なんでも使用記(AirH”の巻)

1.はじめに

 最近のインターネットにおけるサービス事情を見ていると、サービスを提供する側は「高速通信」
と「常時接続」を前提条件にしていると思われるものが多く存在します。
サービスを提供する側はともかく利用する側としては、時と場合によってはその2つの前提条件を
揃える事が難しい事があります。
さて、そのどちらが優先的に必要な条件として考えると、まず「通信速度」を求める事になると私
は思うのですが、最近の高速通信をうたった各種データ通信サービスのCMを見ながら、果たして
「必要最低限の通信速度」というのは一体どの位のものなのかと考えてしまいました。
私自身の経験から来る結論を言えば、単にe−mailの送受信に限れば画像等の添付ファイルが
無い場合で9.6kbps、添付ファイル付きe−mailの送受信や通常のホームページ閲覧な
ら14.4kbps、データファイルのダウンロードやアップロード28.8kbpsと言う事に
なりました。
もちろん通信速度が早ければ早いに越したことはないのですが、インターネット利用の場合、通信
速度だけでなくパソコンや専用機器といった端末の性能も考慮しなければならない場合があるので、
性能の違う端末を数種類利用した結果で判断したものです。
さて、私自身のデータ通信事情については以前、出張で飛び回る事が多い仕事に携わっていた関係
があって、当時携帯電話やPHSと言った移動体通信を利用したデータ通信を色々と調べた結果、
基本料金等の料金と本体価格からPHSを選びました。
当時の移動体通信のデータ通信速度は携帯電話は最大でも9.6kbps、PHSはPIAFSの
仕様で最大32kbpsでしかも基本料金や通信料金はPHSの方が安いわけですから、当然の選
択でしょう。
最近では携帯電話でも最大通信速度が64kbps以上のものがありますが、やっぱり料金の面で
は少し不満です。
とは言うものの「安い」PHSの利用でも支払う料金は月額「万単位」の状態が続いていましたか
ら何とかしたいと言う思いはありました。
自宅にいる際には有線回線(56MODEM使用)も併用していたので深夜での番号指定による定
額料金サービスやISDN等の導入も考えたのですが、諸般の事情により導入を断念していました。
そんな時に登場したのがDDIポケットが提供するAirH”でした。
(勝手ながらエアーエッジ及びエッジの表記をそれぞれAirH”、H”とさせていただきます)
 
2.AirH”について 2.1)AirH”の特徴  AirH”はDDIポケットが提供するデータ通信のサービス名称なのですが、このサービスは 2つの柱で成り立っています。 まず1つは「ネット25」と言うもので、ベストエフォート方式と呼ばれるている通信速度を回線 の利用状況に応じて32kbpsと64kbpsとに切り替える通信方式を採用してます。 これは月で25時間までの利用料金が定額と言うものです。 月に25時間を超えると別に使用しただけ分単位で追加料金(10円/1分)が加算されます。 もう1つは「つなぎ放題コース」と呼ばれるもので、32kbpsパケット通信方式を採用し、月 額一定料金で利用時間無制限と言うものです。 特筆すべきことは従来のPIAFS仕様の通信では1回線を占有するので音声通話が多い場所では 回線を確保する事が難しい事があり中々繋がらないと言う事があったのですが、つなぎ放題コース で採用されているパケット通信方式では、音声通話がなされていてもその回線を利用してデータ通 信が可能という事で基地局の回線を最大限に活用する事が出来ます。 ただし、「ネット25」も「つなぎ放題コース」もプロバイダ側が対応している必要があります。 また、「ネット25」もしくは「つなぎ放題コース」を契約した際にはそれら未対応のプロバイダ への接続及び音声通話を使用した際には別途料金が加算されます。 2.2)今回使用したAirH”端末  今回私が使用したAirH”端末はセイコーインスツルメント製のMC−P300です。 この端末はPCカード型のもので、PCカードスロット(TYPE2)に差し込む事でデータ通信 が行えるもので、単体での使用は行えません。 あくまでもPCカードスロット(TYPE2)を搭載した機器と合わせて使用します。 