顔を見ないと…
ピンポーン
突然の来客を告げるチャイム音に、こんな時間に一体誰がと思いつつも、平次は読みかけていた本を閉じて玄関へと向かった。
「よ!」
立っていたのは予想外の人物。
「工藤? どうしたんや…」
今まで自分から訪ねる事があっても、決して訪ねられた事が無かったから、突然の出来事に間抜けな質問をしてしまう。
「『どうしたんや』って、オレが来ちゃいけねぇのかよ?」
「そうやない、だってお前が大阪に来るやなんて…」
「うっせーな、良いだろ別に。お前ん家今日誰も居ないんだろ?」
「…なんで知っとるん?」
「そんなコトどーでも良いだろ… お邪魔しまーす」
そう言うと新一は呆気に取られている平次を後目に服部家に上がり込んだのだった。
◆
「ちょぉ待っとってや、何か飲み物持って来る」
「あぁ」
新一を残して部屋を出た平次は、階段を下りながら色々と考え出した。どう考えたって、今までの経験上こんな事はあり得ない。
『こっちでなんや気になる事件でもあったんやろか… いや、そんなんやったらオレの方から連絡するし…』
頭を捻りながら考えるも、正解らしい考えは思い付かないままアイスコーヒーを手に部屋へと戻った。
平次が部屋へ戻ると、新一はベッドの上に寝転んで先刻まで平次が読んでいた本をひろげていた。どうやら熱中しているらしく呼んでみても返事をしない。
『ったく、ホンマ何しに来よったんやろ…』
平次は無理矢理本を取り上げようかとも考えたのだが、どうすることも出来ず結局別の本を手に取りベッドの横に腰掛けたのだった。
◆
「あー、面白かった!」
新一がそう言って大きく伸びをした。それに気付いた平次が時計を見ると既に5時間ちょっとが経過し日付けがかわっていた。二人はそれぞれ無言のまま本に没頭していたのだ。
「もうこんな時間か… 悪ぃ、シャワー貸して。今日は泊まるから」
「はぁ??」
平次が何を言う間も無く、新一は勝手にクローゼットを漁って平次のTシャツを掴むと部屋を後にした。残された平次の頭は数えきれない程の疑問符でいっぱいになる。
『工藤がこっちに来るっちゅうだけでもなんか変やし、両親がおらんのを知っとったゆうのもわからん。最初から泊まる気で来たんやったらもっと大荷物になるハズやし…』
そうこう考えている間に、風呂上がりの新一が部屋へと戻ってきた。結局考えが纏まらないままで、平次はやきもきを通り越して…
「降参や!」
と、両手を軽く上げて新一に申告した。
「は?何が?」
新一何の事だかさっぱりといった感じでキョトンと平次を見つめている。平次はそんな新一を見てますます疑問符の数を増加させる。
「何がって、お前がここに来た理由や。いくら考えてもわかれへんねん。だから降参や」
そう言うと、新一は軽く吹き出した。
「じゃぁ聞くけど、お前は何でしょっちゅう東京に来るんだよ」
「そりゃ、工藤に逢いたいからに決まっとるやんか」
「何で逢いたいんだよ、話なら電話ですればいいし…」
「顔見らな話せん事もあるやろ」
「その割にはそんなにたくさん話しねぇよな」
「……………」
つまりそういうコトだよ。と、笑いながらキスをしてきた新一に、平次はそのまま流されるのだった。
顔を見ないと話せない
顔を見たら話さなくて良い…
好きな二人は言ったり来たり。
列車でね…
END
JRきうしう(笑)のあの歌を聞く度に「これって新平ソングだよなぁ」と…(笑)超ローカルネタですみません(><) そんな訳でカウンター300ゲット(2度目)の眸さんへ捧ぐ新平です。一気に書き上げて読み返しもしてないので文章的に変なところがあっても目を瞑ってやってください(死)…僕いつも「たまには新一が服部のところへ来い!」と思っていたんです(笑)ダメっすか? ちなみに気になる服部両親はきっと結婚式にでもお呼ばれしているんでしょう、多分。←超いい加減(殺)
1999.07.28.