「大人の科学 学研電子ブロックEX−150(復刻版)」使用記

 
 1:はじめに
 今回話題にするのは「電子ブロック」です。
電子ブロックと聞くと学研(正式には株式会社学習研究社。「学研」の通称がよく知られているので、以降学研と表記)が発行している「○年の科学」掲載の広告を思い出す方も多くいるでしょう。
しかしながら電子ブロックは、1989年に販売終了しています。
ですから「何で今頃?」と疑問が浮かぶと思います。
実は、今年(2002年)の4月27日に学研「大人の科学」シリーズの1つとして「学研電子ブロックEX−150」の復刻版が発売されました。
今回はその復刻版電子ブロックについて話をしてみます。
 
 2:電子ブロックとは?
 「電子ブロック」はそもそも「電子ブロック販売株式会社」が販売していた商品です。
1972年に「学研」と「電子ブロック販売株式会社」が提携して「学研」より「電子ブロック」が販売されるようになりました。
 一般に電気の実験及び実習と称して販売されている多くの組み立てキットは、各パーツはむき出しです。
また、組立にはニッパーやドライバと言った工具やハンダ付けをする必要があります。
そして、1つのキットで行える実験実習は1種類です。
それに対して「電子ブロック」は、パーツの1つ1つを四角いブロックに封入してあります。
それを並べ替える事で色々な回路を組んで実験実習行えます。
ですから、組立に工具やハンダ付けは不要です。
それに部品をそのまま再利用して何種類もの実験実習が出来ます。
ちなみに電子ブロックの商品名の数字は実験実習可能な種類の数を表しています。
ですからEX−150では150通りの実験実習が行えます。
 
 3:電子ブロックのラインナップ
 電子ブロックは、学研で販売されたものに限っても4つのシリーズがあります。
まず最初に発売されたのがSR,STシリーズ(1972年〜)です。
次に発売されたのがEXシリーズ(1976年〜)です。
EXシリーズはEX−15、30、60、100、120、そしてEX−150の6種類が発売されました。
また、同時に発売されたアップグレードパーツを買い足す事によりEX−15〜120からEX−150へと段階的にアップグレードする事が可能でした。
当時のEX−150の定価が1万3千円(今なら2〜3万位の感覚?)ですから、簡単には購入出来ませんでした。
ですからEX−15や30等の下位機種を購入してからEX−150までアップグレードをした、と言う事も多かったのです。
なお、学研の歴代電子ブロックの中で一番売上げが多かったのはEXシリーズとの事です。
このEXシリーズは、後に181種類の実験実習が可能なEX−181が追加されました。
EX−181は、当時のエレクトロニクス技術の進歩に合わせてEX−150にマイクロコンピュータやシンセサイザーの実習用モジュールを追加したものです。
また同時に、EX−150をEX−181にアップグレードさせるパーツも発売されました。
その後FXシリーズ(1981年〜)が発売され、1989年に電子ブロックは販売終了となりました。
ちなみに、今回のEX−150発売はEXシリーズ販売開始から26年目の復刻になります。
 
 4:復刻版とオリジナル版の違い
 実は、私自身もオリジナルのEXシリーズ(EX−100)のユーザーの1人でした。
ですから、その記憶を元にして復刻版とオリジナル版を比べると若干の違いがあります。
梱包は、オリジナル版では発泡スチロールの箱でアンテナ線にリード線クリスタルイヤホン等のパーツ類がそれぞれの場所におさまっていて、上蓋は紙製でした。
それに対して復刻版はオール段ボールの箱です。
付属品はどちらも同じものが入っていました。 ただ、復刻版にはアンテナ用エナメル線が追加されていました。
このアンテナ用エナメル線について、取扱説明書に「(ダイオード検波ラジオ等の実験で)付属のアンテナ線だけでラジオの受信が出来ない場合にはエナメル線を買ってきて云々」と言うコメントがありました。
しかし最近では、エナメル線自体を購入する事が結構難しくなってきたので添付した模様です。
本体そのものについては、オリジナル版ではアンプ内蔵スピーカー、cds(要は光センサー)、メーターはアップグレード用パーツで取り外しが可能だったのですが、復刻版では取り外し出来ません。
要するに、復刻版は単体製品として仕上がっています。
 ところで、電子ブロック自体はこの復刻版が登場するまで市場に無かった(ネットオークションで高値取引の噂)わけです。
しかしながら、復刻以前に電子ブロック販売株式会社から「バーチャル電子ブロック」なる商品が発売されています。
その概要は、パソコン用ソフトとして電子ブロックを仮想機器(エミュレーター)としたものです。
これは単に電子ブロックの再現ではありません。 仮想機器である事を生かして、パソコンに搭載されている各種インターフェースを利用しての実験実習も可能です。
 
