スーパーカブ使用記(3/3)


 

4.スーパーカブあれこれ

4−1)逸話について

 スーパーカブには他のオートバイで同じ事をすれば故障は確実という運用をしてもほぼ問題無く動作したと言う、逸話が伝わっています。
スーパーカブはその誕生から一貫して4サイクルエンジンを積んでいる車種のみですが、似たデザインの他社製車両では2サイクルエンジンを搭載している車種が存在します。
そこで、スーパーカブのエンジンを2サイクルエンジンと勘違いして、2サイクルエンジン車にあるはずのエンジンオイルの注入口(多くの2サイクルエンジン搭載車両は燃料とオイルを別々に投入して燃焼時に混合する方式を採用)が見当たらないので混合燃料(ガソリンとエンジンオイルを一定の割合で混ぜた物、現在でも芝刈機の2サイクルエンジン等でこれを使う事がある)を燃料タンクに入れて乗っていたとか、はたまたエンジンオイルを入れずに走行していた(どちらも音はうるさかったらしい)、と言う話があります。
他の4サイクルエンジンのオートバイで同じ事をすればまずエンジンの故障(焼き付き等)は間違いありません。
また2サイクルエンジンのオートバイでエンジンオイルを入れずに走ればこちらもエンジンの故障は間違い無く発生します。
まさに、頑丈さを誇るスーパーカブならではの逸話と言える事でしょう。
ただし、再現しようと考えられてもその結果については私は一切関知しませんので、実行する方の自己責任で行なってください。
 実を言うと、私もエンジンオイルを規定値未満の状態で50スタンダードを走らせていた事がありますが(オイル交換時に判明)、走行中にキーンと言う聞き慣れない音が確認出来た以外は特に問題を感じませんでした。

4−2)スーパーカブの歴史

 詳しい話は本田技研が自社サイトにCubStory等のコンテンツを公開しており、それらを見れば一目瞭然なのですが、パソコン以外で閲覧する事が困難な作りのため簡単にふれておきます。
 本田技研が世に送り出した最初のカブは1951年発売のカブFと呼ばれる自転車取り付け用エンジン(原動機)です。
これを自転車に取りつける事でまさに「原動機付き自転車(原付)」になるわけです。
ただ、この時点では現在のような4サイクルエンジンでは無く、混合燃料使用の2サイクルエンジンでした。
もしもこれの自転車取りつけ済完動品があれば、1度乗ってみたいものですが。
 初代のスーパーカブは1958年に発売されたホンダスーパーカブC100になります。
C100と言うところから100ccのエンジンを積んでいるのかと思ってしまいます(私も最初そう思った)が、排気量49ccで最高出力が約4馬力の4サイクルエンジンを搭載、と数字的には現在のスーパーカブC50のエンジンとあまり変わらない性能のものを積んでいる事になります。
ボディデザインは(写真で見る限り)現在の物よりも曲線部分が若干多い感じがしますが、それほど大きく違うものではありません。
また、初めてC50の番号を持ったスーパーカブC50は1966年に発売されています。
このスーパーカブC50の外観は(写真で見る限り)現在のスーパーカブとほぼ同じものです。
そして、現在(2003年)までに使い勝手の向上や時代の要請(常時ライトオン、排気ガス規制対策等)に合わせて、デザインを含めた基本的コンセプトは変えずにマイナーチェンジを繰り返しながら販売され続けています。
年代順にスーパーカブを追ってみると、時代の要求に合わせて「熟成」し続ける、そんな印象を受けます。
案外、スーパーカブとは倉に眠るウヰスキーの原酒のような存在なのかもしれません。
 50ccがデビュー作なので他の排気量のスーパーカブは影が薄い存在ですが、50ccを超える排気量のスーパーカブも現在までに幾つも登場しています。
今回私が購入したC90デラックスの源流とも言えるかもしれない90ccのスーパーカブが登場したのは、1964年の事(スーパーカブCM90)です。
また、スーパーカブC90としての初代は1966年に登場しています。
 個人的には125ccを超えるスーパーカブが登場したなら、それで高速道路を思いっきり走ってみたいと思いますが……。

