陸軍砲兵刀
脇差仕込み

 

 砲兵刀あるいは徒歩刀と呼ばれるものは、明治十九年(西暦1886年)ごろから東京砲兵工廠などで製造が開始された装備で、大きく形状で分けると2〜3種類があり、それぞれ通常は剣式となっています。しかし小数ながら日本刀が仕込まれているものも存在しており、いくつか現物が残されています。
 外見上の大きな違いは、日本刀式の物はその拵が刀身にあわせて作成されているため鞘に反りがあり、また、当然ながら砲兵工廠などの製造を示す刻印はありません。また、刀身の固定は茎と柄を目釘で固定するという日本刀に準じたものとなっています。
 全長は剣式の物は約68センチ(鞘を除く)ですが、日本刀式の物は主に脇差が仕込まれておりその刀身長によって異なります。
 なお、剣式のものは砲兵工廠で製造、日本刀式のものは将校あるいは下士官等の注文製作とも言われていますが、関連資料があまり無く詳細は不明な部分もあります。
 展示のものは日本刀が使用されており、刃長46センチの脇差が仕込まれています。そのため全長が剣式と異なり、約63センチとなっています。

柄は、砲兵工廠製の砲兵刀同様に、右側にのみ滑り止めの溝が入り反対側は無刻となっている。また、刀身と柄との結合は日本刀と同じく目釘によって行なわれている。

鯉口は真鍮製、鞘は鉄製であるが、軍刀同様に入れ子と呼ばれる朴の木の内鞘が入っている。 柄は真鍮の外穀のなかにやはり朴の木が入る。なお、柄頭にあたる箇所にある突起は工廠製では剣身の固定にも機能しているが、日本刀が仕込まれているものではその形状を模しているのみとなる。

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