認識票

 近代以降の軍隊では所属将兵の身元確認に名札や軍隊手帳を使用していましたが、戦闘時には紛失や汚れなどにより判別できなくなっていることも多く、より判別しやすいようにと木製や金属性の認識票を採用するようになりました。
 認識票に記載される事項は国や所属部隊によって異なることが多いですが、およそ、所属部隊、固有の番号、階級、名前、場合によっては血液型など、あるいはこれらを表す記号となっています。形状も時代や国や所属部隊によりさまざまで楕円形あるいは方形などで一枚のもの、戦死や負傷時あるいは何らかの事情の際などに一枚回収するために二枚組となっているもの、同様に上下同じ刻印があり下方を折り取るようになっているものなど、材質も木製から、鉄、真鍮、アルミなどがあります。
 帝国陸軍では、時代や部隊によって差異がありますが、およそ兵用のものは所属と番号が、士官用は階級と氏名が刻印されていました。
 展示のものは陸軍で使用されていた兵用のもので、刻印から歩兵第十六連隊の所属を示すことがわかります。軍の組織には師団や旅団などもあるにもかかわらず連隊番号からの記載になっているのは、通常は師団や旅団ではなく連隊が運用単位となるからで、この連隊番号は師団や旅団にかかわらず一律につけられており、陸軍内の同兵科で重複する連隊番号は存在しません。そのため兵科と連隊番号からの記載でどの部隊に所属しているかがわかるようになっています。
 歩兵第十六連隊は明治十七年の編成以来、日清戦争、日露戦争、シベリア出兵、満洲事変、支那事変、ノモンハン事件、そして大東亜戦争では開戦初頭の蘭領(当時)ジャワ島の敵前上陸作戦に始まり、ガ島攻防戦、ビルマ戦線など、我が国の経験したほとんどの陸戦に投入された歴戦の連隊で、日露戦争での激戦となった遼陽の戦い以来その勇名をはせていました。

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