夜光秒時計一型

 軍隊に限らず、何かを行うためにあるいはその予測を立てるためなどにこれにかかる時間を計る場合がありますが、この目的のために採用されたものが夜行秒時計で、時計機能とストップウォッチ機能のついた計測時計(クロノグラフ)です。
 製造は精工舎(現セイコー)で、長短針および下部の小秒針は通常の時計機能、中央の秒針と上部の小分針がストップウォッチ機能となっています。当時クロノグラフのことをカラフと呼んでいたため、俗に精工舎カラフとも呼ばれていました。
 夜行秒時計は、その名の通り秒針と時刻目盛毎に夜光塗料が塗られ、夜間の計測でも視認しやすいようになっており、航空隊に限らずいろいろな部隊で使用されました。
 文字盤は金属製で、展示の物のように12時間表記の物やこの内側に13から24までが赤字ではいる24時間表記の物もあります。
 また、秒時計は機械サイズと竜頭個所の形状に種類があり、機械サイズは別として、竜頭箇所の形状が通常の物が陸軍用、台形になっている物が海軍用ともいわれていますが、竜頭箇所が通常の形状の物でも海軍で使用されていた物もありますので、ケースで明確に分けられているわけではないのかも知れません。実際には海軍で使用するものについてはこれを示す錨のマークが刻印されているため、それで判別することができます。
 ケースは二重蓋で「夜行秒時計一型」の刻印が入りますが、この刻印は数種あり、他にも「秒時計」「秒時計一型」「夜行秒時計一型乙」など製造時期や型、使用部隊などにより、また、夜光塗料が塗布されているかによって差異があります。この箇所の○に某の刻印は、○に空は航空関係、○に砲は砲術関係、○に航は航海関係などのように使用部隊・部署を示すもので、その横には管理番号が入ります。
 もともとこれまで我が国には国産のクロノグラフがなく、この夜行秒時計が軍民問わず事実上我が国初のクロノグラフとなりました。
 戦後は一部国鉄でも使用されていたようで、使用路線名の刻印のものがときどき見られます。展示のものは海軍で使用されていたものです。

夜光秒時計 裏
刻印は「夜光秒時計一型」、丸に空および管理番号。

機械

裏蓋 内側
裏蓋は2重、機械はチラネジ付丸テンプ、巻上げヒゲ、17石。 海軍を示す錨の刻印。

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