風邪引きの復讐
「くしょんっっっ」
あーあ、風邪引いちまったよ。
オレ元々あんまり身体丈夫じゃないんだから…
ぼやける視界に酔ったみてぇだ… うぇぇ〜、気持ち悪ィ。
「それじゃ、コナンくん。私学校に行ってくるから。具合が悪くなったら直ぐお父さんに言うのよ?」
「うん… いってらっしゃい、らんねぇちゃん…」
タダの風邪の看病なんかで学校を休む訳にはいかない蘭は、不安げな顔を置き土産に学校へと向かった。
おっちゃんはというと、オレの為にお粥を作ってくれている。
誰だっけ、確か誰かが言っていた。
「人間、病気になると必要以上に気弱になる」
そのコトバを誰から聞いたかは思い出せないけど、その気持ちはなんとなく解る気がする。
普段はなんて事ないのに、静寂が重い空気になってのしかかってくる様だ。
コチコチと秒針を刻む音だけがやたら耳につき、何故か不安になる。
「よし、コナン。お粥出来たぞ」
「ありがとぉ、おじさん」
普段よりも優しいおっちゃんが、オレの背中をゆっくり抱えてくれて漸くオレは上半身を起こせた。
おっちゃんは蓮華に掬ったお粥をフーフーと冷ましてオレの口元まで運んでくれた。ソレは丁度良い暖かさになっていてオレの喉に刺激を与えることなく、ゆっくりとハラに納まった。おかげで身体の内側からポカポカと暖かい。
オレは綺麗にお粥を平らげて、再びおっちゃんの手でベッドに寝かされた。
「いいか、コナン。『病は気から』って言ってな、早く元気になりたいと思えば治るのも早くなるんだ」
「うん…」
おっちゃんは柄にもなくオレを励ましてくれて、ちょっとウレシイ。
と、その時。
突然電話が鳴り響いた。
おっちゃんが慌てて受話器を取る。
「はい毛利探偵事務所……あ、これはこれは警部殿。…あ、ハイ………今ですか?…ハァ…いや、そう言う訳じゃないんですが……えぇ、ちょっと…明日に回して貰えませんかねぇ……」
電話の相手は目暮警部の様だ。きっと昨日解決した事件のコトだろう……
カシャンと小さな音で受話器を戻すと、罰の悪そうな顔でオレの方を見た。きっと呼び出されたんだろう。オレが病人だから出かけるべきか考えているのか。気にしないでいいと言いたいところだけど……
突然。
ピンポ−ン、ピンポ−−−−−ンッッッ!!
探偵事務所のチャイムが響いた。
こういうコトは重なるモノなのか……
忌ま忌まし気に立ち上がったおっちゃんは扉の向うへと消えた。
流石に、ちょっと今は一人になりたくない……かな?
と、そんなコトを考えていた、正にその時。
勢い良く部屋の扉が開いて、ココにいるはずの無い人物=服部平次がひょっこり顔を出した。
「大丈夫か?工藤、風邪やって?」
何で知っているんだろう。………エスパー??
「今下でおっさんに聞いたんや。何やエライ熱があるんやて?」
「んぁぁ…」
だるくてお座なりな返事しか出来ないけど、頭の中でイロイロ考えがグルグル回る。熱の所為か一向に考えが纏まらないのだけれども。
「オイ、小僧。コナンのコト任せたぞ」
「あぁ、任せときぃ、おっさん」
丁度平次が来たお蔭。
…と、おっちゃんはきっとこれから警視庁へ向かうんだろう。
まぁ、グッドタイミングってとこか。
「そんで?工藤。風邪は大丈夫なんか?」
「ぁぁ… 別に死ぬワケじゃねぇから安心しな」
平次がゆっくりとオレのおでこに自分のソレをくっつけた。
「めちゃめちゃ熱あるやん、自分」
「そりゃ病人だからな…」
自分の熱と、寒くないようにと蘭が被せてくれた布団と、先刻のおっちゃんのお粥で、十二分に身体は暖まって……つーか、熱い。
そのお蔭で余計に熱があるように感じるんだろうか。
平次はポンポンと軽く布団を叩いた。
「ゆっくり休みぃ。オレが看病しとったるから」
「あぁ、サンキュ…」
平次の手の重みを布団越しに感じながら、オレはゆっくりと眠りに落ちた。
ふと目が覚めた。
何時間も眠っていたと思ったのに、時計を見ると30分も経ってなかった。
「なんや、もう起きてしもたんか?」
「ん……あ、そういや薬飲んでなかった」
眠れなかった理由を薬の所為にした。
「そんなら薬飲む?」
「あぁ」
勝手知ったるヒトサマの家の台所で、平次ががちゃがちゃと音を立てている。オレはベッド脇に用意してあった救急箱から風邪薬を出した。
「ぬるま湯もってきたで」
「サンキュー…」
ジンジンと熱い指先で薬を箱から出そうと四苦八苦しているオレの元へ、平次はカップにぬるま湯を並々注いできた。
「なんや、自分開けきらんの?」
「力が入んねぇんだよ」
「貸してみ」
そう言ってオレの手元から薬を奪おうとする。
「いいよ、自分でやるから…」
「せやけど、それが出来んのやろ?」
………うぅ、格好悪ィ……
「オレが開けたる。…そうや、口移しで飲ましたろか?」
弱ってるオレを楽しそうに見ながら、そんなコトを言いやがった。
くそう………
「それなら、口移しでお願い。平次にいちゃん」
薬を放り投げて膨れてみせた。
やれるもんならやってみやがれ!!
「おう、まかしとき!」
妙に嬉しそうにビリビリと箱を開けた平次の動きが一瞬止まった。
ザマァミヤガレ!!
「さ、口移しでお願い。平次にーちゃん。」
「スンマセン……」
「やだ!早く口移し〜〜〜」
子供の様にジタバタと暴れて、駄々を捏ねてやった。
そう、良く効くからと言って用意されていた薬は、錠剤ではなく粉薬だったのだ。
END
実はコレ、カウンター4000ゲットしてくださった琴平 玲さんのリク“ラヴラヴ コ平”のつもりなんですが……アレ??(死)これのどこがラヴラヴなんでしょう(殺)いい加減殺されるぜ、自分!(痛)琴平 玲さん、平に!平にお許しを!!(…駄目??)