イエローストーンの動物たち(2002年9月16日)
1.バイソン
イエローストーン(以下「YSN」という。)の代表的な動物の一つである、バイソン。正式な学名はバイソン・バイソンと言います(バッファローというのは俗称)。体重はメスが500kg、オスは800kg、大きいものは1トンを超します。平均寿命は12〜3歳ですが、過去には26歳という長寿のバイソンもいたそうです。
YSNには今年産まれた子供を含めて、約4000頭のバイソンが生息しています。8月中旬から9月が交尾期で、4月下旬から5月が出産期です。交尾期にはオス同士がメスをめぐって争い、強いオスがどんどんハーレムを大きくしていきます。
バイソンにはオス・メスともに角があります(ちなみにバイソンやビッグホーン・シープ、アンテロープ(ウシ科)などの角はHorn(ホーン)と呼ばれ、毛でできている)。したがって、オス・メスの見分け方は難しいのですが、単独や少数で行動するのはオスと見てまず間違いないでしょう(単独でいるオスは群れからはぐれて、以来一人ぼっちになることが多い)。
バイソンの尻尾の先端が上方に立っている時は緊張したり、苛立っているサイン(時々苛立ってるのか、と思うとウンコだったりする)。特に出産期のメスは痛みで怒りやすいので注意が必要です。一見鈍そうなバイソンだが油断してはいけません。当然ながら、人間より速く走ります。そして、あの巨体が角を向けて体当たりしてきたら、大怪我、運が悪ければ死にます。キャニオンのビジター・センターにはバイソンに襲われた人の映像を常時ビデオで上映してるので、訪れる人は是非ご覧になってください。
公園内ではマディソン地区やラマー・ヴァレーの多く生息していますが、夏になるとマディソン周辺のバイソンは標高の高いヘイデン・ヴァレーに移動します。したがって、夏に訪れる人はヘイデン・ヴァレーに行けば、まず間違いなくバイソンを見ることができるでしょう。しかし、何度も見てるうちに「またバイソン・・・」と終いには見向きもされなくなるのが悲しい・・・。
19世紀にはアメリカに約6000万頭もいたバイソンですが、白人の西部開拓に伴い殺戮、乱獲され、絶滅への道をたどりました。当時の政府はバイソンの肉や毛皮を利用するだけでなく、バイソンに生活を依存しているインディアンを制圧するためにバイソンを滅ぼそうと考えていたのです。そして、1894年にはついに野生のバイソンはYSNで確認された、わずか20頭のみになってしまいました(動物園や家畜のバイソンは約1000頭いた)。(現在YSNにいるバイソンもすべて野生種と家畜種の雑種です。)
その後の保護運動の努力によって、1996年にはYSNのバイソンは約3500頭までに回復しましたが、同年の冬、記録的な積雪と寒波により、エサを求めて公園の外に出たバイソン約1000頭が射殺される事件がありました。バイソンの持つブルセロシス菌に感染すると、家畜牛は流産しやすくなる、というのが射殺の理由でしたが、不可解な点も多く残りました。
まず、YSNのバイソンが保菌しているかどうかは、野生動物を自然な状態に保つというポリシーから検査していないのでわかっていません。また、牛がブルセロシス菌に感染するとしたら、流産した胎児や出産場所に残った溶液などと直接接触した場合におこると言われています。したがって、妊娠しているメスのバイソンと牛の接触を回避すればいいのですが、そもそもバイソンの出産期は4月下旬からで、冬に菌に感染する可能性はほとんどないそうです。それにもかかわらず、メスのほかにオスや春に産まれた子供まで数多く射殺されたのです。
これはブルセロシス菌を言い訳に、バイソンの回復とともに、力を取り戻しつつあったインディアンに対する政治的理由によるものと言われていますが、定かではありません。今年の夏、モンタナ州知事はブルセロシス菌の感染の影響に関する研究結果が出るまで、家畜牛を公園と隣接する国有林に放牧することを禁止すると発表しました。この問題が解決するまでにはまだまだ時間がかかりそうです。