> 8万ヒット、おめでとうございました!!

もっと!



「・・・よしっ、と」
セイは腰に手を当て、今遣り遂げたばかりの成果を眺めた。
夏の輝く日差しにはためく洗濯物たち。ぽたぽたと落ちる滴が何とも涼しげではないか。
「これなら夕方には取り込めるよね」
うんうんと満足げに頷き、襷掛けにしていた袖を解放する。

その時。
足に衝撃が走った、と思った瞬間、セイの体はぐんと宙に持ち上げられていた。
「・・・・・・ゎわわっ?!」
「いたたたたっ!」
ぶちぶちぶち。
均衡を失い手近なものを掴むと、何かが千切れる音と共に下から悲鳴が聞こえた。
「おっ、沖田先生?!」
慌てて下を見れば、見慣れた癖毛の頭。その前髪を、馬の鬣を掴むようにしっかりと握り締めている自分の指。
手を緩めると、彼の髪がはらはらと舞い散るのがくっきりと分かった。これは痛いだろう。
セイは総司の顔をそうっと覗き込んだ。
「・・・酷いなあ、神谷さん。人の髪を引き千切らないで下さいよ・・・」
涙を溜め、恨めしげにこちらを見上げる顔に眉を顰める。
「自業自得でしょう?もう、何ですか突然!」
よいせ、と、総司はセイを抱えなおし、にこりと笑った。
「いやあ、やっと洗濯が終わったようだったので」
「洗濯と肩車と、何の関係があるんですか?」
「遊びに行きましょうよ!待ってたんですよ終わるの!」

「ならば少しは手伝えよ!」とセイは心で突っ込んだが、こればかりは言っても仕方がない。
仮にも自分の隊の組長なんだし。年上だし。
つい忘れてしまいがちだけど。
見上げてくる無邪気な笑顔に苦笑が洩れた。

「・・・いいですよ、遊びましょう?」
「やったぁ!」
叫びついでに、総司は走り出した。
「ちょちょちょ、沖田先生!降ろしてくださいよ恥ずかしい!」
「あはは、あなた軽いですねえ!」
「また子供扱いして!・・・もうっ」
セイは総司の頭に手を置きなおし、思わず笑い出した。
爽やかな風が駆け抜けてゆく。

 

目を上げると、見慣れているはずの景色が随分と低い。
「わあ!沖田先生って、いつもこんな風景を見ているんですか!」
雲にだって手が届きそうだ。セイはぐいと手を伸ばし、片腕を上げた。
「気持ちいいですか?」
「はい!高くって、どこまでも見えて!」
あはは、と、総司の笑う声が聞こえる。
機嫌のいいその声に、セイの頬も緩んだ。
「地の果てまで見えます?」
「地の果てどころか、水平線まで見えちゃいそうですよ!」
そりゃあ凄い!総司は更に笑い、ふと立ち止まった。
「・・・沖田先生?」
「神谷さん、ちゃあんと掴まってて下さいよ?・・・それ!」
「わっ!」
ぴょん、と高く飛び跳ねた。
セイは慌てて彼の髪を再び掴む。
いたた、と悲鳴を上げながら、総司がセイの顔を見上げた。
「・・・見えました?」
「え?」
セイも総司の顔を覗き込む。
自分より下に、逆様に映る表情が何だか新鮮だ。
逆様のまま、にこ、と総司が微笑んだ。
「この景色全部、今なら全部手に入りますよ?」
「ええ?」
目をぱちぱちとさせるセイを笑い、総司がもう一つ飛び跳ねた。

 

一瞬だけ見えた気のする山の向こう。近付く太陽。
大坂の港だって見えそうな気になる。

 

「見えました?見えない?・・・それ!」
「わ!」
野暮天な彼からの、随分粋な贈り物ではないか。
セイは背筋をぴんと伸ばした。
もっと!もっと!
「先生、跳びながら走って下さい!」
「えええ?無茶言わないで下さいよ神谷さん。・・・いたた!引っ張らないでってば!」
涙目で笑いながら、ひょいひょいと飛ぶように総司が駆けて行く。

 

もっと高く、もっと速く、もっと風に近付いて。
でも本当に欲しいのは、本当に手に入れたいものは。
他愛も無い、こんな風に過ごすあなたとの時間。
「沖田先生、もっと!」
「ようし、行きますよ!・・・・・いたたたた!」
見上げてくる総司と目が合い、セイは花が咲き零れるように笑った。

 

広い陸に伸びゆく海、果ても無い空。
あなたとの共有できる時があるからこそ、私はもっとこの世界を愛しく思える。

 

二人の笑い声が、広い世界を翔け巡る。

 

もっと、もっと!

ねえ、沖田先生。

あなたをもっと、好きになっても、いいでしょう?




陸海さま、いつも本当にお世話になっております!
・・・・・うわあんすみませんすみません!遅れまくりです姉さま・・・!
ななまんななせんななひゃくななじゅうななの約束でしたのに・・・・・・!
本当は厚かましくも絵を付けさせて頂こうかと思っていたのですが、余りに遅くなりそうでしたので文章のみにて失礼させていただきました。
ほんとにへなちょこで申し訳ありません。ううううう。

改めまして、8万ヒット、本当におめでとうございました!!
素敵な絵、素晴しき小説、そしてステキなお人柄の賜物ですねvv
メロメロキュ〜ン(謎)になりつつも、これからも一ファンとして、微力ながら応援させて頂きたいと思います!


20040810 清井 拝。


清井様! こちらこそいつもいつもいつも(×∞)お世話になっておりまする。

はああああ、なんて爽やかな二人なんでしょうか!!(>_<)
何だかもう原作の二人が彷彿されましたよ。

きっと風になるのは沖田さんだけじゃないんですよ。
おセイちゃんも然りです。
いえ、誰でも風になれるんだと思いました。
そして真理も幸せも自分すぐ傍にあるんだと……。

サマージャンボ宝くじが当たったかの様な幸運です。
清井様、本当にありがとうございました<(_ _)>