航法計算盤四型

 通常、航空機は飛行を行う際にはあらかじめ飛行経路を定め、これにそった飛行を行います。飛行経路上の目標にはわかりやすい地上目標などを設定することが多いのですが、洋上ではこの目標になるものがほとんどなく、特に海軍機はその運用上洋上飛行が多いため航空兵は飛行中の自機の位置をより正確に把握することが求められました。
 機位の把握に必要な計算はすべて航空兵が行っており、この際に使用されていたものが航法計算盤です。大型機などの場合は航法専門の搭乗員がいるため必要な計算などはこの搭乗員が行い、現在位置や飛行経路の修正といった情報を把握することができるのですが、小型機では偵察員などがこれを兼任し、特に戦闘機などの単座機となると操縦士が飛行にかかるすべての事を行わなくてはなりません。しかも、狭い機内でこれを行わなくてはならないため、小型で折り畳み式の計算盤が採用されました。
 この計算盤は折り畳み時は約12センチ四方と小型で、使用時にはボタンを押せば上部が開くようになっています。下部には偏流や方位、風力などの目盛りがあり、上部には高度と真速度を求めるための計算盤があります。右側中央部の摘みは東西南北が記されている内周盤をまわすもので、下部の摘みはその中の気速や風力、偏流角の目盛りの記載されたロール紙を回す事に使用されます。
 左側面には鉛筆差しがあり差した鉛筆は中でバネで押さえられ、揺れや衝撃などで抜け落ちたりしないように配慮されています。
 おもにバンドで太腿などに固定して使用されました。

計算盤 上部

計算盤 下部
高度修正尺、速度修正尺、指示速度高度等の目盛りがあり、真速度を導き出すことができます。 左右の偏流角や方位の目盛等があり、内部のロール紙に記された目盛と組み合わせて計算が行えるようになっています。

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