はじめちゃんが一番!
君の手
突然。
M2スタッフやA・A・Oが『ハッピー・バースディー』を歌いながら。
大きな、巨大なケーキを持ってきた。
ご丁寧にローソクまで刺さっている。

しかし。

主役の亮は無表情のまま、その様子を眺めているだけ。
「……おい?」
やはりここは相棒の瑞希の出番。
亮の肩を揺すり、覚醒させる。

「何、ボーとしてるんだよ? 12時が回って、今日はもう、お前の誕生日だろう」
瑞希の言葉に、周りの五つ子やスタッフ・後輩達がみな「うんうん」と頷く。

しかし。亮は考え込んだまま。
「……今日って何日?」
「今日?二十日だろ?」
何を言ってるんだ?と言いたげに、瑞希の片眉が上がる。

「……二十日…二十日……」
ブツブツと。二十日……と何度も呟く。

……不気味……と、亮を遠巻きにして見る人々。

「…ねえ。瑞希が二十日っていうなら、オレの誕生日って……二十日?」
「……亮……お前の誕生日は二十日だよ……」
ほとんど脱力しながら言う瑞希。

瞬間。亮は、五つ子達に駆け寄り、一瞬考えて……かずやを選び外へと出た。
「?亮!」
制止する瑞希の声も聞かず。


「……ねぇ?ロウソクもうすぐ終わっちゃうよ?ケーキ台無しになるし、俺消してもいい?」
後には、無邪気に言うあつきの姿。

瑞希は溜息をついて、諦めたように頷いた。



「どうしたの?江藤さん?」
「かずや?はじめちゃんは?」
何故、俺だけ…と思っていたかずやは、亮からの質問で納得した。
「………はじめちゃんは……」
「今、家にいるの?」
頷く、かずや。
その答えに、亮はかずやを置いて、はじめ達の家へ向かおうとする。
「江藤さん!!」
その背中に向かって、かずやが叫ぶ。
「はじめちゃん!すっごい怒っていたから、止めておいたほうがいいよ!!」
それでも、亮の足は止まらなかった。


かずやが部屋に戻ると、瑞希が寄ってきて。
事の次第を説明すると、納得したような、しないような。そんな顔。
「はじめちゃんは何に怒ってるんだろう?」
怒っている内容まで知らないかずやは、「さあ?」と答えて。
目は皆が食べているケーキに釘付けで。
瑞希は食べていいぞとまた溜息をついた。




タクシーの運転手に飛ばしてもらい、早々に着いたはじめの家。
二階まで一気に駆け上がると、
「はじめちゃん!はじめちゃん!!」
亮は、家のドアをドンドンと叩く。
「うるさい!!誰よ?」
途端に出てきた、はじめの姿に、亮は嬉しそうに微笑んだ。

だが。
「えと!…このバカ!!」
はじめは両目を吊り上げて、亮の頭を一発殴ると、腕を掴み、中へと入れた。
「あんたね!自分がトップアイドルだって自覚あるの?帽子も被らず、眼鏡もかけずに
うちなんかに来て!その上、外で私の名前、連呼するなんて!!バカじゃないの?」
はじめ達が寝ている部屋へと連れて行き、亮に正座をさせ、説教するはじめ。

「……はじめ。もう夜中ですし、あまりうるさくしては……」
そこへ、温かいお茶を持ってきた岡野母がはじめを窘める。
「……お母さん…」
「それに、いくらお付き合いさせてもらっている方だからといって、バカとか言ってはいけま
せんよ。女の子なのだから。それじゃあ私達はもう寝ます。江藤さん。ごゆっくり」

ニッコリと笑って、出て行く母に。
亮とはじめは『お付き合いさせてもらっている方』の部分に頬を染めた。

「……で?急にどうしたの?」
寝てしまう両親の為、小声で聞く。
「はじめちゃん……オレ……ごめん……」
「何が?」
「……オレの誕生日……」
「ああ。やっと気付いたの?」
「う……ん。ごめん」
「瑞希さんに聞いた?」
「……というより、ケーキを貰った……」
「……あ。っそ。」
「はじめちゃん。ごめん」
謝る亮。

以前。
亮の誕生日の話をした時。

亮は自分の誕生日は二十一日だと思っていた。
すると、はじめが訂正を入れて。
自分の誕生日を間違えるわけがないと、小さな喧嘩になったのだ。
お互い、少し意地っ張りなところがあるから仕方がない。

それが一週間前の話。

そして、今日。
はじめはもちろん、瑞希や五つ子から、今日のケーキの件を聞いていたが、
関係ないわとばかりに、一人先に帰ってきていたのだ。


「それにしても、自分の誕生日を一日間違えて覚えてるってどういうこと?」
「…………」
はじめのキツイ言葉に、亮は言葉もでない。

「はい」
上からはじめの優しい声が降ってくる。
いつのまにか出された、綺麗にラッピングされているもの。

「え?」
「え、じゃないでしょ?いらないの?プレゼント」

亮はプルプルと小さく首を横に振って。
両手で受け取る。
かさばっている割に、軽い。

「開けてもいい?」
「どうぞ」

リボンを外し、ラッピングペーパーも綺麗に剥がす。
中から、白いマフラーとおそろいの手袋。
もちろん、はじめの手編みだ。

「…………」
「……何よ?イヤだった?」
何も言わない亮に対して、はじめは少し心配になって聞いてみた。
亮は慌てて首を横にふる。
「違うよ!すっごく嬉しくて……」
そして。もう一枚。
中には、白い布地に、赤い糸で刺繍されている、タオル。

「……はじめちゃん……ありがとう……」
嬉しくて。嬉しくて。
嬉しい気持ちをそのままに。
亮は、綺麗な笑顔を見せる。

はじめは照れて、赤くなりながら。
「……別に。本当は明日渡そうと思ってたんだけど」
と視線を逸らすと、次の瞬間には、亮の胸の中にいた。
「……ありがとう……」
亮がもう一度呟いて。
はじめは、笑みを浮かべる。
本当は、大学の課題もあり、あの子達の付き人の仕事も忙しくて。
何度も止めようと思ったけど。

でも、やっぱり、あげたかったから。

こんなに喜んでくれて、よかった。
嬉しい……と思っていたら。


「……はじめちゃん……太った?」

亮の非情な台詞。

はじめは怒りのあまり震えだす。
「袢纏の上から抱きしめて、太ったっていうなー!!」
「イタ!」

先ほど殴ったところをもう一度殴り、ふん!と鼻息荒く、亮を睨む。
「……ゴメンナサイ……」
涙目の亮に、
「……分かればよろしい」
そう言って。

今度ははじめのほうから抱きついた。

「お誕生日おめでとう!」
もちろん。飛び切りの笑顔を添えて。
おわり
まるるさま宅からゲット&アップさせて頂いてます亮君お誕生日おめでとう小説です!!!

亮君の誕生日……陸海は最初29日と思ってました。そしてまるるさんは21日……。
柑子さん→まるるさん→陸海の順に正しい日付を教えて貰いました……。えへ。

しかしまあ、すっかり自分の誕生日を間違えていた亮君。でも多分はじめちゃんの誕生日なら一ヶ月前から準備始めそうですね。
そしてはじめちゃんはもっと前からやってると思います。だからこそケンカになっちゃんたんでしょうね(笑)。
でもでも最後にはとっても甘くて暖かい二人に読んでる方が幸せを感じました。

まるるさん、本当にありがとうございました。