なお、多くのデスクトップパソコンの様にPCカードスロットの無い機器で利用するためには市販 のアタッチメント(サン電子製Slipperシリーズ)を利用すればRS232C端子やUSB 端子経由で動作させることが可能です。 また、本体にイヤホンマイク端子を装備しているので別売りのイヤホンマイクと接続機器にダイヤ ラーを導入すれば音声通話も可能です。 また、AirH”以外にもPIAFS2.1(64kbps)やPIAFS1.0(32kbps) と言ったものに加え、無線モデムやISDN32k呼ばれているDDIポケット独自のデータ通信 方式(無線モデムが14.4kbps、ISDNが28.8kbps)の利用も可能です。 無線モデムやISDN32kが使用出来る事の利点としては、FAXソフトの利用時や、PIAF S対応のアクセスポイントが近くにない場合でも、プロトコル変換装置(PET)を使用すること なくデータ通信が可能と言うことです。 この無線モデム等があるからこそ、DDIポケットが他の移動体通信業者に比べてデータ通信に強 いと言われる由縁かもしれません。 私自身、MC−P300導入以前からDDIポケットの端末を利用していましたが、PIAFS用 アクセスポイントが県庁所在地付近しか無い事もあって出張の際にはずいぶんと無線モデムでイン ターネットやパソコン通信に繋いだものです。 余談ですが現在販売されているAirH”対応の通信端末においては無線モデムやISDN32K での接続が行えない機器がある事を付け加えておきます。  
3.使用感 3.1)インストールと設定  (今回私が契約したのは「つなぎ放題コース」ですので、32kbpsパケット通信についての みの使用感となりますが、内容に若干愚痴も含まれている事を予めお断わりしておきます)  MP−C300の取扱い説明書にはインストールを含めたセットアップ方法が、OS毎に記載さ れていたので結構簡単に本体のセットアップが行えます。 Windows95,98,Me,2000搭載機はカードスロットへ装着して添付CD−ROM からドライバを読み込めばセットアップは完了します。 またWindowsCE搭載機であれば、PCカードスロットへ本体を装着すれば自動認識します からそれで完了です。 結構あっけないと言うか簡単で良いというかはその時の気分次第ですが、私としてはあっけなく感 じます。 3.2)インターネットへの接続  DDIポケットが提供ているインターネット接続サービスにPRINと言うものがありますが、 このPRINは別途契約の必要は無くDDIポケットの端末を利用してさえいれば誰でも、また、 DDIポケットと契約したその日から利用が可能です。 無論、DDIポケットで提供している全てのデータ通信方式で接続可能ですからつなぎ放題コース を利用するに際してこのPRINを利用する事にしました。 余談ですが、このPRINにかかる費用は利用するデータ通信方式毎に違っていて、つなぎ放題コ ースに関しては通信料金(通話料金)とは別に1分10円の手数料が発生しますが、この手数料は 1ヵ月で1500円が上限ですから、月1500円+つなぎ放題コースの月額料金(5980円) でDDIポケットとプロバイダと契約を結んでいるようなものです。 3.3)実際に利用して  使用しているインターネット用端末がpenteum100MHz搭載のWindosw95マ シンなのですが、これでPRINをプロバイダとて使用してみました。 さて、実際に普段閲覧しているホームページをいくつか表示させてもパケット方式云々と言うこと の違いはほとんど感じられません。 今まで利用していたアナログ回線が56kbpsですから、ホームページの表示速度は画像の表示 が遅くなりますからストレスを感じる事がないわけではありません。 試しにほぼ同等の通信速度であるPIAFS1.0(32kbpsPIAFS)での通信と比較し た場合は、体感的にはさほど遅くは感じませんでした。 ただ、時たま表示途中に「クッ」とした挙動を見せる事があり、一瞬ロックしたかと思わされる事 もなんどかありましたが。 ただ、雑誌などのレビューで何度か言われた事のある「繋がりにくい」「すぐに切れる」と言う事 についてはいくつか理由が考えられます。 