誤 算
「俺、工藤の事好きやで」
口からこぼれたんは、一生言えんやろうと思っていた言葉。
殴られるか、蹴られるか、それとも罵られるか。
気持ち悪がって、もう一緒にいる事さえも出来なくなるかもしれへんのに。
酒がまわって、気持ちが良ぉなって、
つい、ポロっと… 言うてしもうた。
「奇遇だな」
返ってきたんは絶対にあり得んと思っていた言葉。
拳でもなく、蹴りでもなく。
「俺もだよ」
そんな、夢でしかない様な
自分に都合の良い言葉。
工藤の傍には、空になったビールの缶が
1、2、3、4…。
子供の身体で4本。 そりゃ飲み過ぎや。
きっと今、俺がどういう意味で言ったのかわかってないんやろう。
俺も、工藤もお互いに顔を真っ赤にしてヘラヘラ笑っとる。
「コラーっ、聞いとんのかぁーー工藤ぉ」
「おーー」
緊張感の無い声に戻って、
…あぁ、良かった。
いくら酒が入ったからとゆうても、
告白してその後気まずくなったらどうしようかと思ってた。
ふと、工藤がこっちに寄ってきて、
子供の手で俺を壁に押し付けて…。
小さな唇が、俺の顔に近付く。
「ちょぉ…、工藤?」
「しぃっ…」
唇と唇が触れあうだけの軽いキス。
酒の所為か、その行為の所為か、熱を帯びた顔が赤い。
「キスの時くらい、目ェ閉じろよ」
「…………」
「わかってんのかぁ、服部。俺の『好き』はこういうコトだぜ」
「お…おう」
心臓が、バクバク五月蝿い。
あぁ、アカン。
どうしょうもなく嬉しいゎ。
「因に、」
「ん?」
「俺は "タチ" だかんな」
「へ…?」
ケラケラ笑う工藤を見て、
俺は顔が青くなるのがわかった。
『ちゅうコトは、…俺が "ネコ" …??』
物凄い、大誤算やった。
END
フハハハハ… 笑うしかないっスね…
ごめんなさいっス。
なんで酒盛りなんかしてるのかとか、深い事考えちゃダメっすよ。
(それ以前に未成年やっちゅーねん)