重水素(D),三重水素(T)を燃料とする核融合炉を実現するためには,1億度という高温プラズマを発生し,1秒以上閉じ込める必要があります。この「閉じ込め時間」はプラズマ中で発生したエネルギーがプラズマ外に逃げるまでの特性時間で,高温プラズマ自体は長時間(たとえば1年間)高温に保持されつづけなければなりません。
1970年代からの研究により,トカマクという方式で1億度以上のプラズマの発生が
90年代前半に達成されました。しかし,それはわずか数秒しか保持できていないのが現状です。
核融合科学研究所では,Large Helical Device (LHD) と呼ばれる,超伝導磁場コイルをもった新しい装置を中心に,高温プラズマ生成と長時間保持の研究を行っています。
LHDはプラズマ中を流れる電流に頼るトカマク方式とちがい,超伝導磁場コイルだけでプラズマ閉じ込めと保持に必要な磁場を発生することができます。そのため,定常運転が比較的容易で将来の定常核融合炉に有利な特徴をもっています。
本格的な研究はトカマクより少し遅れてスタートいたしましたが,このヘリカル型磁場方式においても
LHD実験で電子温度1億度,イオン温度 8000万度を達成しております。 LHDにおける定常・長時間運転を目指す研究では,2006年に,
2000万度のプラズマを 54分保持するところまで到達しています。
高温プラズマの発生と保持にとって重要な鍵となるのが「ダイバータ」と呼ばれる熱・粒子制御装置と,ダイバータやプラズマ対向壁におけるプラズマ・固体壁相互作用です。
私は2003年3月まで,LHDにおけるダイバータの建設,保守,改良,とプラズマ・壁相互作用研究を担当いたしました。また2001年までLHD定常実験タスクチームの責任者として長パルス定常実験のお世話をいたしました。2003年4月から2008年3月まで炉工学研究センター長を拝命し,1億度の炉心とならんで核融合炉を成り立たせるために必要なもうひとつの重要な要素,発電・増殖ブランケット成立を目標とする活動の中核となって核融合に貢献すべく努力してまいりました。
PSI国際会議では2002年5月,岐阜市長良川国際会議場にて第15回を主催したのを最後に16年間お勤めした国際プログラム委員のお役目を卒業させていただきました。IEA
(International Energy Agency) TEXTOR国際協力執行委員会・副議長,炉工学ネットワーク炉内材料工学分野幹事の役目も後任に引継ぎを終わりました。今後は,今までとは少し異なる立場でLHD共同研究,プラズマ・壁相互作用研究を中心に引き続き核融合研究に携わっていきたいと考えております。
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