陸軍軍刀

昭和十三年制定

 

 軍刀に用いられた刀身は本鍛錬のものをはじめ、鍛錬回数が本鍛錬に比べ少ないもの、ステンレスを使用したものなどいくつかの種類がありますが、このうち、昭和はじめ頃の刀の需要増大にあわせ一般に多く作刀されたものがいわゆる昭和刀と呼ばれるものです。
 軍刀を作成する際にこれらの刀身は個人の好みや都合で選ばれました。また、拵の仕上げに際しても、鍔や兜金、目抜きなどの金具類は規定されたものがありますが、その範囲内であれば既製のものから特注品までやはり諸事情や好みなどによって使用するものが選ばれています。
 しかし、大戦後半になってくると良い金具を使用したり丁寧な仕上げをしている余裕はなく、必要に答えることを優先とした製作がなされるようになります。そのため、拵は鉄鞘石目仕上げのほかに木鞘の石目仕上げや木鞘のままのもの、金具類や切羽も簡略化されたものや省略されたものも作成されました。
 刀身も同様で、本鍛錬の刀身や上記の昭和刀以外にも、鍛錬回数の少ないものやいわゆるスプリング刀などの割合が多くなっていきます。
 この軍刀は後期頃に作成された物で、鍔は透かしが無い型で鍔厚などは比較的厚くしっかりとしたものですが、切羽は大切羽(十字)小切羽(略型の菊座・小刻)の三種計六枚、その他の金具類の仕上げも初期の物に比べると若干粗くなっています。
 刀身は一般に昭和刀と呼ばれる物が仕込まれています。現代刀(明治以降に作刀された物を指します)に部類されるものの、中には本鍛錬のものに比べ鍛錬回数が少ないなどの物もあるため現在の基準では日本刀としての登録ができない刀身もありますが、昭和刀は実戦を前提に作刀された最後の日本刀のひとつとなりました。

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