部屋。
最後のダンボール箱にガムテープで封をして、タケルは立ち上がると大きく伸びをした。
そして、生活感のまるで無くなった自室を、少し寂し気に見渡した。
この足下の荷物を運び出せば、この部屋は完全に自分の居場所ではなくなる。
----そう、思った。
カーテンの無くなった窓からは、見慣れた風景が目に飛び込んでくる。
そして、その景色とも、今日でお別れなのだ。
「終わったのね」
振り向くと、ナツコが立っていた。
「うん。これで最後」
そう言って、タケルはダンボール箱をポンと叩いた。
ナツコは口元だけで笑うと、今では自分より大きくなった息子の頭に、小さく背伸びをし乍らそっと手を置いた。
「寂しくなるわ」
「うん」
母の、掌の温もりが心地良く、タケルは目をゆっくり伏せた。
「私の事は心配しなくて良いから、貴方は貴方の道を、まっすぐに進みなさい」
「有難う、母さん」
ナツコの言葉が、タケルの胸に染込み、じわりと広がっていった。
いつの間にか、自分より小さくなった母を、彼はぎゅっと抱き締めた。
「ナツコの事は、オレに任せてくれよ」
住み慣れた我が家を後にする時、ナツコのパートナーは笑い乍らそう言った。
「うん。母さんのコト、よろしく頼むね」
そう言うと、頭の上に乗っかっていた自分のパートナーも、
「タケルのママのコト、よろしくね!」
と、笑って言った。
「少なくとも、パタモンより役に立つから、安心しろよ」
それには苦笑いで応えて、タケルは扉を閉めた。
マンションの前に、ハザードをあげて、一台の軽トラが止まっている。
荷台には、自分の引っ越し荷物。
そして、運転席には最愛の人。
「やあ、待ってたよ」
タケルは、両手で抱えていた最後の荷物を軽トラに載せ、ロープですべての荷物をしっかり固定すると、その助手席に乗り込んだ。
「お待たせ、丈さん」
そして、彼等の行き先は……
数時間後、2人は『家』の扉を開けた。
「今日から、ここが僕達の………
END
………わけわからんモン(幼年期)をスミマセン。
タケルくんと丈さんの、同棲開始っぽいモノを書こうとしたら、
こんなヨクワカランモン(成長期)になってしまいました。
たまにはこんなのもイイかな〜なんて……駄目っスか?
一応、自分設定年表によると、2012年頃のお話しデス。
ナツコのパートナーデジモンは、自分的にエレキモンあたりが
良いんですが、ハッキリと書きませんでした。
ので、好きなデジモンを御想像下さい(^^)
…本当は、続き物をUPし終わるまでUPしないつもりだったんですが、
あまりにも更新しなさ過ぎなので小出し(苦笑)
2001.11.09. 草ムラうさぎ
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