ひとつ戻る   トップに戻る

サンツアー前田工業の全て−14 

異端のテクノロジー・シュパーブテックの巻

後変速機の発達史

1.2枚の板で挟んで変速しテンションは車軸を移動して取る。

2.テンションはチェンケージに取り付けたプーリーで取りチェンケージを
  シャフトで移動する、変速はチェンケージの2枚の板で挟んで行う。
  テンションはゼンマイの様な板バネを竹の子状に丸めた物で取る。

3.2の改良、フリー側にもプーリーを設けた、ケージの移動はシャフト上を移動。
  基本はローノーマル、極小のチェンで引っ張った、一部にヘリコイド式も有り。

4.平行四辺形の対辺は平行移動する。一辺を自転車に固定すればもう一辺は・・。
  これが現代につながるパンタグラフ式。

では次なる形式はって考え出すと、夜も寝れない地下鉄ギャグ。
ギャグじゃ済まないサンツアー。

3から4へ移行した大きな理由に、「雨天での円滑な動作」が有ります、スライドシャ
フト式は泥混じりの水がかかるとテンションスプリングやシャフトの動作抵抗が増え
て動きが渋くなり易い為、色々改良が加えられて来たのですが決定版の登場と同
時期にパンタグラフ式が登場しました、テンションスプリングだけ覆っておけば良い
パンタ式がスライドシャフト式を駆逐してしまったのは爬虫類から哺乳類への移行と
同じ事なのかも知れません。

ではパンタ式は完全無欠なのか、米国市場の答えはNoでした。
子供のおもちゃBMXから発展したオールテラインバイクが流行の兆しを見せていま
した、既存のパンタ式変速機では「泥田の中を(カリホルニアのどこかに有るのかな)
駆けずり回ると変速しなくなるぞ、どうにかしてくれ」とMAEDA・USAからの矢
の催促。草原を走れば蔓草が変速ワイヤーに絡むぞとテレックスが入るし、ああ面倒
臭い、ディレーラーガードで何とかならないのと言っても「ダメ」の一言。

横型パンタだから絡むのかと考えると「縦型のサンプレもカンパも同じ」とのテスト
結果。迷った時には基本に戻る、何処に何が絡むのか、何処に何が詰まるのか。
変速ワイヤーのUターン部が邪魔だ、パンタアームの接合部に砂が噛むのだ、テ
ンションスプリングに泥が詰まるのだ。

良し判った、ワイヤーは直線で引こう、パンタは止めよう、テンションスプリングは
形式を変えシールドを徹底しよう。
えっパンタを止めるだって。!?

*************************************

サンツアー前田工業の全て−14後編

異端のテクノロジー・シュパーブテックの巻 後編

パンタをやめると決めてはみたものの、

 チェンケージをフリー(車軸)に直角に保持して移動させるにはどのような方法が
有るんだろう。
 いまさらスライドシャフトには戻りたく無いし、夜店で売っている蛇のおもちゃも
良く見ればパンタ式だし、息を吹き込むと延びるおもちゃも結局スライドシャフトの
亜流だし。意気込んではみたものの前途多難、どうしよう。何か手本に成る物ない
かなあ、カマキリの腕とか、電気のスタンドとか、うーん前例の無い物を考えるのは
大変だあ。
 頭のなかボロボロになって家に帰ると奥方はミシン掛けの真っ最中、新しい曲線
縫いの出来るジグザグミシンを買ってからというもの、何かといえばミシンを動かし
て楽しんでいる、ソーイングマシーンがミシーンと聞こえたからミシン、犬をカムオン
と呼ぶのがカメンと聞こえたからカメ、赤のレッドがウレか、鈍った頭で戯れ言を考
えていると、模様を変える時には何やら部品を入れ換えている、何だろうと手に取っ
て見ると「カム」(変心軸)だ、別に目新しい物じゃあ無いけれども ? ・ ? ・ ?
カムを2個くっつけるとどの様な動作をするんだろう、カムの軸同士を何かで固定し
て置いて片方のカムを回すと・・・・・

 厚紙をカム型に切って画鋲を突き刺し動作模型を作る、一方のカムを抑えて全体を
動かすと他方のカムが回転する、そのある一点にチェンケージを取り付ければ・・・


 昭和57年の前田工業本社で開かれた商品内示会に麗々しく展示されました、その名は

Super Cpurse 100  スーパーコース100

完全シールド、アウターレスの直引き、ダブルテンション式チェンケージのワイド
レシオ、レーシング用のショートケージモデルも揃えて「シュパーブテック」として
登場出来ました。
広告には透視図を使い動作説明をしました、お蔭でダブルテンション式チェンケージ
の印象が少し薄れたかも。 

 もっとも価格が中途半端に高価だったのと、なまじ完全シールドのためにメカニズ
ムの面白さが目に見えず、日本市場ではもてはやされずに終わってしまった「不運の
逸品」だった、と結論づけて置くと苦情来るでしょうねぇ。

 
使ってみて
変速は前田工業製サンツアーの面目躍如、もう心から満足ゆきました、レバー操作も
軽かったし、ただカムが重いのか?ケージが重いのか?全体の重量が重いのはちょっ
と残念、藪漕ぎしても草や笹が絡ま無いのは狙いどおり、雨天でも雪解けの泥路でも正
確な変速をしてくれて走行後の水洗いが簡単なのは有りがたかったです。

と良い事ばかり書きましたが、一つだけ重要な欠点が有りました、プラスチック製の
シールリングがへたる場合が有ります、私のテックはこれがふやけて砂が入り、ロー
側を乗り越えてチェンケージがスポークに突入、あじゃぱーになりました。
もっともシールがへたったら本体ごと取り替えれば良いのですが。

蛇足 これらアキューシフト以前の後変速機は現代のくにゃくにゃなチェンでは本来
の性能を発揮出来ません、もちろん7−9速も動作保証無いですし仮に動いても前田
製サンツアーの胸のすく様な切れ味は望めません。

ひとつ戻る   トップに戻る

 転載、流用などお断りいたします。一切の権利はv−luxe氏に在ります。 使用許諾済v−luxe@mx6.nisiq.net