苦い恋愛



「こんばんわ、高木さん」
週末、いつものように新一くんが来た。
相変わらずの軽装で、多分持ち物はポケットの中の携帯電話と財布だけだろう。いつだって新一くんは何気に寄った風を装う。そして僕の都合も聞かないで泊まって行こうとする。 まったく…もし僕がいなかったらどうするつもりなんだろう。
「お邪魔しま〜す」
そう言って上がり込んで、未成年のクセに現役刑事の目の前で僕の飲みかけのビールを呷る。…良い性格してるよ、本当。
「新一くん、いつも言ってるだろう?来る時は前に一言言ってくれって」
「だって、どうせ高木さん他に用事ないでしょう?」
「そりゃ… そうだけど…」
「だったら良いじゃん」
……嘗められてる…?
大してお酒に強いワケじゃないのに、どうしていつも飲むんだろう。顔がもう真っ赤じゃないか。
「それから!どうして君はいつも僕の飲みかけのビールを何の断わりもなく飲むんだい?」
「へへへ〜、間接ちゅぅ〜〜vv」
「未成年だろ?」
「間接ちゅ〜、ふははっ、間接ちゅ〜だって!」
何が可笑しいんだろう。ケラケラ笑い乍ら僕にしがみついて離れない。
まったくもう…

「好きだよ〜、高木さぁん」
「ハイハイ」
酔っ払いと化した新一くんを、一先ずベッドに寝かせてやる。 ……いつもの事だ。


新一くんが、どうして頻繁に僕の部屋を訪れるか解らないけど、どうやら僕はこんな週末に慣れてしまった様だ。
いつの頃からか週末に予定を入れずにいる自分が居た。







勝手に人のビールを飲んだり、
そのくせ早々に潰れたり、
翌朝、近くの喫茶店で一緒にコーヒーを飲んだり、
意味があるようでない時間が少し勿体無く感じたりもしたけれど、凄く楽しい日々が、
このまま、
このまま、ずっと、
続くと、
ずっと続くと信じていたのに。








この気持ちが恋愛感情だと気付いた時には、既に深みにはまってしまっていて…
この気持ちが恋愛感情だと気付いた時には、彼はいなくなってしまっていた。







いつの間にか部屋には
彼の私物が溢れかえっているというのに、
その持ち主がいないなんて、…そんなのアリ?


















飲みかけのビールをそのままに、
週末、僕は
開かない扉を、ただじっと眺めている。
















ビールの様に、苦い恋愛を
僕は、しています。


















END


コ高ページのカウンター200をゲットしてくださった祈さんに捧げる高木×新一なんですが……リク内容『甘々高木×新一』…どーこーがーやーねーーん!!(怒)
お、おかしい…プロットの段階では甘々だったのに(謎)何でこんな文章になってしまったのか!?『甘々系』じゃなくて『切な系』だよ(T_T)祈さん〜、やっぱこんなのじゃダメっスか??うぇ〜ん、駄目なら書き直します(><)


1999.12.09.

NOVEL

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