なんでも使用記(消しゴムで消せるボールペンPILOT D−ink)

   消しゴムで消せるボールペン(PILOT D−ink)使用記
 
  「安葉巻を片手に」用に随分前に書こうとした内容の中に「生活に必要最低限の筆記
 用具」と言うものがありました。
 そんな内容の文章作成の取材(?)と言う事で近所の小さな文房具店から大型文房具店、
 コンビニエンスストアの文房具コーナー、そしてデパートの文房具売場で販売されてい
 る筆記用具、区役所に銀行に郵便局と言った場所に常備されている筆記用具、履歴書や
 公文書と言った書類で指定されている筆記具等をいくつか調べてみた結果「黒のボール
 ペン」と「鉛筆」が必要最低限の筆記具だと言うことが分かりました。
 ものの本によると、公文書については明治の頃から万年筆の使用が義務付けられていた
 らしいと言う事で「公文書には万年筆」と言う時代が長かったようですが、私が物心つ
 いた頃には公文書にはボールペンの使用が一般的でした。
 ですから、頭の中では「公文書ではボールペンを使用する」と言う意識が有ります。
 (ちなみに何故「黒のボールペン」だけではなく鉛筆も必要かと言うのは、資格試験や
 宝くじ等で最近使用されているマークシートは鉛筆の使用を求められているからです)
 余談ですが、今まで単に「黒のボールペン」としましたが公文書で使用可能なボールペ
 ンは厳密には「黒の簡単に消えないインキ使用のボールペン」と定義できます。
 インキが油性であろうと水性であろうとインキが乾いた後に水で濡らす等の作業をして
 も文字の判読が可能なインキを使用している必要があると言う事です。
 ですから、耐水性をうたっていない水性インキ使用のボールペンは公文書には使用出来
 ません。
  さて、実売価格が1本¥60位からと言う値段的な手軽さもあって一般的に多く利用
 されているボールペンなのですが、このボールペンを気軽に使用していてたまに困る事
 があります。
 履歴書や役所等に提出する文書ならともかく普段の生活で文章(手紙や日記等)を書い
 ている際に誤字脱字を出した場合の訂正です。
 鉛筆であれば普通の消しゴムでゴシゴシこすれば消えるわけですがボールペンではそう
 言うわけにはいきません.
 では、なぜボールペンは消しゴムで消えないのでしょうか?
 鉛筆の場合、筆記した文字等は紙の上にのっている格好になっています。
 ですから、消しゴムでこすればのっているものが消しゴムでこする事にによって取り払
 われて文字等が消えるわけです。
 ボールペン(を含めたインキを使用した筆記具)の場合、筆記した文字等はインキが紙
 に染み込んで紙に定着します。
 ですから、いくら消しゴムでこすっても消えません。
 ですからこれを消す方法としては染み込んでいる部分を削り取ると言うものが1つ考え
 られます。
 この削り取ると言う方法を利用しているのが一般に「砂消しゴム」と呼ばれている消し
 ゴムでこすって消すものです。
 この場合、消した部分が薄くなってしまうので複数回の修正はおこなえません。
 また、別の方法としてはインキを溶かして消す、と言う方法があります。
 この方法を利用したのが「インキ消し」と呼ばれる物です。
 しかしながらこのインキ消しではインキの色や成分によっては若干黄ばみがでたり、最
 近よく出回っている水性耐水インキ(顔料使用等)には効果が無い物があります。
 そして、最近よく利用されている方法が「修正液」により上から塗りつぶすと言う方法
 です。
 この修正液、元々はタイプライターのタイプミス修正にマニキュアを使用した事からヒ
 ント得た製品が始まりだと言うことですが、現在では、マニキュアの様に刷毛で塗る物
 からペン型をした物(細い先から単に出す格好の物とかまるでボールペンのようなもの
 まで)まで各社から色々と製品化されています。
 実を言うと私も随分と修正液にお世話になりました。
 しかしながら、修正液が乾くまで待ってないといけなかったり修正した後の部分に文字
 を書いてみると若干の書き難さ(水性インキでは文字が書けない等)があると言う事と
 紙を折り曲げたりした際にこの修正液を使用した部分がはがれ落ちる事があります。
 ですからボールペン筆記が多い場合、これらのちょっと面倒な修正方法でなくて普通の
 鉛筆で使っている物と同じ消しゴムで消す事が出来るボールペンがあればどれほど楽か、
 と思ってしまいます。
  そんな夢のようなボールペンが4月下旬に発売されました。
 株式会社パイロットが発売したPILOT D−ink(以下D−ink)です。
