また、夕方や夜の電車の中では、プロ野球やサッカーの試合の実況中継を聴いているスーツ姿のサラリーマン風の人の姿をよく目にします。
また、残業時間中にラジオでそれらの実況中継を聞きながら仕事をしている、なんて事もあるようです。
ラジオ放送で実況中継、と言えばAM放送でしょう。
ところでAMラジオ局で「ステレオ放送」いわゆる「AMステレオ放送」が行なわれている事は、知ってますか?
「AMステレオ放送」は、日本では1990年3月に開始されました。
ただし、開始に際して全国全てのAMラジオ局がいっせいに切り変わったわけではありません。
聴取者の方から見れば、各放送局毎で行うかどうかを決め、行う局は順次切り替えた様な格好でした。
ですから、ステレオ放送を実施していないAMラジオ局は今でも複数存在します。
なお、ステレオ放送を実施したAMラジオ局では、「『AMステレオ放送』実施中」が分かる様にアナウンスや、番組タイトルに「ステレオ」を入れる行為をしていました。
ただ、時が経つにつれてそう言った事は少なくなりましたが。
現在は、在京局をはじめ大都市の民放AMラジオ局(中継局では無い、いわゆる本局)のいくつかでAMステレオ放送が行われています。
私が住んでいる首都圏に関して言えば、「TBSラジオ(JOKR)」「文化放送(JOQR)」「ニッポン放送(JOLF」の3局でAMステレオ放送が行われています。
NHK(ラジオ第1と第2)、RF(アールエフ)ラジオ日本(JORF)、AFN(米軍放送、旧称FEN)では行われておりません。
なお、NHKに関しては、全国全てのAM局がモノラル放送です。
大相撲や春と夏の高校野球大会と言った人気プログラムの中継を独占的に行っているのに、ちょっと残念です。
AMステレオ放送を聞く為には、それに対応したラジオが必要です。
放送開始当初は、色々なメーカーで「AMステレオ対応」のラジオやラジカセ、ミニコンポ等が発売されていました。
残念ながら、その多くが現在では製造終了となっています。
最近では、ソニー株式会社から発売されている3機種が手に入り易いでしょう。
その3機種とは、次にあげる機種です。
1つ目は、名刺サイズで通勤時の利用に便利なSRF−AX51Vです。
この機種は本体にスピーカーがついていません。
ステレオイヤーレシーバー(付属品等)でステレオ音声を楽しむ事が出来ます。
電源には、単4電池を2本使用します。
2つ目は、昔からある携帯ラジオ(縦長のポータブルラジオ)の様なSRF−AX15です。
この機種は本体にスピーカー(5.7cm)が1つ内蔵されています。
本体のみでは、音声をモノラルでしか聞けません。
ヘッドホン端子にステレオイヤーレシーバーや外部スピーカーを接続する事で音声をステレオで聞く事が出来ます。
電源は、単3電池を2本使用します。
私もこれを所有しています。
3つ目は、据え置き型のSRF−A300です。
この機種は本体にスピーカー(7.7cm)が2つ内蔵されています。
本体のみでステレオ音声を聞く事が出来ます。
ヘッドホン端子も装備してますからステレオイヤーレシーバー等で放送を聞く事も可能です。
電源は乾電池(単3電池を4本)に加え、電灯線の利用も可能です。
全ての機種を所持していない事もあって、ここでは外観写真の掲載が行ないません。
外観や詳細については店頭で確認するか、カタログや次のサイトをご覧ください。
ソニー株式会社ラジオ・テープレコーダー・ラジオカセットホームページ
(今回、各機種のデータは、2005年2月版のカタログより抜粋しました)
さて、AMステレオ放送と言っても、その方式は複数存在します。
そのため、実施されている国や地域によって採用されている方式がまちまちです。
国によっては複数の方式を採用しているところさえあります。
仮に世界中のAMステレオ放送を聞こうとするには、方式毎にラジオを揃えるか、1台のラジオで複数の方式に対応していない限り不可能です。
ちなみに日本では、「モトローラ方式」と呼ばれている方式でAMステレオ放送を実施しています。
ですから「モトローラ方式」でAMステレオ放送を実施している国や地域で販売されているラジオを使えば、日本国内でもAMステレオ放送を楽しむ事が可能です。
