陸軍下副官
サーベル型軍刀

 

 下副官とは聞きなれない呼称かもしれませんが、明治中頃に使用されていた呼称で、准士官にあたります。これは帝国陸軍が建軍当初、その範をフランス陸軍にとったためで、陸軍曹長のうち最先任の者がこれにあたりました。この下副官という呼称は明治二十七年からは特務曹長となり、さらに昭和十二年には准尉となります。
 この軍刀は、明治十九年七月に制定された騎兵科下副官の軍刀(サーベル)の仕様で作製されています。帝国陸軍が日本刀を仕込んだ太刀型の軍刀を制定するのは昭和九年になってからですが、それ以前から、事変時や戦時にあたってはサーベル式の仕様で日本刀を仕込んだものが使用されていました。いわゆるサーベル拵え軍刀や旧型軍刀等と呼称されているものがそうです。騎兵科下副官のサーベル拵えの軍刀は現存する数は少ないですが同様にして作製されたものです。
 その形状は同じ騎兵科でも佐・尉官用とは異なり、護拳(鍔)の透かしが大きく左右あわせて5つあります。柄は鮫皮黒漆塗りで金線巻き、金具は士官用の金メッキとは異なりニッケルメッキとなっています。
 刀緒は同様に明治十九年七月制定の下副官用のもので、緒は黒色絹糸、総が黒ゴム革となっています。

下副官のものは佐尉官用とは異なった形状となっている。護拳(鍔)の透かしも佐尉官用とは異なる。 鞘走り防止は鉤爪式、柄は黒漆塗り鮫皮巻き、展示のものは刀身に新刀が用いられている。

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