4−3)ライバルや仲間達

 スーパーカブがあまりにも有名な事が原因なのか、他の国内オートバイメーカーでも似たような車両、いわゆるライバル車を発売しています。
そんなライバル車のユーザーだった人から以前「近所の子供が見てカブだカブだ言うけど、コレは違うって何回言ってもカブだカブだと云々」と言う話を聞いた事があるほどですから、それだけスーパーカブが有名か言う事でしょうか。
そんなスーパーカブのライバル車として有名なのは、ヤマハ(ヤマハ発動機)が発売しているメイトシリーズでしょう。
スーパーカブがその登場から一貫して4サイクルエンジンを採用しているのに対してメイトは2サイクルエンジンを長い間採用(バリエーションの中には4サイクルエンジンの車種も存在)しており、エンジンの特性から発進停止を繰り返す乗車条件において加速が良く、スーパーカブに負けず劣らず新聞や郵便の配達業務に多く採用されています。
また、私の生活圏ではスーパーカブやメイトほど見かける事はありませんが、スズキ(スズキ株式会社)もバーディーシリーズを発売しています。
カワサキ(川崎重工業)は特に国内では発売していませんが、海外では幾つかの車種を発売していたようです。
 スーパーカブがベストセラーバイクになっている事もあってかそのバリエーションが過去にも幾つか本田技研から発売されていますし、店舗や個人オリジナルのカスタムいわゆる○○仕様が幾つか存在します。
その様な中で現在、本田技研によって販売されているバリエーションとしては「スーパーカブ50(ストリート仕様)」「リトルカブ」「ジョルカブ」の3種類がカタログ上で確認出来ます。
スーパーカブ(ストリート仕様)はC50スタンダードのカラーリングの変更と荷台を小型化にしたもので、他の部分(燃費も含めて)に特に変更はありません。
リトルカブ(1997年発売)は、スーパーカブの車輪サイズを17インチから14インチに縮小(車高が50mm低くなり足つきがよくなった)し、荷台も小型にした(ストリート仕様と同じ)まさに「リトル(小さい)」なカブです。
カラーバリエーションも業務用のイメージが強いスーパーカブと違ってカラフルで可愛らしく、そこから女性にもとっつきやすい感じがします。
このリトルカブにはセル無しとセル付きのモデルが存在しますが、ギアがセル無しが3速でセル付きが4速と違う事もあり、燃費の面でセル無しがリッターあたり125kmなのに対してセル付きが132kmと若干セル付きの方が良くなっています。
ジョルカブはスクーターのジョルノにカブの変速機(4速迄)を採用した様な感じのもので、左側の足のせのところにスーパーカブと同じギアチェンジペダルがついています。
最高出力はジョルノより劣るものの燃費は1.5倍に上がっています。
ただし、スーパーカブ(ストリート仕様)もリトルカブもジョルカブも50ccのみ発売されています。
また、先に名前だけ出しましたが前カゴ標準装備及び前照灯と方向指示器のカゴ前への位置変更、荷台の大型化がなされた新聞配達仕様(の市販車)とも言える「プレスカブ(50ccのみ)」も他の3車種とは違った意味でのスーパーカブのバリエーションの1つです。
 現在では入手困難ですが、タイホンダから以前輸入していたスーパーカブ100や中華人民共和国で地元との合弁企業と製造している100ccエンジンを搭載した物等、海外(現地生産品)にもスーパーカブのバリエーションが存在します。
 

5.最後に

 スーパーカブで遠くに行くと大抵「これで来たんですかぁ?」と驚きとも呆れともとれる言われ方をします。
「50ccでも普通のオートバイやスクーターならともかく、よりによってなんでカブで来るの?」と、まるでスーパーカブで来る事自体が悪行を働いているかの様に言われので、複雑な気分になるものです。
まぁ、遠くと言っても友人に富士五湖等につれていって貰った以外では、(「星空への招待」参加のために)福島県にある浄土平(地図で言うと北を上にして猪苗代湖の右斜め上辺り)まで行った程度ですからそれほど自慢出来る距離ではありませんが、その時に同じ場所にオートバイ(250ccクラス)で来ていた見ず知らずの人に「信じられない」と言った風な顔をされた事もあります。
私としては、その場所の交通の便が良く無い事(終バスが13時台には参った)と都心で迷わなければ難しい道では無い(国道4号線を北上し、郡山署前の交差点を右折して国道49号線を進めば目標の猪苗代湖に行くと言う簡単さ)事でC50スタンダードで行く事にしたのですが、よほど不思議な事なのかなぁ?と未だに思いますが。
まぁ、帰ってから少しの間はお尻が痛いと言うおまけに悩まされたり現地での雨続きが祟って電装系の故障も起こしましたから、準備不足な点はあったかもしれませんが。
 また、日常会話の中でも「カブだから云々」と言う言葉が出て来るのでスーパーカブって色眼鏡で見られている部分があるのかなぁと淋しく思うこともあります。
別にスーパーカブが1番とか最高とか讃美するつもりはありませんが、本来あるべき評価からちょっと下に見られている気がするので、気分はいつも複雑です。
 スーパーカブって手軽で便利ですよ。
 
 最後になりますが、C50スタンダードの処分とC90デラックスの購入及び本田技研の2輪車総合カタログや2輪車に関する資料を見せて頂いた神奈川県横浜市神奈川区の中村モータース様、以前スーパーカブに関する幾つかの逸話を教えてくれた西出治宝氏、スーパーカブの歴史についての不明点に快く回答してくださった本田技研のお客様相談センターにこの場を借りてお礼申しあげます。
なお、本文中の現用車の名称及びカタログ値は、本田技研発行の
 Honda2輪車総合カタログVol3(2003年10月20日現在)
の記述を採用しました。
また、スーパーカブのオプション及び歴史、旧車両に間する事柄等については
 本田技研の2輪車ホームページ(http://www.honda.co.jp/motor/
の各コンテンツ、及び
 モーターサイクリスト8月号臨時増刊、国産モーターサイクル戦後史(昭和62年7月5日発行、八重洲出版)
の記述を参考にしました。
 
(了)
 

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