繋がりにくい理由としてはDDIポケットの基地局の絶対数から来る回線数とIPアドレス数、設 備数と利用者数の関係が考えられます。 これはDDIポケット側でも設備増強が行われているので当初よりも改善が図られているようです。 「すぐに切れる」と言うことはその話の内容からPHSと言う無線回線と有線回線とを全く同じ土 俵で考えているのでは?と思われるものもいくつかありましたが、PHSの出力(10mWと言う 携帯電話の1/10の出力)や利用している周波数帯の電波特性や採用している無線としての方式 からすればその発生が十分に考えられるので、それを不満としてうだうだ言うこと自体が私にはナ ンセンスに感じるときがあります。 ただ、実際に1定時間データのやり取りが発生しないと回線が切断されると言うことは行われてい るようです。 これは、設備と利用者数との関係から通信に利用されていないにもかかわらず有限の設備を占有さ れていては問題がある以上仕方が無いことでしょう。 私が体験した時間による回線切断は結構長時間と言ったもので実用上は特に不便さを感じませんで した。 何度か言うように「つなぎ放題コース」で採用されている32kbpsパケット通信と言う方式で は通話による回線利用でデータ通信用に回線が利用出来なくなると言う事はないので必要に応じて 接続切断をくり返しても特に問題は発生しないでしょう。 また、WindowsCE搭載機でも使用してみましたが、特に問題は感じませんでした。 ただ、ファイル等のダウンロードではPIAFS1.0(32kbps)の利用よりも遅く感じた ので、きびきびとした動作はそれほど期待しないほうがよいかもしれません。  
4.終わりに  インターネット利用で私が悩みの種としていた事の1つにダウンロード中にタイムアウトエラー に起因すると思われる回線切断がありました。 アナログ回線でMODEM利用をしていた身としてはISDNへの回線変更により常時接続への契 約変更をすれば良いのでしょうが、当初ISDNへの回線変更が諸般の事情で行えませんでした。 その後、CATVとかADSLと言ったものが登場したのですが、今度は利用可能なプロバイダの サービス内容がそぐわなくて、他に手段がないものかと色々探していたらこの「つなぎ放題コース」 にたどり着きました。 最大通信速度が下り32kbps上り17kbpsと言う仕様はともかくワイヤレスで料金固定と言 う点にひかれました。 そして、実際に導入したところ、室内野外問わずに通信料金を気にせず利用出来るところにストレス を感じない事が最大の点とは思いますが、通信速度もそれほど問題とするほど遅いとは感じません。 インターネット利用形態の関係で、ISDNやADSLや光ファイバー等の回線を利用した高速常時 接続のサービスを受けられない場合、月極定額接続を考えるのであればこのAirH”のサービスは おすすめです。 また、本年3月26日よりAirH”のオプションサービスとして、専用端末による下り最大通信速 度が128kbpsのパケット通信サービスが開始されますので、通信速度を気にする方はこちらの 利用を検討してはいかがでしょうか。 ちなみに月額の基本料金(年間割引未使用の場合)が、 5890円(つなぎ放題コース)+3500円(オプション128)=9390円(消費税別) になりますが。 また、今回の使用記において、本来なら私が契約しているプロバイダであるinterQmembe rs(グローバルメディアオンライン提供)を利用するのですが、残念な事にAirH”に未対応で あるためPRINを利用しました。 とは言うものの、メールアドレスの確認やこのホームページの更新と言った動作はPRIN経由でも 行えるのであまり不便さはありません。 なお、ISDNやADSL、そして最近サービスが増えてきたFTTH(光ファイバー使用のサービ ス)を利用しているものの、野外での接続が結構多いと言う方のデータ通信のセカンドインターフェ ースと言う意味でもこのAirH”は利用価値が高いと思います。  
(−了−)


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