 5:使用感?について
 先にも述べた通り、電子ブロックはパーツを並べ替える事により幾つもの実験実習が可能です。
私自身、オリジナル版購入時は、マニュアルのブロック配列の通りに並べながら「なるほど」と感心する程度でした。
しかしながら、復刻版EX−150のマニュアルを目にしながら「こいつは凄いぜ!」と驚かされました。
回路の組み立てにハンダ付けも工具も不要、そして幾つもの実験実習が可能というのは便利この上無い亊です。
また、それ以上に感じた事が「これは初心者向けの電気(電子)の定性用実験器具とも考えられる」事です。
(話は脱線しますが)「分析」と言う行為は2種類に分けられます。
1つは「定性」分析と呼ばれるもので、成分の有無を調べるものです。
もう1つは「定量」分析と呼ばれるもので、成分の量を調べるものです。
分かり易く「定性」と「定量」を簡単な例で説明します。
仮に目の前に透明な液体の入って2つのコップがあるとします。
その片方が普通の水で片方が食塩水だとします。 この時にどちらが普通の水でどちら食塩水かを調べるのが「定性」です。
その食塩水にどれだけ食塩が溶けているか調べるのが「定量」です。
 電子ブロックのマニュアルに書かれている各実験は電気の作用や電気機器(電子回路)の動作原理を扱ったものが多いので、電気の量を調べる定量と言う事ではなく、そこに電気が流れる事で起こる現象や作用(半導体の性質や抵抗値測定法の基本原理等)を確認する定性を行う事が出来る機器と言えます。
 さて、電気定性用実験機器なんてだいそれた言い方をした電子ブロックですが、これは「玩具」と言う扱いです。
とは言え電気の基礎を遊びながら学べるわけですから、立派な「教材」でもあるわけです。
このような物には「教育玩具」と言う言葉がまさにぴったりです。
さて、そんな教育玩具の電子ブロックですが、こんな使い方があります。
それは「回路シミュレーター」としての利用です。
これはメーカー保証外の使用方法になりますからユーザー自身の責任で作業を行う必要があります。
私も何が発生しようとも一切責任は負えません。
ですから簡単に話だけします。
電子ブロックはブロックを並び換える事で色々な実験実習ができます。
この事を利用して、自分で考えた電子回路を電子ブロックで組んで動作確認をする事が出来ます。
なお、この時におかしな回路を組むとブロック内のパーツや本体が破損する事があります。
あしからず。
 
 6:おわりに
 発売当時、電子ブロックの購入理由の1つに「ラジオ」になる事があったと言います。
今の小学生のおこずかいなら比較的簡単に手に入るラジオですが、当時の小学生にはおいそれと手に入る物ではありませんでした。
ですから、電気(電子)の勉強を口実にクリスマスプレゼントに買ってもらったりお年玉を貯めて買う事も多かったようです。(当時の「○年の科学」でヒジョーに人気があった付録に「ダイオード検波ラジオ」がありました)
そして、マニュアルに載っている回路を色々組んで行くうちに漠然と電気の知識が備わり「遊びながら科学する心を育てる」事になったわけです。
 さて、この電子ブロックは「遊びながら科学する心を育てる」教育玩具です。
とは言うものの、小学生には少々高度な内容も扱っていたでの理解し難い部分もありました。
なにしろ某家電メーカーの「新人教育用テキスト」の内容の多くが電子ブロックで実習可能ですから。
ところで電気(電機)業界に就職した人の中には(私も含めて)電子ブロックを触った事のある方が多くいます。
ですから、電子ブロックにこめられた願いがかなったのでは?と思います。
 さて、現在の電化製品はICやLSI等の集積回路と呼ばれる物を1つの部品としてそれを核に構成されています。
ちなみにパソコンのCPU(MPU)も集積回路の産物です。
それに引き替え電子ブロックのパーツ構成はトランジスタにダイオードにコンデンサ等で集積回路と言った物はブロックに1つもありません。
そう言う点では電子ブロックはローテクと言えます。
ですから、果たして電子ブロックが役に立つのかという疑問を感じるかと思います。
しかし、集積回路が使われていても基本は電子ブロックで実験実習出来る事と全く同じです。
集積回路は「トランジスタを幾つも使用して組まれた回路を圧縮して1つの部品とした」と考えて良いのです。
ですから1/4世紀以上前に登場した電子ブロックが今の時代でも教育玩具として十分通用するのです。
 今回「大人の科学」シリーズとして復刻された「電子ブロックEX−150」ですが、懐古趣味を満たすだけでなく親子で扱える電気実験実習器としてもつきあって欲しいものです。
そして、次世代をになう子供達の「科学する心」の育つ1つの要因になって欲しいと願うばかりです。
(今回「大人の科学ホームページ」と「電子ブロックホームページ」の内容を参考にさせて頂きました)
 「大人の科学 電子ブロックEX−150復刻版」の詳細については
大人の科学ホームページ(http://kids.gakken.co.jp/kit/otona/index.html)

 「バーチャル電子ブロック」についての詳細については
電子ブロックホームページ(http://www.denshiblock.co.jp/)
をご覧ください。
 
(了)
 

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