かけら
小さなかけらを拾った。
ガラス片のようにキラキラと、
滑稽に自分を光らせるかけらを。
目が覚めると既に昼で少し後悔した。
空は上天気で、こんな日に家でゴロゴロしているなんて勿体無さ過ぎる。
ぼんやりと窓の外を眺めていたら電話が鳴った。
『工藤?』
「なんだ、服部か」
『なんだはないやん。冷たいのぅ』
「あー、ハイハイ。それで?何だよ服部」
これは何かに似ている。
このかけらは、何かに似ている。
『それで、折角良い天気なんやしどっか遊びに行こうと思ぉて』
「んーーー、そだな… …て、何?お前東京来てんの??」
『いや、今静岡あたり。工藤がおらんやったらどないしようと思って取り合えず電話を…』
「そーいうコトは普通出る前にするんだろー」
ケラケラと笑い乍らも結局はOKする。今静岡という事はバイクか新幹線だな…
ガラスではないね、
じゃぁ、一体何のかけらなんだろう。
思いのほか早くに服部はやってきた。
「バイクは渋滞にもかからんし、小回りもきくんやで」
ヘルメットを抱えてニッコリと笑って言った。
この、屈託の無い笑顔が好きだ。
このかけらは、なんだろう。
角は既に丸まって、
原型よりはずっと触り易いに違い無い。
「そんじゃ、何処に行く?」
「お前は何処に行くつもりで来たんだ?行きたいところがあるなら案内してやるぜ」
「不親切なナビだけどな」と付け加えると「豪華なナビや」なんて幸せそうに笑う。図体はデカイくせに、こんなところはまるでガキっぽい。
歪な形で、それでも輝いて、
一体何のかけらなんだ?
「天気なんて、ホンマはどうだって良いんや」
なんて、小さく笑った。
「知ってるさ」
と、笑い返してやった。
「雨の日だって、雪の日だって、ホンマはいつだって一緒におりたいんよ」
少し、照れ乍ら
「…それも知ってるよ」
つられて、少しだけ照れてみせて
何の為にキラキラ光ってるんだ?
何故、光っていられるんだ?
こんな小さなかけらなのに、
誰も見てはくれないかも知れないのに。
『出歩くと事件にぶつかるかもしれない』なんて、冗談めかした事を笑い乍ら話して、結局は家でゴロゴロしてしまう。全くもって勿体無い。
ただ、先刻までと違うのは、愛しい人が傍にいるという事。
「それは、ぼくのかけらだ」
気がついてみると簡単だ。
「ぼくの、かけらだ」
いつも自意識過剰で完璧でありたいと願う
僕のかけらだ。
人から「きれい」という賛辞を貰いたくて、
一生懸命に、滑稽に、光ってみせるぼくのかけらだ!
「コーヒーでも煎れようか」
まるで自分のものとは思えない、優し気な言葉が口から溢れると、「おおきに」と笑って答える。
時間を共有するだけで、こんなに暖かい気持ちになれるなんて。
「やぁ、これは君のかけらじゃないよ」
手のひらに有ったかけらはいつの間にか消えていた。
「これは、君自身だよ。
君が、大切な人に出逢う事が出来たから
角は丸くなり、
光る事が出来たんだ!!」
窓から入る暖かい陽射しに、僕たちはいつの間にか夢を見る。
太陽のかけらを一身に浴びながら、二人の夢を。
END
カウンター4567をゲットして頂いた発斗さんからのリク、『新平』です……??こ、こなせて無い様な(死)『新平』でも何でも無いような気さえします(駄目じゃん)
ところで大阪から東京までバイクでどのくらい時間がかかるんでしょうか… 僕は九州から青森まで24時間掛けて車で移動した事はあるんですが、その時に何時間かかるか測ってりゃ良かった(T_T)ザ★アフターフェスティバル…(阿呆)2000.01.03.