航法計算盤

 航空機は飛行の際に通常は必要な目標を結ぶような形で飛行経路を設定しこれに沿った飛行を行いますが、海軍機はその性格上洋上での運用を前提としているため、陸軍機とは違い飛行時に航路目標となる地上(洋上)目標がない場合が多く、飛行に際して航空兵は現在位置や飛行経路などのより正確な把握が求められました。
 そのためにはどの高度をどの速度でどの方向にどれだけの時間飛行したかなど、さらには風速や発動機の回転数や燃料消費量などを正確に把握し、これを元に計算を行い現在の飛行地点を算出、飛行経路にそった飛行となっているか、飛行経路の変更が必要であればどの方向にどれだけの変更を行うか等の確認を行わなくてはなりません。現在であれば衛星から送られてくる情報や搭載されているデジタルコンピューターなどにより、これらの確認あるいは必要な情報を得ることができますが、当時はこれらの計算すべてを搭乗員が行っておりました。
 この際に使用していたものが航法計算盤です。もちろん、海軍のみにしか計算盤が存在しないわけではなく、陸軍や民間でもそれぞれ用途に合わせた計算盤、計算尺がありました。なかには自分で使用目的に合わせて使いやすいように自作した簡易計算尺を使用していた航空兵もいたそうです。
 この計算盤は海軍で使用されたもので、表面には機上温度による速度修正尺や高度修正尺、気圧高度、航程真高度速度や偏流修正角、時間計器高度速度など、裏面には風向、風速、対地速度、真対気速度などの目盛りがあり必要な計算あるいは値が導き出せるようになっています。

計算盤 表

計算尺 裏
高度修正尺、速度修正尺、偏流偏向角等の目盛りがあり、画像下部の摘みにより内円部を回転させることができます。 風速、風向、把握部には対地速度、真対気速度等の目盛り。

裏 上部

裏 把握部
機首を中心に左右に偏流、中央棒尺に風速、風向。 把握部はスライドするようになっており、上部ネジで対地速度尺の角度を、下部ネジで真対気速度の目盛り位置をそれぞれ固定します。

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