 このD−ink、紹介によれば「世界”初”の消しゴムで消せるゲルインキ」使用だそ
 うで、全部で12色発売されているそうです。
 なぜ「〜そうです。」なのかと言うと、これを書いている時点において生産が追いつか
 なくて品薄状態(近所の文房具屋談)らしく、近所の文具店では交換用レフィルのみし
 か置いていない状態だったので全12色の存在が確認が出来ず、実際に私自身入手でき
 たのが黒と赤のみと言う状態でなのです。
 そんな入手した黒と赤のD−inkのうち、今回は購入及び使用頻度が高いと思われる
 黒色のD−ink(型番P−LH−12D6−B)を使用して話を進めていきます。
 このD−ink、外観は他の製品と特に違った感じは無く全体が透明ボディにグリップ
 部分にすべり止めの横スジが施されており、その部分がインキ色と同じになっています。
 唯一特徴的な事は、キャップの先がねじとなっていてそこを取り外すと中に消しゴムが
 内蔵されています。
 この消しゴムが付属している事が「消せるボールペン」をアピールしている感じです。
 なお、ペン先部分は細い線を引くためのペンで使用されているように細い金属棒が突き
 出していてその先にボールが装着されている格好です。
 本体の長さはキャップをはめた時が143.05mm、キャップを外すとペン先からの
 長さが121.15mm、直径はグリップ部分で9.70mm、重さが10グラムと単
 色の廉価なボールペン(これ自体も1本¥120なのでどちらかと言えば廉価な部類に
 入りますが)とそれほど違いはありません。
 そして線幅は0.6mmとなっています。
  それでは、使い勝手について少し話を進めていきます。
 製品の個体差があるかとは思いますが、このペンについていえばペンのお尻にキャップ
 をはめて筆記するのがペンのバランスとペン本体のインキの出具合が良い感じです。
 また、ペン先の構造上、ペンをなるべく立てた格好で使用しないと文字が書けなくなり
 ます。
 使用インキが比較的粘度の高いゲル状インキ使用と言う事もあってか筆記の感触がボー
 ルペン特有のススッと言った滑らかな書き味では無くて、少し紙に引っかかる様な感触
 を指先に感じます。
  さて、D−ink最大の特徴である「消しゴムで消せる」点について少し話を進めて
 みます。
 少し話が脱線しますが、俗に言うゲル状(メーカーによっては中性と称される)インキ
 使用のボールペンの場合、これまでの油性及び水性ボールペン(耐水インキ使用も含)
 で書いた文字よりも紙に定着するのが遅い様な気がします。
 同じゲル状インキ使用のD−inkについては、特にその事が目立つようで、書いてか
 ら10分以上経ってからでも書いた文字を指先等でこすると文字が流れてしまって判読
 困難になってしまいました。
 色々試してみたところ、筆記後30分位は書いたところに触らないほうが良い様です。
 さて、実際に書いた文字を消しゴムで消してみると、書いた直後にしろ30分位経った
 後でも、また、1日程経ったものでも同じ様に消しゴムで消えます。
 どうも、インキがゲル状と言う事で、インキがに染み込まずに紙の上にのっかったまま
 になっている、と言うからくりようです。
  さて、(ここまできて今更何を言われそうですが)実を言うと「消しゴムで消せるボ
 ールペン」そのものは何年も前に他メーカーから既に発売されていました。
 その時の製品は油性インキを使用しており、紙にインキが染み込む時間を遅らせる事に
 より消しゴムによる修正を可能にしたものですが、丸1日以上過ぎると消しゴムでの修
 正は出来ませんでした。
 学生だった私は実験レポート等の作成に修正液を使用するよりも簡単に文字修正が可能
 だと言う事でそれに飛びついたわけですが、インキぼてが多い上に筆記感触が悪くて、
 結局は普通のボールペンを使用していました。
 そう言った事が頭にあったので、今度はどのような製品として「消しゴムで消せるボー
 ルペン」が世に出てきたのかと言うが気になって実際に入手して使用してみたわけです。
 そして、実際に使用してみて感じたのは「これだけの製品をこれだけの値段(¥120)
 で供給出来る」事への驚きです。
 この「消しゴムで消せる」と言う機能を満足出来る形で実現した事により、果たしてボー
 ルペンが次にどのような進化をして商品棚に登場してくるのか、楽しみです。
  なお、最後に一言。
 本体の包装袋にも同等の事が記載されていますが、このD−inkは「公文書には使用
 することは出来ません」と言う事です。
 理由は、「消しゴムで”消せる”ボールペン」だからです。

(−了−)


なんでも使用記トップへ戻る