高機種として昭和五年に開発された17型SEIKOSHAが御賜時計として正式に採用されました。
 これが本機になります。
 帝國陸海軍の学校では、有名なところでは陸軍士官学校の優等卒業生に下賜されていました。
 優等卒業生とは単に成績のみが優秀ということではなく、人格や体力等も考慮され、人物として優秀な卒業生が恩賜の栄誉を受けることができたといわれています。
 ちなみに、海軍兵学校の優等卒業生に対しては「御賜の短剣」が下賜されました。
 なお、本機は、ユリスナルダンとロンジンの長所を採り入れて設計されており、通称「セイコーシャ・ナルダン」と呼ばれています。

裏盤刻印

機械
刻印は「御賜」とはいる。「御賜」とは天皇陛下よりの贈り物(賜る物)という意味です。ケースは銀製で、そのため銀時計とも通称された。 サイズは17型、石数は16石。なお、この刻印は懐中時計に一般に用いられているプレスではなく、彫刻式となっており、刻印の金鍍金を出すために手の込んだ作業が行なわれている。

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