海軍試製携帯用無線電話機

 この機材は、昭和十九年に試作された帝國海軍の携帯用無線電話機です。
 昭和十六年の開戦時、帝國海軍が装備していた携帯型の無線機としては、TM式軽便無線電信機、海軍九七式軽便無線電話機、試製二式空八号無線電信機などがありました。
 機材は昭和十八年から開発着手されたものと思われ、試作の完成は昭和十九年初め頃となります。
 構造は電池式で周波数は23.8〜30MHz(機材側面の周波数曲面表より)となっています。試製のためか機材によってこの曲線表に若干の差異が確認できます。
 アンテナは伸縮式のロッド形状で、伸ばすと約120Cmあります。なお、このロッドアンテナは格納時には不用意に飛び出さないようにアンテナ尾部を機材底部の張出部に引っ掛けるようになっており、アンテナ自身も捻じ込み式となっています。また、アンテナ尾部には螺旋が切ってあり、展開時に固定できるようになっています。
 現在、国内や国外で少数が研究機関やコレクターの手で保存されていますが、ほとんどが簡易化された設置型の無線機として送・受話器部および電源を外部接続方式に改造したものとなっています。そのため、携帯用無線電話機として開発当時の原型を保ち、なおかつ管理番号まで一致するセットのまま残っているものは非常に稀少といえるかも知れません。

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