九三式飛行時計

 航空機が実用化された頃からすでに操縦者や空中勤務者は時計を持ち込み、飛行時間の把握やこれを元にして飛行に必要な計算などを行っていましたが、はじめの頃はこれは正式な装備品ではありませんでした。そのため、必要に応じて個人の懐中時計や腕時計を持ち込んで使用していましたが、次第にその必要性が増してくると正式に操縦者に支給あるいは航空機に装備されるようになります。
 九三式飛行時計は陸軍機に使用されていたもので、初期の頃は単に飛行時計と呼ばれていました。製造は精工舎(現セイコー)で機械はいわゆるセイコー19型のスモールセコンド型が使用されています。文字盤は黒色で初期のものは下部に「(一日巻き)飛行時計」と刻印が入っていますが、後には「飛行時計(九三式)」「九三式飛行時計」と入るなどこの刻印には幾通りかの種類がありました。また、時刻数字と長短針には夜光塗料が塗られ、夜間においても視認しやすいようになっています。
 セイコー19型の機械は主に懐中時計などに使用されていた機械ですが、陸海軍問わず軍用としてもよく使用され、後には同じ19セイコーの中3針型を使用した一〇〇式飛行時計も採用されました。
 通常は計器盤に取り付けられていますが、乗機が決まっている航空兵の中には計器盤から取り外して紐を通し首などから下げて使用していた場合もあったそうです。

九三式飛行時計 機械
機械は精工舎製19型7石

文字盤刻印

銘版
刻印は「(一日巻)飛行時計」。いくつかのバリエーションがある。 「飛行時計」および製造番号・製造年月日、製造メーカー名である精工舎と入る。

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