逆に言えば、そう言った国や地域に日本で売られているラジオを持ち込めば、その国の放送を楽しむ事が可能です。
AM放送がステレオ化された当初、「AM放送のFM化」が言われました。
従来からステレオで放送されていたFMラジオ局と同じ様な番組をAMラジオ局でも行うのでは?と言う事でしょう。
しかしながら新聞紙上等で番組表を眺めていると、FM局の番組構成がAM局風になって来ており「FM局のAM化」と言った印象を受けます。
AM局とFM局の関係が「住み分け」の状態から「共食い」の状態へと変化してきた、と言ったところでしょうか。
ところで、AM局ではアタリマエにあってFM局ではほとんど無い番組が有ります。
それがスポーツ中継、特に「プロ野球の中継」です。
誤解の無い様にお断りしておきますが、現在プロ野球の中継を実施しているFM局も(若干ですが)存在します。
古くからAMラジオ局で行われている人気番組、それがプロ野球の中継、特にナイター(ナイトゲーム)の中継です。
プロ野球の中継はテレビも行われていて、ラジオテレビ共に長い間ドル箱番組の1つでした。
ラジオでの中継は、多くの局で「試合開始直前」から「試合終了」まで行なわれます。
テレビ中継の場合は、まず試合開始から中継が始まる事はほとんどありません。
試合が長引いても最大で夜の9時半少し前で放送が終わってしまう事が多いです。
ただ、終了時間については、夜10時近くまでとか試合終了までとか言う事も一部の局では行われる事がありますが。
野球の試合と言うと多くが3時間程度ですが、最近は長時間になるケースも増えており、6時前後にプレイボールの声がかかっても終わるのが10時を過ぎる事があります。
こうなると、4時間近い試合時間です。
余談ですが、この文章を書きながら横で流していた「横浜ベイスターズVS読売巨人軍」の試合は、開始が6時頃で終了は10時半頃でした。
この試合は、9回で勝負がつかずに延長戦となった展開ですが、試合時間は4時間半近いですから通常2時間半〜3時間前後と言う試合時間と比べれば長時間と言えるでしょう。
テレビでは試合終了前に放送を打ち切りましたが、ラジオの方は試合終了までしっかりと放送してくれました。
試合時間が長かろうと短かろうと、最後まで放送するのはラジオの方です。
とあるテレビ局では、試合が放送時間内に収まらなかった時に、同じグループのラジオ局のナイター中継をお聞きください、と、言った意味のテロップを出す事があります。
そんなラジオのナイター中継ですが、「AMステレオ放送」で聞くとちょっと贅沢な気分に浸れます。
球場で何度か観戦をされた事のある人はご存じかもしれませんが、ラジオの実況中継が行われている場所(放送ブース)は、多くの球場で、バックネット裏辺りにあります。
細かく言えば、バックネット裏の二階席の下にあったり、バックネット裏の観客席の下辺り(主審の後ろ等)にあったり、と、球場毎に違いますが。
この「バックネット裏」と言う場所は、投手の投球から打者のバットスイング、打球とそれを追う内外野手、塁に出ている走者、審判の判定ジェスチャー等のほぼグラウンド全体の動きを見る事が出来ます。
つまり試合を観る場所としては最高の場所と言えます。
そんな場所から行なわれている実況を私達はラジオで聞いているわけです。
「別にどの席から実況されようが関係無いのでは?」と思われるかもしれませんが、AMステレオ放送の場合、この「バックネット裏」と言う事が結構重要なのです。
「バックネット裏」と言うのは「試合を観るのに最適な席」であると同時に、「内野席や外野席で行なわれている応援の様子もよく分かる席」でもあります。
ラジオの実況の後ろにそんな応援の声や鳴り物の音、場合によっては場内アナウンスが聞こえています。
実は、AMステレオ放送では、その「実況の後ろで聞こえる球場内の音」がどの方向から聞こえてくるか分かるのです。
ビジターチームの応援、ホームチームの応援がちゃんとその方向から聞こえてくるのです。
映像こそ見る事は出来ませんが、球場内のそれも、バックネット裏と言う特等席に居る臨場感を味わえる、それがAMステレオ放送です。
プロ野球だけでなく、サッカー(Jリーグ)でも、競技場内の臨場感を味わう事が出来るのは言うまでもありません。
スポーツ中継を聞くのに、ちょっとした贅沢として、AMステレオ放送はいかがですか。