Ghost Hunt

HAPPY BIRTHDAY DEAR ・ ・ ・ ・ ・
「えーと、お風呂のブラシ」
「・・・・・全自動洗濯機・・・・」
「うーん・・・・食器洗い乾燥機?」
「・・・・・新品のパソコン」
「それは高過ぎだよ、せめてオーブンレンジとか!」
「コードレスクリーナー」
「あ、それいいかも」

ポンッと手を打つ麻衣と、やれやれと言った面持ちでお茶をすすり始めるリン。
その光景を所長室の前で黙って傍観していた、某黒ずくめ超絶美形所長様が疑問の声を投げかけた。

「なんの話をしてるんだ?」
「え・・・いや、大したことじゃないんだけど・・・・・。ね?リンさん」
「・・・・・・・ええ、まあ」

二人の前にあるガラステーブルの上に広げてあるものは某大型電気店のチラシ。
(お風呂のブラシはともかく)その広告にのっている物をただ無作為に言い連ねているように思えなくもないが、ナルがそこで話を終わらせるはずが無い。
つかつかと歩みを進めリンと麻衣の顔を交互に見つめると、ナルは迷わず麻衣のほうへと向き直る。

「な、なんでリンさんじゃなくて私を見るの!?」
「当然だ。お前のほうが落としやすいからな」
「勘弁して〜っ!!」
「この僕が勘弁すると思うか?」
「いえ、ちっとも」

じりじりと間合いを詰めるナル。じりじりと間合いを詰められ逃げ場をなくす麻衣。
麻衣の背中と壁の距離は無いに等しい。
ひい〜っ、と声にならない叫びをあげかけた麻衣を、半ば強引に窮地から救った(?)のはリンの言葉だった。

「ナル。人には他人に聞かれたくないことの一つや二つあるんです。それを無理に聞き出そうとしないでださい」
「その『他人に聞かれたくないこと』を、麻衣は何故リンに言えて僕には言えない?」
「・・・・・・・それは・・・・・」
「それは?」
「・・・日が悪いんです」
「ふざけるな」
「ナル、リンさん嘘言ってないよ。・・・・本当に日が悪いんだもん」

あながち嘘ではないらしい。その証拠に、嘘をつけない性分の麻衣は本当に困ったような顔をしている。その表情にナルはそれ以上の追求が出来なくなってしまう。
何処か納得がいかないと言った面持ちのまま、麻衣の淹れたお茶を飲んだナルは大人しく自分の要塞へと帰っていった。

「・・・・・・・ナル、行ったね」
「行きましたね」
「そんじゃ今の内に・・・」
「行きましょう」

先ほど広げたままだった広告を持った麻衣と車のキーを持ったリンは、こそこそとオフィスを出て行った。





[9月19日]

ピンポーン♪

『渋谷 一也さーん、お届け物でーす』
「・・・・・・」
「こちらがお届け物になります。ここに印鑑お願いしますね」

ぽん。

「それでは失礼しまーす。毎度あり〜!」
「どうも」

威勢のいい宅配業の青年は、爽やかな笑顔を浮かべ姿を消した。
今住んでいるマンションには最近越してきたばかりで殺風景この上ない。そんな部屋に届けられた物は巨大なダンボール群だった。心当たりのないナルは訝しげにそれらを睨んでいたが、お届け伝票が視界に入った瞬間目を見開いた。

『お荷物差出人 谷山 麻衣 ・ 林 興徐』
『滝川 法生』
『松崎 綾子』
『John=Brown』
『安原 修・原 真砂子』・・・・・・。

どの名前も嫌と言うほど馴染みのあるものだった。
しばし呆然とダンボールの山を見詰めていたナルだったが、ついには意を決して山を崩し中身を取り出し始めた。
すると、出てくる出てくる。数々の生活用品たち。
そして最後に『谷山 麻衣・林 興徐』と明記されていたダンボールを開くと、一枚のカードが蓋の内側に貼り付けられていた。そこに書かれていたメッセージ。

[ナルへ お誕生日おめでとう。ついにナルも成人だね。せっかくの誕生日を機に、生まれ変わってみたら?リンさんと割り勘して買ったんだから、ちゃんと使ってね。   谷山麻衣]

[ナルへ いい加減掃除の一つも自分で出来るようになって下さい。「忙しい」と言っても、もう掃除も洗濯も肩代わりしませんよ。自己の生活管理は大人への第一歩です。林興徐]

麻衣のメッセージの一文を読み返し、ナルは初めてその日がなんなのか思い出した。
(そういえば今日が誕生日だったな・・・・・)
落ち着いた手つきで保護材の発泡スチロールを取り除くと、中から出てきたのは濃紺色のコードレスクリーナー。極端に色見の少ないナルの部屋にマッチした色。
よくよく他のダンボールの中身を見直してみると、藍色のスチームアイロン、黒枠の姿見、ベージュのシングルソファ、グレーの陶器製の鉢に植えられた観葉植物・・・・・どれもこれも、モノトーンの世界でも浮かない色合い。
ただの偶然ではなく、そこまで配慮した上で選んだ品々なのだろう。

どこかくすぐったいようなものがこみ上げてきたナルは、他に誰も居ない部屋でひとりくつくつと声を漏らし笑った。



     HAPPY BIRTHDAY TO YOU

     HAPPY BIRTHDAY TO YOU

     HAPPY BIRTHDAY DEAR OLIVER

     HAPPY BIRTHDAY TO YOU・・・・・



     Happy Birthday To You !
          We Wish You Many Happy Returns Of The Day.

                        ・・・・・・And

     Happy Birthday Dear Eugene.



おわり



あとがき
・・・・・・ご、ごめんなさい。意味不明とはまさにこの事です!掲示板で図々しくも「どんな話がいいのか教えて」と申した私へ空也サマからのレスが『ナルの誕生日ネタ』・・・・・。
悩みました、心底悩みましたともっ!!誕生日と言うからにはやはりナルが良い目に遭わなければいけないと思い、プロットも無しにいきなり書き出して(てゆーかそんなのいつも無い)
みたらば・・・・。良い思いしてないじゃんよ!!ってモノになってしまいました(泣)。
ご不満が今にも爆発してしまうでしょうが・・・ゆ、許してください。

ラストで英文使いまくってますが、私『HAPPY BIRTHDAY』のスペル調べるのに辞書を引いたりするほど英語駄目人間です。少しでも雰囲気が出るようにと思い書いたんですが・・・。
私的に一番最後の一文がなんだか物悲しい気がしてしまいます。
(↑自分で書いといて酔うなよ)
こんなモノでは空也サマのサイトに華なんて添えられないとは思うのですが、よろしければ小間使いにでも貰ってやってください(汗)

今度こそ養子に貰っていただけるようなコを・・・・・!!!                         

by五十嵐 蓮美   
ん〜〜〜もう、蓮美様ったら。
謙遜が過ぎますわ。いや、マジで!
もう! 100点満点ですよ! ええ、誰が何と言おうとも!!

文章を見てるだけでナルの暖かい笑顔が浮かんでくるんです。
読んでるこっちが暖かい気持ちになれるんです。

本当にありがとうございました。

そして……

Happy Birthday Noll & Gene !!!
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